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後遺障害逸失利益について死亡時までに限られるとした高裁判決紹介

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令和 1年12月 4日(水):初稿
○「後遺障害逸失利益について死亡時までに限られないとした地裁判決紹介」の続きで、その控訴審である平成4年11月26日東京高裁判決(判タ806号195頁、判時1439号124頁)関連部分を紹介します。

○控訴審判決は、交通事故で負傷した後遺障害のある被害者が、その後交通事故と相当因果関係のない水難事故により死亡した場合には、交通事故の加害者の賠償すべき後遺障害による逸失利益は死亡時までのものに限られるとして認容額が一審認容額の約60%に減らされました。

○不法行為の被害者がその不法行為と相当因果関係のない原因で死亡した場合の逸失利益については、死亡時までしか認めない切断説と、死亡しなければ後遺症が存続したであろう時点まで認める継続説に分かれていましたが、一審は継続説、控訴審は切断説と分かれました。この見解の対立に平成8年4月25日最高裁判決が決着をつけていますので、別コンテンツで紹介します。

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主   文
原判決を次のとおり変更する。
控訴人Y1株式会社及び同Y2は、連帯して、被控訴人X1に対し金549万0787円、同X2及び同X3に対し各金274万5393円並びにこれらに対する平成元年7月5日から右各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
控訴人日産火災海上保険株式会社は、同Y1株式会社に対するこの判決が確定したときは、被控訴人X1に対し金549万0787円、同X2及び同X3に対し各金274万5393円並びにこれらに対する平成元年7月5日から右各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
被控訴人らのその余の請求をいずれも棄却する。
被控訴人らの本件附帯控訴をいずれも棄却する。
訴訟費用は第1、2審を通じてこれを6分し、その1を控訴人らの負担とし、その余を被控訴人らの負担とする。
この判決は、第2項に限り、仮に執行することができる。

事   実
(申立て)
一 平成4年(ネ)第1289号事件
1 控訴人ら
(一) 原判決中、控訴人ら敗訴部分を取り消す。
(二) 被控訴人らの請求をいずれも棄却する。
(三) 訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人らの負担とする。
2 被控訴人ら
 本件控訴をいずれも棄却する。

二 平成4年(ネ)第3165号事件
1 被控訴人ら
(一) 原判決を次のとおり変更する。
(二) 控訴人Y1株式会社及び同Y2は、連帯して、被控訴人X1に対し金1391万4173円、同X2及び同X3に対し各金695万7086円並びにこれらに対する平成元年7月5日から右各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(三) 控訴人日産火災海上保険株式会社は、同Y1株式会社に対するこの判決が確定したときは、被控訴人X1に対し金1391万4173円、同X2及び同X3に対し各金695万7086円並びにこれらに対する平成元年7月5日から右各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(四) 訴訟費用は第1、2番とも控訴人らの負担とする。
(五) 第二項につき、仮執行の宣言
(被控訴人らは、いずれも当審において右(二)及び(三)のとおり請求を減縮した。)
2 控訴人ら
(一) 本件附帯控訴をいずれも棄却する。
(二) 附帯控訴費用は被控訴人らの負担とする。
(主張)
 当事者双方の主張は、次のとおり付加、訂正するほか、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。

         (中略)

理   由
一 当裁判所の判断は、次のとおり付加、訂正するほか、原判決理由の説示と同一であるから、これを引用する。

         (中略)

4 原判決18枚目表4行目の「(二)」及び同行の「・予備的請求」を削り、同末行の「認められるところ、」を「認められるが、前掲」と、同裏1行目の「によって認められるところの」を「によれば」と、同5行目から同6行目にかけての「等の事実に鑑みれば」を「が認められるから」と改め、同末行の「甲第57号証」の前に「前掲」を加え、同19枚目表3行目から同9行目までを削り、同10行目の「5」を「4」と、同末行の「甲第18号証の1ないし7及び甲第61号証(いずれも領収書)」を「成立に争いのない甲第18号証の1ないし7、甲第61号証」と、同裏5行目の「単価」を「作成費用」と、同7行目の「6」を「5」と改め、同8行目の「甲第15号証」の前に「原本の存在及び成立に争いのない」を加え、同20枚目表1行目の「7」を「6」と、同6行目の「26日」を「28日」と改め、同裏1行目から同22枚目表末行まで〈同231頁4段22行目?232頁3段10行目〉を次のとおり改める。
「7 後遺障害による逸失利益
        金2万6800円
 前記のとおり昭和62年におけるAの実収入額は年額208万5750円であり、前記入通院期間中に見られたAの症状及び本件後遺障害の程度に照らすと、Aの本件後遺障害は全体として自賠法施行令二条別表後遺障害別等級表の第六級に相当し、これによる労働能力喪失率は67パ?セントと認めるのが相当であり、これにより本件後遺障害が固定した平成元年6月28日から同年7月4日までの本件後遺障害によるAの逸失利益は金2万6800円(208万5750円×0.67÷365×7)と算定される。

 被控訴人らは、Aの死亡後についても本件後遺障害による逸失利益が認められるべきである旨主張する。
 しかし、Aの死亡と本件交通事故との間に因果関係が認められないことは前記のとおりである。そして、後遺障害による逸失利益の算出に当たって、一般に平均的な稼働可能期間を前提として将来の得べかりし収入を算定しているのは、事の性質上将来における被害者の稼働期間を確定することは不可能であるため擬制を行っているものであるから、本件のように事実審の口頭弁論が終結するまでに、本件交通事故と因果関係の存しない本件死亡事故によるAの死亡という事実が発生し、Aの生存期間が確定して、その後においては逸失利益の生ずる余地のないことが判明した場合には、右事実はAの本件後遺障害による逸失利益の算定に当たり斟酌せざるを得ないというべきであり、それがむしろ現実に発生した損害についてその公平な分担を図ることを理念とする不法行為による損害賠償制度の趣旨に沿うものというべきである。したがって、被控訴人らの右主張は採用することができない。

5 原判決22枚目裏1行目の「9」を「8」と、同行の「金850万円」を「金1100万円」と、同4行目の「事実」を「事情」と、同7行目の「10」を「9」と、同行の「2420万2103円」を「1729万7356円」と、同10行目の「1688万6321円」を「998万1574円」と改め、同23枚目表1行目の「甲第19号証」の前に「前掲」を加え、同2行目から同3行目にかけての「844万3160円」を「499万0787円」と、同3行目の「422万1580円」を「249万5393円」と、同8行目の「85万円」を「50万円」と、同行の「42万円」を「25万円」と改める。

二 以上の次第により、被控訴人らの控訴人らに対する本訴請求は、控訴人Y1及び同Y2に対し連帯して、本件交通事故による損害賠償として、被控訴人X1子につき金549万0787円、同X2及び同X3につき各金274万5393円並びにこれらに対する本件交通事故が発生した後である平成元年7月5日から右各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の各支払を求め、控訴人日産火災に対し同青森定期に対する本判決が確定することを条件として、右同額の金員の支払を求める限度で理由があり、その余はいずれも理由がなく、控訴人らの本件控訴は右の限度で理由があるから、原判決を主文のとおり変更し、また被控訴人らの本件附帯控訴は理由がないからいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法96条、89条、92条、93条を、仮執行の宣言につき同法196条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官菊池信男 裁判官吉崎直彌 裁判官奥田隆文は、転補のため、署名押印できない。裁判長裁判官菊池信男)

以上:3,362文字

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