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軽微衝突事故について傷害と事故との因果関係を否認した地裁判決紹介

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令和 3年12月 3日(金):初稿
○軽微な衝突事故について、自賠責保険会社が傷害と事故との間に因果関係が認められないと認定した事案について、自賠責保険会社に対し、因果関係を認める訴訟提起の相談を受け、同種類似判例を探しています。

○残念ながら、軽微事故と傷害との間の因果関係を否認する判例が多く、その1つとして令和3年1月27日名古屋地裁判決(自保ジャーナル2091号83頁)関連部分を紹介します。

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主   文
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。

事実及び理由
第一 請求

1 被告は,原告Aに対し,71万6,894円及びこれに対する平成29年10月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告は,原告Bに対し,71万6,620円及びこれに対する平成29年10月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第二 事案の概要
 本件は,原告A(事故当時50歳)が運転し,原告B(事故当時36歳)が同乗する普通乗用自動車(以下「原告車」という。)と,被告(事故当時68歳)が運転し,運行の用に供する普通乗用自動車(以下「被告車」という。)が,中央線のない道路ですれ違う際に接触した交通事故(以下「本件事故」という。)に関し,原告らが被告に対し,民法709条及び自動車損害賠償保障法3条に基づき,それぞれ71万6,894円,71万6,620円及び各損害額に対する本件事故日である平成29年10月26日から支払済みまで民法(ただし,平成29年法律第44号による改正前のもの。以下,利率について同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。

1 前提事実


              (中略)


2 争点2(原告Aの受傷の有無)
(原告A)
(1)本件事故による衝撃
 被告車は,十分な間隔がないにもかかわらず,原告車と本件道路東側の駐車車両との間を無理やり通過したため,被告車が通過する間は,被告車の右側と原告車の右側が衝突し続け,停車していた原告車には一定時間,大きな衝撃が生じ続けた。このことは,被告車の損傷の範囲が,右側の前輪の後方部分から後輪の後方部分まで及んでいることからも明らかである。

(2)受傷機転
 原告Aは,原告車の右側を通過しようとする被告車に気づいた。原告Aは,原告Aと薬局の前に駐車されていた車両の間隔からして,被告車が,いずれかの車両に衝突せずに通過することは無理だと感じた。

 しかし,原告Aには原告車と被告車の衝突を避けるすべはなく,衝突の衝撃に備えて思わず首や両足に力を入れてしまった。そのため,被告車が原告車に衝突した際の衝撃が原告Aの首や右足に伝わり,本件各傷害が生じることとなった。

(被告)
 本件事故は極めて軽微な事故であり,およそ人に傷害を生じさせることはない。
 また,原告Aは,本件事故前から「腰痛」,「変形性関節症」,「甲状腺疾患」,「シビレ…右上肢」の既往症があり,身体の疼痛に対し,鎮痛薬の処方を受けなければならない状態だったことが認められる。
 以上に照らし,本件事故と原告Aとの受傷との間に相当因果関係は認められない。

3 争点3(原告Bの受傷の有無)
(原告B)
(1)本件事故による衝撃
 争点2における原告Aの主張と同じ。
(2)受傷機転
 原告Bは,原告車の後部座席右側に乗車していたところ,原告車の右側を通過しようと勢いよく追ってくる被告車に目視で気づいた。原告Bは,原告車と本件薬局前の駐車車両との間隔からして,被告車が,いずれかの車両に衝突せずに通過することは無理だと感じた。

 原告Bは,被告車が原告車に衝突することに恐怖を感じ,衝突の衝撃に備えて思わず身体に力が入ってしまった。原告Bは,特に首や肩に力を入れてしまったため,被告車が原告車に衝突した際の衝撃が原告Bの首や肩に特に伝わり,頸部捻挫,左肩関節捻挫等の傷害が生じることとなった。

(被告)
 本件事故は極めて軽微な事故であり,およそ人に傷害を生じさせることはなく,本件事故と原告Bとの受傷との間に相当因果関係は認められない。

第四 当裁判所の判断
1 争点1(事故態様)

(1)認定事実
 後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア 被告は,a病院での治療を終えて,被告車を運転して,本件出入口から本件道路へと左折進行した。

イ 被告が本件道路に進入した時点で,本件道路の東側(すなわち本件薬局の前)には,本件見取図のとおり,2台の駐車車両が存在した(これらのうち北側の駐車車両(セダン)を「本件駐車車両1」と,南側の駐車車両(軽四)を「本件駐車車両2」と,それぞれいう。)。

ウ 被告は,対向(南)方向から,原告車が走行してくるのを認め,本件駐車車両1の後方(北)で,一時停止したところ,原告車も停車した。原告車の停車位置は,南北方向でいえば本件駐車車両1と本件駐車車両2の中間付近であり,車体の一部が本件道路の西側路側帯にかかるような状態であった。

エ 被告は,原告車が停車したため,原告車の側方(原告車の東側)を通過するために,被告車を発進させた。被告車は相当な低速度のまま原告車と本件駐車車両1の間を同各車両に接触することなく通過したが,同通過後,被告が,本件駐車車両2との接触を避けるため,被告車のハンドルを右に切ったため,被告車の右側面と原告車の右側面とが接触した。
 原告らは,いずれも原告車と本件道路東側の駐車車両(本件駐車車両1等)との間隔が狭かったことから,被告車が原告車の側方を通過していく際,被告車が原告車に接触するのではないかと思い,身構えていた。

オ 上記エの接触により原告車には右後輪ホイール,リヤフィレット,オーバーフェンダーに,写真で辛うじて判別できる程度の擦過痕が生じ,修理費は9万2,794円であった。なお,原告車の自動車損害調査報告書には「軽微損傷であり,書面対応とした」旨の記載がある。
 また,上記エの接触により被告車には右フロントドアの後方から,右スライドドア(後部ドア)を経て右リアフェンダ,右リアバンパに至る擦過痕が生じ,修理費は18万2,844円であった。なお,被告車の自動車損害調査報告書には写真に写り難いとの理由により修理工場から立会希望があり立会調査とした旨の記載がある。

(2)認定事実の補足説明
ア 被告車が一時停止したか否か
 原告らは,被告車が一時停止したことはない旨主張するが,原告Aの供述は,最初に被告車を見たときには被告車が南進してくる状態であったというにとどまる。すなわち,原告Aは,被告車が本件出入口から左折進行して事故現場に至るまでを目撃した上で、被告車が一時停止していないことを供述するものではないから,同供述をもって,被告車が一時停止したとの事実を排斥することはできない。

 なお,原告Aは原告車を停車させた理由について,原告車進路前方の電柱等の存在を指摘し,原告車を停車させた後に,又は,停車させると同時のタイミングで被告車に気付いたと供述する。しかし,対向方向から進行する車両(被告車)が存在しなければ,本件駐車車両1及び2並びに電柱等が存在したとしても,原告車の進行に支障はないはずであり,被告車の存在と無関係に原告車を停車させた旨の原告Aの供述は不自然といえる。 
 これに対し,対向する原告車の存在に気付いて一時停止した旨の被告の供述は自然であり,上記(1)ウのとおり,被告は被告車を一時停止させたと認められる。

イ 被告車の速度
 原告車の側方を通過する際の被告車の速度について,客観的な証拠はないが,被告の陳述書には「私の車の速度はほとんどアクセルを踏んでいない程度のゆっくりなもので,左右に気をつけながら,そろりそろりと進んでいったという感じでした」との記載があり,また,被告は本人尋問においてアクセルを踏まないクリープ現象くらいのスピードとの供述をする。

 この点,原告Aにおいて,体が振動を感じていた時間,すなわち,原告車と被告車が接触していた時間は「1,2秒,まあ2,3秒」と供述しており,被告車の接触痕の長さを約2メートルとした場合,被告車の速度は秒速約0.67メートル(3秒間接触の場合)ないし約2メートル(1秒間接触の場合)となるから(時速に換算すると時速約2.4キロメートルないし約7.2キロメートル),被告の供述と整合するといえる。

 したがって,本件事故時の被告車の速度は,相当低速であったと認められる。なお,原告Bは,被告車の速度は時速約10キロメートル程度と供述する。この点,原告Bは,被告車が原告車の側面前方を通過する際に接触音が聞こえたなどと供述し,同接触により原告車が振動していた時間についても30秒近かったという趣旨の供述をしているが,前記損傷状況(前記1(1)オ)に照らすと被告車は原告車の右側面の前方には接触していないと認められるのであり,かかる客観的事実に反する原告Bの供述を,被告車の速度の認定の資料とすることは相当でない。

2 争点2(原告Aの受傷の有無)及び争点3(原告Bの受傷の有無)
(1)上記1に認定したとおり,本件事故は,被告車が相当な低速度で原告車の側方を通過する際,両車両の側面同士が軽く接触したという態様であり,乗員の安全について一定の配慮がされている自動車に乗車中の原告らが,本件事故の衝撃によって受傷したことを認めるに足りない。

 これに対し,原告らは,被告車が通過する間は,被告車の右側と原告車の右側が衝突し続け,停車していた原告車には一定時間,大きな衝撃が生じ続けたなどと主張するが,一定時間といっても数秒にすぎず,被告車の速度が低速であったことに照らすと,大きな衝撃が生じたとは到底認められない(原告車と被告車との接触時間が長くなるほど,被告車の速度は低速となるはずであり,原告らの主張はそもそも上記認定を左右しない。)。

(2)原告らは,被告車が通過する際,衝突の衝撃に備えて思わず首や両足に力を入れてしまったため,被告車が原告車に衝突した際の衝撃が原告らの首等に伝わり,本件各傷害が生じることとなった旨主張するが,運転席又は後部座席右側に座りながら力を入れたことによって受傷したというのは受傷機転として不自然であり採用できない。

(3)原告らは,本件事故後,c病院に通院し,頸部挫傷等と診断され,1月余り通院治療を受けている(前提事実(3),(4))。そして,e株式会社に勤務する整形外科専門医であるDは,原告らの医療記録を検討した上で,本件事故と原告らの傷害との因果関係は認められるとする意見書を作成している

 しかし,原告らの診療録上,何らの他覚的所見もうかがうことができないのであって,原告らの主訴に基づいて治療が行われたからといって,傷害が発生したということはできない。D作成にかかる意見書も,原告らに傷害が発生したとすればc病院における治療等は相当な期間であるというものであって,原告らに傷害が発生したことを裏付けるものではない。

 特に,原告Aについては,本件事故以前から,腰痛,変形性関節症といった既往歴があり,他院(a病院)で,鎮痛薬の処方を受けていたことが認められるのであり,本件事故後の通院治療は既往症に対する治療であった可能性を否定できない。


第五 結論
 以上によると,原告らの損害について検討するまでもなく,原告らの請求はいずれも理由がないからこれらをいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。
名古屋地方裁判所民事第3部
裁判官 安田大二郎
以上:4,755文字

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