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(注)通勤災害交通事故には弁護士費用特約適用外とした簡裁判決紹介

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令和 4年 4月27日(水):初稿
○原告が、被告との間で、弁護士費用等保証特約が付された自動車保険契約を締結した後に発生した交通事故において、損害賠償請求をすべく示談交渉及び訴訟提起のため、弁護士に委任し、着手金等を支払ったため、被告に対し、自動車保険契約に付されていた弁護士費用特約に基づき、弁護士費用の支払いを求めました。

○これに対し、本件特約は、交通事故被害者の損害補償を目的とするものであるところ、労働者災害補償制度による給付・補償が行われる人身事故については、保険手続をとるまでもなく、同制度を利用することで一定の給付・補償が迅速に行われることから、本件特約により保険での保証の対象外としたのであることからすると、本件特約の「労働災害」には、通勤災害を含むものと解されるところ、本件弁護士費用等の請求には、本件免責条項の適用があるから、被告は保険金支払義務を負わないとした令和元年12月23日東京簡裁判決(自保ジャーナル2082号181頁)全文を紹介します。

○原告は,加害者側保険会社との示談交渉のために、代理人弁護士に対し,着手金10万8000円,印紙代9万5000円及び予納郵券費用8144円の合計21万1144円を支払ったと主張しています。示談交渉に印紙代がかかるとの主張は不思議ですが、交通事故でも通勤災害に該当すると弁護士費用特約が使えなくなることは注意が必要です。

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主   文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由
第一 請求

 被告は,原告に対し,21万1144円及びこれに対する平成31年4月6日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

第二 事案の概要
 本件は,原告が,被告との間で,弁護士費用等保証特約が付された自動車保険契約を締結した後に発生した交通事故において,損害賠償請求をすべく示談交渉及び訴訟提起のため,弁護士に委任し,着手金等を支払ったため,被告に対し,自動車保険契約に付されていたいわゆる弁護士費用特約に基づき,弁護士費用及びこれに対する訴状送達の日の翌日からの遅延損害金を求める事案である。
 これに対し,被告は,通勤途上の災害は労働災害に当たり,保険金を支払わない場合に当たるとして争っている。

1 前提事実
(1)被告は保険契約を主な業とする株式会社である。
(2)原告と被告は,平成27年1月25日,自動車保険契約(証券番号略,本件契約)を締結した。それによると,原告を被保険者,保険期間は,平成27年2月25日から平成28年2月25日,弁護士費用等補償特約(本件特約)が付されている。
(3)本件特約4条(3)〔5〕には,労働災害により生じた身体の障害(被保険者に搭乗中の一部例外を除く。)については,保険金を支払わない旨規定されている。
(4)本件の保険契約に関する2014年10月改定の「ご契約のしおり」や契約締結時に交付されたパンフレットには,「労働災害」の定義は記載がない。また,「普通保険約款」の第4章「基本条項」の第29条には,「この約款に規定のない事項については,日本国の法令に準拠します」と記載されている。
(5)原告は,第三者との間において,平成27年12月22日に発生した交通事故により第三者の加入している保険会社と示談交渉を行うため,原告訴訟代理人と委任契約を締結し,原告は,同代理人に対し,着手金10万8000円,印紙代9万5000円及び予納郵券費用8144円の合計21万1144円を支払った。

2 争点
 通勤途上の災害は,本件特約の支払拒絶事由である労働災害に該当するか。

第三 当裁判所の判断
1 前提事実(3)にあるとおり,本件契約には,労働災害については本件特約の対象にはならない旨の記載があるところ,労働災害とは何かについての記載はない。そのため,労働災害に通勤災害が含まれるかについては,(日本国の)法律の解釈によることになる。

 そこで,原告は,「労働災害」という文言を使用しているのは労働安全衛生法しかなく,同法2条1号によれば,労働災害とは「労働者の就業に係る建設物,設備,原材料,ガス,蒸気,粉じん等により,又は作業行動その他業務に起因して,労働者が負傷し,疾病にかかり,又は死亡することをいう。」とあり,通勤途上の災害が含まれていないことや,厚生労働省が実施した調査において通勤災害が除かれていることから,通勤途上の事故は労働災害に含まれないと主張している。

 しかし,労働安全衛生法は,同法1条が規定するように,職場における労働者の安全と健康を確保し,快適な職場環境の形成を促進することを目的として立法されたものであり,雇用の過程で雇用に起因して生じた事故による負傷・死亡について,使用者が災害を被った労働者に対する災害補償を規定したものであることからすると,その対象は職場すなわち業務を行っている場所に限られるのは当然のことであって,通勤途上の事故は最初からその対象とはなっていないといえる。

 むしろ,労働災害の定義については,労働者の負傷,疾病,障害等において,労働者を保護し,必要な保険給付を行うことを目的とする法律である労働者災害補償保険法によるべきである。確かに,本件特約には「労働災害」とあり,同法には労働災害についての解釈規定はなく,労働者の業務上の負傷,疾病、障害又は死亡を指す「業務災害」及び労働者の通勤による負傷,疾病,障害又は死亡を指す「通勤災害」を含むとのみ規定されていることから,これらの文言からすると同一のものとはいえないと解釈できる余地はあるものの,約定の解釈は文言に拘泥する必要はなく,法律の制度趣旨から判断すべきである。

つまり,本件特約は,交通事故被害者の損害補償を目的とするものであるところ,労働者災害補償制度による給付・補償が行われる人身事故については,保険手続をとるまでもなく,同制度を利用することで一定の給付・補償が迅速に行われることから,本件特約により保険での保証の対象外としたのである。

 そうすると,本件特約の「労働災害」には,通勤災害を含むものと解されるところ,本件弁護士費用等の請求には,本件免責条項の適用があるから,被告は保険金支払義務を負わない。
 

2 以上によれば,原告の請求は理由がない。東京簡易裁判所民事第1室裁判官 長野慶一郎
以上:2,621文字

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