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自損事故修理費相当保険金請求を棄却した高裁判決紹介

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令和 4年 5月25日(水):初稿
○「自損事故修理費相当保険金請求を棄却した地裁判決紹介」の続きで、その控訴審令和4年3月29日東京高裁判決(ウエストロー・ジャパン)全文を紹介します。

○問題の自損事故車両高級車ランボルギーニは、平成29年3月頃,中古で代金約1200万円,10年間のローンで買い、本件事故前には,一度も本件車両をぶつけたり,傷付けたりしたことはなく,傷一つない状態であり,本件車両に傷を付けたくなかったので,丁寧に乗っていたが、本件車両の損傷は,本件事故で一度についた傷で間違いないと主張しており、保険金を請求する以上、車両に損傷痕があることは間違いなく、本件車両の車体左側面の地上高約5~86cmの領域に,左フロントバンパーからドアミラーにかけての前方領域(領域A)と左リアフェンダーから左リアバンパーにかけての後方領域(領域B)の2か所に損傷が認められています。

○控訴人は、平成31年3月31日午後10時00分頃,千葉県野田市〈以下省略〉付近路上(以下「本件事故現場」という。)において,本件車両をガードレール等に衝突させる事故によって生じた主張しましたが、原審判決は、本件車両の損傷が本件事故現場の状況と整合しないこと、本件事故に関する原告の陳述内容が不自然・不合理であることを詳細に認定して、本件事故が発生したと認めることはできないとして請求を棄却しました。

○控訴人は、控訴審で現実に生じている損傷が、本件事故現場で生じたことに不自然はないと種々主張しましたが、控訴審判決も、控訴人の主張をことごとく排斥して、控訴人の主張はいずれも採用することができないとして控訴を棄却しました。事故後に警察には届けず、現場検証等は行われていないようです。このような場合、事故の存在自体立証は極めて困難です。

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主   文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は,控訴人の負担とする。

事実及び理由
第1 控訴の趣旨

1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は,控訴人に対し,584万5367円及びこれに対する令和元年5月15日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
 (以下において略称を用いるときは,原判決に同じ。)
1 事案の要旨
 本件事案の要旨は,原判決1頁23行目末尾に行を改めて次のとおり加えるほかは,原判決「事実及び理由」第2の柱書に記載のとおりであるから,これを引用する。
 「 原審が,控訴人の請求を棄却したところ,控訴人がこれを不服として控訴した。」

2 「争いのない事実等」,「争点」及び「争点に関する当事者の主張」は,後記3を加えるほかは,原判決「事実及び理由」第2の1ないし3に記載のとおりであるから,これを引用する。

3 当審における控訴人の補足的主張
(1) 本件車両の左ドアミラー前端部(根元側)は,車体の最外側のフェンダーより内側にあるので,本件柱は左ドアミラー前端部には当たらず,損傷は生じないから,左ドアミラー前端部に損傷がないことは何ら不自然ではない。
(2) 本件柱は,カタカナの「ハ」の字を逆にしたように下に2cm狭まっているから,本件車両のフロントバンパーの擦過痕を生成させた地上高26cmの接触の対象物は本件柱である。
(3) 本件車両及び本件柱から採取した付着物を分析した試験報告書(乙12)によれば,本件車両と本件柱に同じ構成成分の付着物(車両付着物No.4及び支柱付着物No.1)が付着しているから,本件事故の存在は明白である。
(4) 控訴人が本件車両で本件事故現場を走行したことは,本件車両に搭載されているナビの走行履歴から明らかである。

第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も,控訴人の請求は理由がないものと判断する。その理由は,次のとおり補正し,当審における控訴人の補足的主張に対する判断を後記2のとおり加えるほかは,原判決「事実及び理由」第3の1に記載のとおりであるから,これを引用する。
 6頁10行目の「=190+15×2」の次に「。甲11によれば,216.4cm。」を加える。

2 当審における控訴人の補足的主張に鑑み補足する。
(1) 控訴人は,本件車両の左ドアミラー前端部(根元側)は,車体の最外側のフェンダーより内側にあるので,本件柱は左ドアミラー前端部には当たらず,損傷は生じないから,左ドアミラー前端部に損傷がないことは何ら不自然ではないと主張する。

 しかし,証拠(乙2,12,13)によれば,本件車両の左ドアパネルの擦過痕は,左ドアミラー前端部より車体後方の部分まで生じているところ,本件車両の左ドアパネルの擦過痕の終端部まで本件柱と接触したとすると,左ドアパネルの擦過痕と上下位置が重なる位置にある左ドアミラー部分も本件柱と接触し,損傷が生じていなければならないが,左ドアミラーの損傷は,その左側端部の擦過痕のみであり,左ドアパネルの擦過痕と上下位置が重なる位置にある左ドアミラー部分には擦過痕が認められない。

そうすると,本件車両の左ドアミラーが車体の最外側のフェンダーより内側から設置されており,その内側部分に損傷がないとしても,擦過痕が生じている左ドアパネルと重なる上下位置にあるドアミラー部分に損傷が認められないのは不自然というほかない(前記引用に係る原判決「事実及び理由」(以下「原判決」という。)第3の1(2)ア,ウ参照)。

(2) 控訴人は,本件柱はカタカナの「ハ」の字を逆にしたように下に2cm狭まっているから,本件車両のフロントバンパーの擦過痕を生成させた地上高26cmの接触の対象物は本件柱であると主張する。

 しかし,証拠(乙2,12,13)によれば,本件柱の間隔は,路面部(高さ0cm)で220cm,本件車両のドアミラーの高さ(高さ86cm)で222cmであることが認められ,本件柱は路面に対してほぼ垂直であるから,本件車両のフロントバンパーの擦過痕のうち,他とは異なる強さの擦過を生成させた地上高約26cm前後の接触の対象物が本件柱であるとは認められない(原判決第3の1(2)イ(補正後のもの),エ参照)。

(3) 控訴人は,本件車両と本件柱に同じ構成成分の付着物(乙12の車両付着物No.4及び支柱付着物No.1)が付着しているから,本件事故の存在は明白であると主張する。

 なるほど,証拠(乙12)によれば,車両付着物No.4及び支柱付着物No.1から,いずれもスチレン変性アクリルウレタン樹脂及び二酸化チタンが検出されていることが認められる。しかし,車両付着物No.4は地上高約86cmの位置にあるドアミラーカバーから採取された灰色の付着物であるのに対し,支柱付着物No.1は地上高約55cmの位置から採取された白色の付着物であり,その位置や色調から同一の付着物とは認められないから,両者の構成成分から一致した成分が検出されたことをもって,本件車両と本件柱が接触した事実を裏付けるものとはいえない。

(4) 控訴人は,控訴人が本件車両で本件事故現場を走行したことは,本件車両に搭載されているナビの走行履歴から明らかであると主張する。

 しかし,控訴人が指摘する証拠(甲13,14)が本件車両の走行履歴であるとしても,その走行の日時は明らかではないから,控訴人が主張する日時に本件車両が本件事故現場を走行したことを証明するものとはいえない。また,仮に,控訴人が過去に本件車両で本件事故現場を走行したことがあったとしても,本件車両には傷を付けたくなかったので,丁寧に乗っていたと供述する控訴人が,本件事故当時,本件車両が本件柱に衝突することがないように特段の注意をすることもなく本件事故現場を走行して本件事故を起こしたという供述が,不自然,不合理であることに変わりはない(原判決第3の1(3)ア参照)。

(5) その他,控訴人はるる主張するが,いずれも前記認定判断を左右するものではないから,控訴人の主張はいずれも採用することができない。

第4 結論
 以上によれば,控訴人の請求を棄却した原判決は相当であって,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。
 東京高等裁判所第4民事部 (裁判長裁判官 鹿子木康 裁判官 田原美奈子 裁判官 伊藤清隆)
以上:3,401文字

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