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弁護士報酬算定要素たる経済的利益の一例紹介続編1

平成21年11月27日(金):初稿
「弁護士報酬算定要素たる経済的利益の一例紹介」で、弁護士Xが、Yから55億円の不動産の買取代金支払期限延長(支払期限を延長できないと売買契約が解除された上約11億円の違約金発生、第1委任契約)と更に60億円での転売交渉(第2委任契約)を依頼され、その報酬金として、着手金等で既に5000万円を受領済みの上に更に金3億円もの報酬支払を認められた誠に羨ましい限りの判決(平成20年5月20日東京地裁判決、判時2021号74頁)を紹介し、最後に、「当事務所ではこんな大事件は一生に一度も出くわさないことは確実で、弁護士にとっては誠に羨ましい判決ですが、控訴されており控訴審でも維持されるかどうかは不明です。」と記載していました。

○私としては、これほど弁護士にとって有り難い判決が維持されるだろうかと心配していましたが、控訴審の東京高裁平成20年12月25日判決(判時2051号54頁)で、案の定、3億円の支払命令が1878万円と15分の1以下に減ぜられ、訴訟費用負担もXが15分14、Yが15分の1と変更されました。

○弁護士費用は、その依頼事件の経済的利益の一定割合とする例が多く、本件での経済的利益として、
Xは、対象不動産価格そのものの金55億円
Yは、売買代金支払遅れを理由に解除されると発生する違約金約11億円
と主張し、
Xの法律事務所報酬基準表によると55億円とすると着手金約1億4000万円、報酬金約2億2800万円の合計3億6800万円となり、5000万円の既払い金を差し引いてもなお3億1800万円残っていることになりますが、一審の東京地裁判決は、Xの主張通り、認定して3億円の支払を命じていました。

○これに対しYが控訴し、55億円の売買代金支払延期交渉依頼の第1委任契約の着手金を3000万円、報酬金を2000万円とする合意が成立していたとの主張を追加し、控訴審の東京高裁判決は、この主張を認め、第1委任契約の報酬等は全て支払済みであり、第2委任契約に基づく着手金とこれに対する遅延損害金の限度でXの請求を認容しました。

○控訴審での第1委任契約報酬額についての主な争点は、着手金3000万円・報酬金2000万円とする合意が成立していたかどうかでしたが、高裁判決では、一審で争いになったこの事件の経済的利益について、この委任契約の最大の目的は売買代金の不履行による違約金支払回避であり、不動産所有権確保自体が目的ではなかったので、その経済的利益の額は違約金相当額の約11億円であると認定しました。

○第2委任契約については不動産の転売予定価格60億円を経済的利益として、当初の売買契約における購入代金55億円と転売費用を控除すべきとしたYの主張を排斥しました。

○おそらく仙台の一般の弁護士の感覚では、11億円の違約金支払発生回避のための示談交渉事件について着手金3000万円、報酬金2000万円合計5000万円の報酬金合意をすること自体、驚きです。そもそも10億円を超える事件が先ずありませんので、比較できないところですが、仙台と東京の弁護士報酬感覚は、相当違うなと実感し、また羨ましいとも感じました。Xは上告していますので、上告審がどうなるか、気になるところです。
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