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職務を行い得ない事件-利益相反・利害対立とは

平成24年 9月22日(土):初稿
○弁護士には、その職務の信頼性を保つために、業務遂行に当たり、弁護士職務基本規程が制定され、弁護士はの規定に拘束され、これに違反すると懲戒等の制裁を課されます。日弁連機関誌「自由と正義」には、毎号、弁護士懲戒例が掲載され、私も欠かさずこれを読んでいます。懲戒は以下の4種です。
①戒告(弁護士に反省を求め、戒める処分)
②2年以内の業務停止(弁護士業務を行うことを禁止する処分)
③退会命令(弁護士たる身分を失い、弁護士としての活動はできなくなるが、弁護士資格は維持)
④除名(弁護士たる身分を失い、弁護士としての活動が出来ず、3年間は弁護士資格喪失)

最も軽い戒告の理由で多く見られるのが、弁護士職務基本規程の「職務を行い得ない事件」違反です。

○職務を行い得ない事件に関係する規定は次の3つの条項です。

第27条(職務を行い得ない事件)
 弁護士は、次の各号のいずれかに該当する事件については、その職務を行ってはならない。ただし、第3号に掲げる事件については、受任している事件の依頼者が同意した場合は、この限りでない。
1 相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件
2 相手方の協議を受けた事件で、その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるもの
3 受任している事件の相手方からの依頼による他の事件
4 公務員として職務上取り扱った事件
5 仲裁、調停、和解斡旋その他の裁判外紛争解決手続機関の手続実施者として取り扱った事件

第28条(同前)
 弁護士は、前条に規定するもののほか、次の各号のいずれかに該当する事件については、その職務を行ってはならない。ただし、第1号及び第4号に掲げる事件についてその依頼者が同意した場合、第2号に掲げる事件についてその依頼者及び相手方が同意した場合並びに第3号に掲げる事件についてその依頼者及び他の依頼者のいずれもが同意した場合は、この限りでない。
1 相手方が配偶者、直系血族、兄弟姉妹又は同居の親族である事件
2 受任している他の事件の依頼者又は継続的な法律事務の提供を約している者を相手方とする事件
3 依頼者の利益と他の依頼者の利益が相反する事件
4 依頼者の利益と自己の経済的利益が相反する事件

第32条(不利益事項の説明)
 弁護士は、同一の事件について複数の依頼者があってその相互間に利害の対立が生じるおそれがあるときは、事件を受任するに当たり、依頼者それぞれに対し、辞任の可能性その他の不利益を及ぼすおそれのあることを説明しなければならない。

第42条(受任後の利害対立)
 弁護士は、複数の依頼者があって、その相互間に利害の対立が生じるおそれのある事件を受任した後、依頼者相互間に現実に利害の対立が生じたときは、依頼者それぞれに対し、速やかに、その事情を告げて、辞任その他の事案に応じた適切な措置をとらなければならない。


○特に地方会で多いのが、A・B間の紛争についてAから市民相談等で相談を受けていながら、後になってBからその紛争について相談を受け、事件として受任する例です。数年前までは、市民相談等公共機関での相談は数が多く、相談者・相談内容を覚えておらず、Aの相談を受けていたことを失念してBの依頼を受け、A相手に訴え等を出した後に、Aからあの弁護士は最初に私が相談したのに、私を訴えてくるとはけしからんと文句を言われる例です。このような場合は、弁護士としては即刻辞任しないと懲戒処分を受ける恐れがあります。

○28条依頼者同士の「利益の相反」と32条「利害の対立」の区別は紛らわしい面がありますが、「利益の相反」は形式的判断で、「利害の対立」は、「利益の相反」が具体的に現れて現実の対立になった場合のようです。例えば、相続人A、B、Cが居て、A、Bが遺産分割方法について意見が一致するも、Cとは意見が一致しない場合、A、B、C三者は一定の財産の分配を求め、誰かが多くなると誰かが少なくなるとの関係で形式的には全員「利益が相反」する立場にありますが、A・Bは分割方法について意見が一致していると「利害の対立」はありません。A・BとCとの間は、「利益が相反」して、且つ、「利害が対立」している関係になります。

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