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司法制度改革審議会抜粋-合格基準設定は難しい

平成25年 6月 6日(木):初稿
○「司法制度改革審議会データベース試作品完成」を続けます。
平成12年8月7日の集中審議第1日目「法曹養成」、「法曹人口」をテーマとする集中審議での各委員の遣り取りで、司法試験の合格基準と合格者数について触れた部分の議事録を紹介します。

○元検事長、元高裁長官、東京大学教授の各委員すなわち法曹関係者は、厳しい合格基準案を考えているのに対して、主婦連事務局長、連合、東京電力副社長等弁護士を利用する側では、兎に角、人数が足りないのだから、合格基準云々はあまり気にせず、早く合格者を増やせと主張しているように感じました。利用する側、ユーザー側が、質の低下については、余り考慮することなく、兎に角、人数を増やせと言っているのが印象的です。

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【水原委員(※元名古屋高等検察庁検事長)】今の問題なんですけれども、今、吉岡委員は80点くらいが合格ラインだという御理解のようですけれども。

【吉岡委員(※主婦連合会事務局長)】90点です。

【水原委員】実は60点が合格ラインだと思います。

【吉岡委員】それで3%なんですか。

【水原委員】はい。だからそれより下げたならば、量はどんどん合格者は出るんだけれども、それでいいのかというのが議論になっているわけなんです。

【吉岡委員】でも、60点が合格ラインでもって、3%しか合格しないとすると、今の法学部の教え方がよっぽど悪いということなのでしょうか。

【井上委員(※東京大学法学部教授刑事訴訟法)】法学部だけじゃなくて、今の制度の下での受験を専らの目標にして勉強しているわけです。ですから、本当に中身がどれだけわかっているのかということで見ると、かなり厳しくなるのです。

【吉岡委員】後で言おうと思ったことですが、司法試験に問題があるのかということなんです。井上先生が思っているような、この人だったら合格させてもいいなという資質、そういう人たちが拾えるような内容の司法試験であればかなり上がるということではないですか。

【井上委員】そこは私の報告でも申し上げましたし、ヒアリングでも法務省の小津人事課長が指摘されていましたが、一種のイタチごっこでして、あくまで客観的、公平な試験をしないといけないということからすると、今のような形は崩せないのです。そして、それに効率的に受かるためには、受験予備校だけが悪いとは申しませんけれども、今のような勉強の仕方になってしまう。そうすると、かなりの層は、大体同じような金太郎飴的になってしまって、その間での評価になってしまう。今のような仕組みを維持する限りは、試験問題を変えるということによって救い上げるようなことはなかなか難しいのではないか。そういう努力を現に試験の方ではやってきた。毎年のようにやってきたわけです。

しかし、問題の出し方を変えても、1年か2年しか効果がなくて、受験に向けた効率よいプログラムをうたい文句にしているところがたくさんあり、プロですから対応してしまう。そうなるともうだめなのです。

【藤田委員(※元広島高等裁判所長官)】大分前ですけれども、私も司法試験の考査委員をしたことがあるんですが、及落判定会議で議論をしますと、1点、2点下げるとかなり数は増えるんですが、いつも学者の試験委員の方が下げることを主張され、実務家の司法研修所の教官などが下げるのに反対するという図式で毎年同じことをやっていたんです。学者の方は1点、2点下げたところで大したレベルの違いはないとおっしゃる。研修所の方は、無理して下げた期は後々随分手を焼いて大変だったということなんです。

そういう意味で学者が学生を見る目と、実務家が見る目とちょっと違うかなという気もするんです。口述試験も守秘義務があるから余り言っちゃいけないのかもしれませんけれども、あるレベルの点数がほとんどの受験者について付くんですが、出来がよければプラス1、プラス2、悪ければマイナス1、マイナス2というような点を付けます。本当は全科目についてレベル点以上を取らなければいけないのですが、それでは予定している人数に達しないので、1科目や2科目、マイナスが付いているような受験生も取るということでやっていました。そういう意味では以前のことではありますけれども、質的なレベルについてはかなり問題があるんじゃないでしょうか。

【井上委員】私も現役で守秘義務があるので、具体的には申し上げられないのですけれども、その点はもっとはっきり差が出るような形でやるようにはなってきているのですけれども、それでもおっしゃるような問題は残っています。

【髙木委員(※日本労働組合総連合会副会長)】試験の出来がいいか悪いかの話はまた別途やってもらう場があるんだと思うんだけれども、人口論をやるわけでして、ともかくアクセスが良くない、弁護士さんも弁護士事務所も、あるいは一部裁判所も、警察には余り連れていかれたくないけれども、そういう意味でのアクセスが非常に悪い、使い勝手を良くしてほしいという、その根っこには、現状ではより多く、より良く、より早くというのもあるんだろうと思うんです。そういう意味で、今までいろんな議論を重ねてきましたが、裁判所にもあるいは検察庁にも弁護士さんも、人が足りない、少額訴訟などは受けてくれる人がいないと、みんな言っているわけです。

こういうのを予測してどうのこうのというのは、いろんな職種、いろんな仕事があるわけですが、長く定着したような仕事は、一部例外的に仕事の予測可能性みたいな世界があるのかもしれませんが、大方のものというのは、世の中の動きで、結局、過剰になれば、社会がおのずと自律的に調整していくんですよ。食えなくなるわけですから。

そういう意味で、足りないときはともかく増やす方向を一生懸命志向してみて、それに伴って、陥ってはいけない弊害はどういうことなんだというのをできるだけレベルなどで押えてという、そういう意味で、予測ができないからどうだとか、予測しながらというのは、この種の問題では余り意味がないんじゃないかなと、私はそんなふうに思います。

【山本委員(※東京電力(株)取締役副社長)】全く同じ意見です。将来何年ごろまでに幾らにするという議論は、ちょっと現実離れした議論だと思うんです。確かに、現在足りないということは事実なわけですから、とにかく増やしていくということでいいと思うんです。前提が幾つかあるんですけれども、質・量とも必ず需要は増えていくわけですけれども、弁護士さんの兼職禁止というものを徹底的に自由化するということがまず一つ挙げられるでしょう。

現実問題として、かなりの数の隣接職種の人たちがいるわけです。中坊先生が最初におっしゃったように、将来どういう形でいくんだろうかというのはやはり議論する必要があると思います。してみると、多少は整理という方向が出てくるんじゃないかと私は思うんです。その間はその人たちのリーガル・サービスというのは現実に受けていくわけですから、いろんな不確定要素がありますので、何年ごろまでに何万人にするという議論は、余り好ましくないんじゃないか。現実に来年から幾らくらいに増やしていくかというところを我々は議論すべきじゃないかと思っています。


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