仙台,弁護士,小松亀一,法律事務所,宮城県,交通事故,債務整理,離婚,相続

旧TOPホーム > 弁護士等 > 弁護士法関連 >    

弁護士の説明義務に関する平成25年4月16日最高裁判決まとめ

平成25年12月 6日(金):初稿
○「弁護士の説明義務に関する平成25年4月16日最高裁判決全文紹介1」の続きで、私なりのまとめです。
この事件の第一審は平成23年8月18日鹿児島地裁名瀬支部判決(金融・商事判例1418号21頁)ですが、この判決での事案の概要は、「本件は、亡Xが、a群島のb公設事務所の弁護士であった被告に債務整理を委任したものの、被告が債務整理の方針等についての説明を怠り、過払金の回収事務以外の債務整理を放置したことにより、経過利息が増大する損害が生じたほか、精神的苦痛を被ったとして、被告に対し、債務不履行に基づく損害賠償金455万4029円(内訳:経過利息相当額15万4029円、慰謝料400万円、弁護士費用40万円)及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成22年3月29日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。」と整理されています。

○この事件で被告とされた弁護士は、「a群島のb公設事務所の弁護士」ですが、この事件の外にも「債務整理事件放置」を理由に元依頼者から相当数の損害賠償請求を受けており、マスコミでも話題になったものです。本件では、約455万円の請求に対し、判決は金22万円の支払を命じましたが、弁護士側で控訴して、控訴審平成23年12月21日福岡高裁宮崎支部判決(金融・商事判例1418号17頁)では、初回面談時に債務整理方法について説明し、途中でも回収した過払金や利限残の額、消滅時効を待つ方針であること、預り金の今後の扱い方、裁判所等から連絡があった場合の対応方法などについて説明していることからすれば、弁護士側に説明義務違反があるとまでは認められないなどとして、原判決を取り消し、元依頼者側の請求を棄却していました。

○これについての元依頼者側が上告した上告審が、「弁護士の説明義務に関する平成25年4月16日最高裁判決全文紹介1」で紹介した判決ですが、弁護士側の消滅時効待ち方針は、債務整理の最終的解決が遅れ、且つ、提訴の可能性があり、その場合遅延損害金支払義務を負うリスクを伴うもので、また、回収過払金から支払って最終解決も可能であるのに、これらの説明を十分に行わなかった説明義務違反があるとして、控訴審判決を破棄し、損害の点について審理を尽くさせるため原審差し戻しとしました。

○問題の弁護士は、「a群島のb公設事務所」初代所長として平成17年3月から平成20年4月まで赴任しており、本件は平成17年に受任し、債務整理を依頼され、回収した過払金で1社を残して解決するも、最後の1社のみ元金8割相当額支払提案に応じなかったため、返済をせず、時効待ち方針を取りました。その時の報告書は、次の通りです。
頭書の件ですが、すべて終了しましたので、ご報告いたします。こちらで再計算したところ、A社25万4512円、B社24万4222円、C社108万4571円の過払金があり、和解金として、A社25万7812円、B社25万1210円、C社108万7771円の合計159万6793円を回収しました。また、未払分として、D社KC38万7000円、E社29万7840円残りましたが、D社は30万9000円を既に支払いました。E社は和解に応じてもらえなかったため、5年の時効を待とうと考えています。E社や裁判所から連絡があった場合は、私のところに連絡をください。回収した金額から、裁判費用(2万1218円)、D社への和解金(30万9315円)及び私の報酬(77万9038円)を差し引いた48万7222円を返金しますので、振込先を教えてください。

○E社29万7840円の債務は消滅時効待ちを宣言して、いったん債務整理事件は終了として、回収金から債務弁済金、弁護士報酬金を差し引いた約48万円を元依頼者に返還しています。E社とは、利息制限法充当計算方法の違いで弁護士一連計算では約12万円、E社主張分断計算では約30万円と双方の主張の差が大きく和解に至らなかったものです。債務整理事件では、このような事例は日常的にあります。この場合、最も厳格なやり方は、E社相手に約12万円を供託して、債務不存在確認の訴えを提起することです。

○しかしこの事案では、回収金がまだ48万円も残っていますので、双方の主張の差額18万円の半分の9万円を追加する21万円程度の和解案を再提示して和解するのが一般です。僅か18万円の違いを確定するため訴えを提起し時間と労力をかけるよりは、9万円程度泣いても早期解決した方がお客さまにとって好都合だからです。但し、和解するについても、訴えを提起するについても、お客さまに状況を十分に説明して、どちらの方法を取るかをお客さまに判断して頂きます。この場合、過払金48万円が残っていますので、お客さまは100人中99人が、中を取る和解案再提案を希望されます。

○ところが、この弁護士は、上記のような方法を取らず、単に消滅時効待ちとして、E社の債務を残したままにも拘わらず「すべて終了しました」と報告し、いったん債務整理終了として、お客さまに回収金清算金48万円を返還しています。お客さまにとっては、48万円を返されても、1社とはいえ中途半端に債務が残ったままでは、気持ち悪いことこの上ないはずです。この精神的苦痛の慰謝料として400万円を請求した気持も判らないではありません。消滅時効待ち作戦をとる場合も希にありますが、本件のような単純な事案では、余りに安易と評価されて当然です。
以上:2,256文字

タイトル
お名前
email
ご感想
ご確認 上記内容で送信する(要チェック
※大変恐縮ながら具体的事件のメール相談は実施しておりません。

 


旧TOPホーム > 弁護士等 > 弁護士法関連 > 弁護士の説明義務に関する平成25年4月16日最高裁判決まとめ