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弁護士懲戒制度と裁判官懲戒制度の違い等覚書

平成29年12月28日(木):初稿
○平成29年12月26日、某有名裁判官のツイッターでの刑事判決についての感想発言について、遺族が抗議したとの事実をNHK午後7時と9時のニュースで大きく取り上げられ、大変驚きました。驚いた理由は、こんなことをなんでこれほど大げさにニュース報道するのかということです。そのツイッター発言は、確かに遺族からは不愉快なものかも知れませんが、裁判官にも表現の自由があり、その範囲内と思われたからです。遺族が抗議するのも自由ですが、それを大げさに取り上げ、如何にも非常識な裁判官だとのイメージを作ろうとすることに違和感を感じました。

○遺族は処罰を求める要望書を東京高裁に出したとのことですが、裁判官の懲戒処分を求めたと思われます。弁護士の懲戒については、弁護士法56条以下に詳細に規定されており、同58条では「何人も、弁護士又は弁護士法人について懲戒の事由があると思料するときは、その事由の説明を添えて、その弁護士又は弁護士法人の所属弁護士会にこれを懲戒することを求めることができる。」と誰でも特定の弁護士を弁護士会に懲戒請求できるとされており、更に同63条で「懲戒の事由があつたときから3年を経過したときは、懲戒の手続を開始することができない。」と除斥期間も定められ、懲戒相当事由発生時から3年経過で懲戒処分ができなくなる期間制限も定められています。

○裁判官の懲戒については,先ず憲法78条で「裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれを行ふことはできない。」と特別の身分保障が規定され、その懲戒については、裁判所法49条で「裁判官は、職務上の義務に違反し、若しくは職務を怠り、又は品位を辱める行状があつたときは、別に法律で定めるところにより裁判によつて懲戒される。」と規定され、弁護士法のように「何人も……懲戒請求できる。」との規定は見当たりません。

○裁判所法の「別に法律で定めるところ」とは、先ず裁判官分限法があり、同法2条で「裁判官の懲戒は、戒告又は1万円以下の過料とする。」、同法6条で「分限事件の裁判手続は、裁判所法第80条の規定により当該裁判官に対して監督権を行う裁判所の申立により、これを開始する。」とあり、ここでも「何人も……懲戒請求できる。」との規定は見当たりません。

○裁判官分限法での懲戒処分は「戒告又は1万円以下の過料」だけしか課されませんが、裁判官の罷免については、裁判官弾劾法1条で「裁判官の弾劾については、国会法に定めるものの外、この法律の定めるところによる。」、国会法125条で「裁判官の弾劾は、各議院においてその議員の中から選挙された同数の裁判員で組織する弾劾裁判所がこれを行う。」と規定され、同法126条で「裁判官の罷免の訴追は、各議院においてその議員の中から選挙された同数の訴追委員で組織する訴追委員会がこれを行う。」と規定され、ここでも「何人も……懲戒請求できる。」との規定は見当たりません。また、裁判官弾劾法12条で「罷免の訴追は、弾劾による罷免の事由があつた後3年を経過したときは、これをすることができない。」と期間制限が定められています。

○検察官の懲戒について調べるため検察庁法を確認すると罷免については同法23条で「検察官適格審査会の議決を経て、その官を免ずることができる。」と、同法25条で「検察官は、前3条の場合を除いては、その意思に反して、その官を失い、職務を停止され、又は俸給を減額されることはない。但し、懲戒処分による場合は、この限りでない。」と規定され、同法には「懲戒処分」については同法では規定していません。検察官も公務員なので国家公務員法懲戒規定によると思われます。

○国家公務員法では、82条に「職員が、次の各号のいずれかに該当する場合においては、これに対し懲戒処分として、免職、停職、減給又は戒告の処分をすることができる。」、84条に「懲戒処分は、任命権者が、これを行う。2 人事院は、この法律に規定された調査を経て職員を懲戒手続に付することができる。」と規定されており、検察官の懲戒は任命権者の法務大臣になると思われます。なお、公務員関係でも弁護士法のように「何人も……懲戒請求できる。」との規定は見当たりません。
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