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”初公開!裁判官の「出世とカネ」こうなっている”の「出世」部分紹介

平成30年 1月 9日(火):初稿
○「”初公開!裁判官の「出世とカネ」こうなっている”の「カネ」部分紹介」の続きで、前半の「出世」部分を紹介します。
「カネ」の部分で、「地裁所長クラス『判事3号俸』年収2000万円の壁は厚く、『判事4号俸』のまま据え置かれ、定年を迎える裁判官も少なくなく、この『判事3号俸』昇級できるかが出世したかどうかのメルクマールのようです。」と記述していました。「判事3号俸」への昇級できるかどうかで、生涯賃金に相当の開きが出てきます。この仕組みが、裁判官を萎縮させる最大の原因のようにも感じました。

○「アメリカ法曹事情-裁判内容ビデオ公開」に「司法運営を担う者が、日本の場合は明治以来確立された官僚組織としての裁判所(お上、おかみ)であるところ、アメリカの場合は民(たみ)が選んだ民の代表たる裁判官が裁判手続を運営し」、「裁判官に任命された者の目は、日本の場合は常に最高裁判所に向けられるところ、アメリカの場合は、民-選挙民に向けられることになります。」と記述していました。

○アメリカでは、時の権力者トランプ大統領の移民政策を否認する判例が連発され、流石、アメリカと感嘆し、日本の司法との違いを実感しましたが、以下の記事の「憲法で保障されているはずの『裁判官の独立』と『身分保障』は、外部からの干渉には強くても、内部を支配する組織の論理の前では、ほとんど意味をなしていないと言えそうだ。」との結論に妙に納得しました。

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初公開!裁判官の「出世とカネ」こうなっている
エリートの知られざる「生活」と「人生」
岩瀬達哉(いわせ・たつや)平成29年5月9日「現代ビジネス」



司法の名の下、人の生殺与奪の権を握り、時に国家の命運を左右する力すら持つのが裁判官だ。しかし、その実像はほとんど知られていない。本当に彼らに人が裁けるのか。その内面と実態に迫る。

全国に3008人
裁判官は、日本でもっとも難しいとされる司法試験にパスし、さらに裁判実務の知識を学ぶ司法研修所の卒業試験でも、上位の成績優秀者の中からしか採用されない。その理由は、裁判官に与えられる権限の大きさと関係している。神ならぬ人が、人を裁くという特別の責務と、国の政策をも変更しうる権力を与えられている裁判官には、最良の知性と良識、教養に裏打ちされた判断力が求められるからだ。

現在、裁判官は、最高裁判所を含む全国598ヵ所の裁判所に3008人(簡易裁判所判事を除く)が配置されている。そのうち、最高裁事務総局で司法行政に携わる「裁判をしない裁判官」を除くと、実質、2855人の裁判官で、あらゆる事件を審理し、判断を下しているのである。裁判官一人あたりに割り振られる事件数は、年間200件~350件で、単純計算すると二日に1件、ないし2件の割りで処理していかないと消化できない数だ。この事件の処理件数は、「星取表」と呼ばれる一覧表にまとめられ、個人別に集計される。

しかし果たして、エリートとして順調に歩み、世の矛盾に翻弄されたことも、理不尽な待遇に無念の思いを抱いたこともないであろう彼らに、厳正で人間的な判断が下せるものなのだろうか。その疑問を解明するため、厚いベールに包まれた「孤高の裁判所」の奥深くに分け入り、約2年にわたり、のべ100人近い現職裁判官や元裁判官を全国に訪ね歩いた。裁判所の内幕とともに、そこで働く裁判官たちが、どのような管理下におかれ、どのような思いで職務にあたっているのか。その知られざる世界と内なる声を、この連載のなかで可能な限り明らかにしていくこととしたい。

「先生の肉に何の用だ?」
おどけたポーズで、筋骨隆々の白ブリーフ姿の自撮り写真を、ツイッターのカバーページに掲げているのは、東京高等裁判所の岡口基一裁判官(51歳)だ。東大法学部卒のエリート裁判官で、ベストセラー『要件事実マニュアル』の著者でもある。同書は、司法試験受験生の必読書とされているうえ、全国の裁判所の裁判官室にも備えられている。風変わりで、多才な裁判官である。

岡口判事のツイートは、法律問題から時事問題、さらには性の話題まで多岐にわたっていて、約3万4000人のフォロワーが常時アクセス。そのトップ画面に固定されているのは、「裁判員裁判って、国民を騙して導入したものだからね」といった政府批判のツイートである。昨年6月、岡口判事は、2年も前に削除していた「エロエロツイートとか頑張るね」とのつぶやきや、SMバーの女王に緊縛してもらった写真などを掲載していたことが問題視され、戸倉三郎東京高等裁判所長官(現最高裁判事)から口頭で厳重注意処分を受けた。「裁判官の品位を落とし、裁判所に対する国民の信頼を傷つける行為をした」というのが、その理由だ。

この処分は、ある意味、考え抜かれたものだった。異議申し立てができない口頭注意処分にすることで、反論の機会を与えず、岡口判事を押さえ込もうとしたのである。しかし戸倉長官の計算は大きく外れ、その狙いは失敗に終わっている。処分を受けた岡口判事は、ツイッターをやめるどころか、先の政府批判をツイートの最上段に固定し、対決姿勢を打ち出している。

最近も、ニュースサイトで報道された「性行為の理想的時間の長さ」が31分であったことを取り上げ、こうつぶやいた。「30分ではなく31分なんだ。最後の1分(にはいったいどういう意味があるのか)が気になって気になって、セックスに集中できなかったじゃないか」。自由奔放に発信し続ける岡口判事への処分が、新聞等で大々的に報道されたことで、皮肉にも裁判所の、言論の自由への認識がいかに低いかをさらけ出すという「おまけ」までついたのである。

幼稚園の頃から優等生
しかし岡口判事は、なぜ、こうも過激で、型破りなのか。岡口判事をよく知るベテラン裁判官は言う。
「裁判所というところは、恐ろしく保守的で、誰彼かまわず足を引っ張るのに長けた組織なんです。とりわけ、若手裁判官が、上司である裁判長に向かって、あれこれ意見を言ったりすると、うるさい奴だとか、協調性がないといってマイナス評価をされてしまう。それを恐れる余り、彼らは萎縮し、上司の意向のままに動こうとする。岡口さんはそこに一石を投じ、彼らを奮起させようとしているんでしょう」

実際、岡口判事は、「どうして匿名でツイートしないのですか?」とのフォロワーからの質問にこう答えている。「元々は、あまりにも萎縮しまくっている若手裁判官達に対し、もっと自由になっても大丈夫なんだよ。もっともっと市民的自由を謳歌しよう」、との思いからはじめたと。

若手裁判官の萎縮は、裁判所にとって古くて新しい課題だ。
2001年12月、山口繁最高裁長官の肝いりで、「裁判官の在り方を考える」と題した研究会が開かれたことがある。背景には、当時、毎月のように新聞紙面を賑わしていた裁判官の不祥事があった。同年3月には、福岡高裁の判事が、裁判官の職業倫理に反したとして、最高裁から戒告処分をうけている。処分の理由は、同判事の妻が、伝言ダイヤルで知り合った男性にストーカー行為を繰り返し、逮捕状の請求がなされた際、同判事は、福岡地検から極秘に得た情報をもとに証拠隠滅を働いていた疑いがあるというものだ。また、同年9月には、神戸地裁の所長が電車内で痴漢行為を働いた嫌疑で、書類送検された。そして11月には、少女買春で有罪が確定していた東京高裁の判事が、国会の裁判官弾劾裁判所で裁判官資格剥奪の罷免判決を受けている。

落とし穴だらけ
同研究会は、それらの問題を「特異例」として片付けるのではなく、発生原因を究明するとともに、若手裁判官の育成について活発な意見交換をおこなった。研究会の出席メンバーは、当時の仙台高等裁判所長官で、その後、第16代最高裁長官となった島田仁郎ほか、地裁、家裁のベテラン裁判官が5人。それに講師として招かれた3人の裁判官OBが参加し、霞が関の「法曹会館」で行われた。

「高裁長官、地家裁所長限り」と断り書きのついた同研究会の速記録は、A4判77ページ。参加者の発言は、匿名化されているものの、その率直な指摘や問題提起は息をのむ迫力だ。出席者のひとりは、萎縮し、意見を言わない若手裁判官が生まれる原因を、裁判所の階層と管理体制にあるとして、こう語っている。「部総括(註・裁判長のこと)が、自分は自由な発言をプラス評価するつもりであるから積極的に言えと言っても、言われた側としては、ひょっとして落とし穴かもしれない、

落とし穴じゃなくても本当にその様な評価をして貰えるかどうか分からないし、ひょっとして更に上の方の代行(註・地裁の所長代行)だの所長だのは別の考えかも知れないではないか、また、部総括が短期間で替わってしまって考えの違う部総括になったら、ミゼラブル(註・悲惨)な状態にならないとも限らない、いろんなことを全方位的に考えると、やっぱり安心な部分でしか物を言わないほうが得策ではないか。言うと火傷するかもしれないというふうに感じている人がかなりいると感じます」

幼稚園の頃から、とびきりよくできると誉めそやされ、優等生として走り続けてきた彼らは、挫折を知らず、下積み経験もなく育ってきた。まさに、エリート層の「上澄み」であり、もともと正解志向で、怪我をすることをひどく恐れている。しかも、彼らの上司である裁判長すらが、「隣の裁判長から電話がかかってきた時と、所長なり所長代行からかかってきた時に急に声色を変えているというようなことを、陪席とか修習生はよく見ている。やっぱり、どうしても上を見てしまう。自分たちが実は萎縮していることは、ある意味で事実だと私自身も思います」と言う。

裁判長が、上司の前で萎縮し、最高裁に睨まれることを恐れている「官僚」だとすれば、若い裁判官や、裁判官志望の修習生が、その雰囲気から学ばないことなどありえないだろう。実際、この研究会の速記録さえ、外部に漏れることを恐れ、一般裁判官には配布されなかった。彼らには、A4判16ページに編集されたダイジェスト版が配られただけだ。せっかくの成果も、じゅうぶん生かされることなく終わっていたのである。憲法で保障されているはずの「裁判官の独立」と「身分保障」は、外部からの干渉には強くても、内部を支配する組織の論理の前では、ほとんど意味をなしていないと言えそうだ。
以上:4,264文字

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