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非弁提携業者から提携弁護士への委託料請求を棄却した高裁判決紹介

令和 8年 1月 6日(火):初稿
○「非弁提携業者から提携弁護士への委託料請求を棄却した地裁判決紹介」の続きで、その控訴審令和6年4月24日東京高裁判(判タ1537号100頁)全文を紹介します。

○控訴人(原審原告)らが、弁護士である被控訴人(原審被告)に対し、業務委託契約に基づく委託報酬として約3192万円と遅延損害金の支払を求め、原審が控訴人らの各請求をいずれも棄却しました。そこで、控訴人らがそれぞれ控訴をし、当審において各請求を約2645万円に減縮しました。

○控訴審判決も、控訴人らは、相談希望者の顧客情報等を被控訴人に有償で提供し、これによって初めて被控訴人は債務整理案件の受任が可能となっていたという関係が認められ、これらの行為は、弁護士法72条後段が禁止する周旋に当たり、弁護士法72条後段が、弁護士と顧客との間に介在して不当な利益をあげ、国民の法律生活の円滑な営みを妨げるとともに弁護士の品位を害することとなる周旋行為を公益の見地から排除する趣旨に出たものなので、このような違法な周旋を前提とする本件業務委託契約は、公序良俗に違反し、民法90条により無効ととして、本件各控訴をいずれも棄却しました。

○被控訴人(弁護士)は,控訴人X1から,多数の相談希望者の個人情報等の継続的な提供を受けて多数の債務整理案件を継続的に受任し、平成29年12月頃にはこれらの収益から控訴人X1社に対する借受金を全額返済し,また,令和2年1月には事務所を拡大するなど,控訴人らと協力して本件事業を行ったと認定されていますが、非弁提携を理由に懲戒されたかどうかは不明です。

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主   文
1 本件各控訴をいずれも棄却する。
2 控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実及び理由
第1 控訴の趣旨

1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は,控訴人らに対し,それぞれ2645万8111円及びこれに対する令和3年1月14日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要(以下,略称は,別途定めるほかは,原判決の例による。)
1 本件は,控訴人(原審原告)らが,弁護士である被控訴人(原審被告)に対し,業務委託契約に基づく委託報酬としてそれぞれ3192万3093円及びこれに対する訴状送達日の翌日である令和3年1月14日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
 原審は,控訴人らの各請求をいずれも棄却したところ,これを不服とする控訴人らがそれぞれ控訴をした。
 控訴人らは、当審において,控訴の趣旨第2項記載のとおりに各請求を減縮した。

2 前提事実及び争点は,次のとおり補正するほかは,原判決の「事実及び理由」の第2の1及び2に記載のとおりであるから,これを引用する。 
(1)原判決4頁14行目から15行目までを「被控訴人と控訴人らは,令和2年8月21日,本件業務委託契約を合意解除した(甲18,乙18,19の1及び2)。」と改める。
(2)原判決4頁16行目から24行目までを次のとおり改める。
 「2 争点
(1)本件業務委託契約の効力(弁護士法72条前段又は後段該当性及び公序良俗違反の成否)(争点1)
(2)未払委託報酬の存否及び額(争点2)」

第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も,控訴人らの各請求をいずれも棄却すべきものと判断する。その理由は,以下のとおりである。

2 認定事実
 前記前提事実,争いのない事実,後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
(1)被控訴人は,平成21年12月に登録した弁護士であり,独立して被控訴人事務所を開設し,稼働していた。
(顕著な事実,弁論の全趣旨)

(2)被控訴人は,平成28年10月頃,旧知のA(以下「A」という。)から,インターネット広告で債務整理の顧客を集客する事業に協力してほしいと依頼されてこれを承諾し,平成29年5月22日,Aから紹介を受けた控訴人株式会社X1(控訴人X1社)との間で本件業務委託契約を締結した。(甲1,12,弁論の全趣旨)

(3)本件業務委託契約に基づいて行われた事業(以下「本件事業」という。)の枠組みは,次のとおりである(履歴事項全部証明書,争いのない事実,甲1,12,13,18,20,乙18,弁論の全趣旨)。
ア 株式会社B(以下「本件サイト運営者」という。)は,債務整理の依頼者の集客のため,インターネット上に「街角法律相談所」と称するサイト(以下「本件サイト」という。)を開設し,複数の法律事務所の広告を掲載している。本件サイトにアクセスしてきた者は,各広告を比較検討して相談を希望する法律事務所を選択し,氏名や住所,メールアドレス等の連絡先のほか,負債総額や債権者数等を登録することができる。本件サイト運営者は,このようにして各法律事務所の相談希望者の個人情報等(以下「顧客情報等」という。)を取得する。

イ 他方,本件サイト運営者は,控訴人X1社との間で,被控訴人事務所の広告の掲載に係る契約を締結している。控訴人X1社は,同契約及び本件業務委託契約に基づいて,被控訴人事務所の広告を本件サイトに出稿して掲載することができ,また,本件サイト運営者が取得した被控訴人事務所に係る相談希望者の顧客情報等を1件1万5000円で買い取ることができる。
 なお,本件サイト運営者は,控訴人X1社を介さずに被控訴人事務所に上記の顧客情報等を提供することはない。

ウ 控訴人X1社は,本件サイト運営者から買い取った顧客情報等を被控訴人に有償で提供するほか,被控訴人に運転資金800万円を無利息で貸し付け,被控訴人に対し事務所を賃貸し,被控訴人と労働者派遣契約を締結して事務員を派遣する。

 被控訴人は,提供を受けた顧客情報等に基づいて,相談希望者と面談し,事情を聴取するなどし,希望者との間で債務整理に係る委任契約を締結し,派遣された事務員に指示するなどして,破産,個人再生,任意整理等の各種の債務整理手続を進める。

エ 被控訴人は,依頼者から受領した着手金及び成功報酬から,事務所賃料及び人件費(派遣社員派遣料)を控訴人X1社に支払い,一定の経費を控除した残額から30万円(後に40万円に増額)を受領し,その余の額(以下「余剰金」という。)の90%(後に80%に減額)を広告報酬名目で控訴人X1社に支払う。控訴人X1社は,このうちの一部をAに支払う。

オ その後,被控訴人と控訴人X1社は,本件事業を控訴人株式会社X2(控訴人X2社)を含めた3者で協力して行うことを合意し,広告に関する業務は,本件サイト運営者の承諾を得て,控訴人X2社が担当するようになった。

(4)被控訴人は,控訴人X1から,多数の相談希望者の個人情報等の継続的な提供を受けて多数の債務整理案件を継続的に受任するようになり,平成29年12月頃にはこれらの収益から控訴人X1社に対する借受金を全額返済し,また,令和2年1月には事務所を拡大するなど,控訴人らと協力して本件事業を行った。
 しかし,控訴人らと被控訴人は,令和2年8月21日,関係の悪化により本件業務委託契約を合意解除して協力関係を解消した。(争いのない事実,甲12,13,乙18,19の1及び2,弁論の全趣旨)

(5)控訴人らは,令和2年12月,6384万円余りの未払委託手数料があると主張して,本件訴訟を提起した。(当裁判所に顕著な事実)

3 争点1(本件業務委託契約の効力)について
(1)弁護士法72条後段は,弁護士又は弁護士法人でない者が,報酬を得る目的で,業として,訴訟事件その他一般の法律事件に関して,鑑定,代理,仲裁,和解その他の法律事務の取扱いを周旋することを禁止し,同法27条は,弁護士がこれらの者から事件の周旋を受けることを禁止するところ,ここにいう「周旋」とは,依頼を受けて,法律事件の当事者と,鑑定,代理,仲裁,和解その他の法律事務を行う弁護士との間に介在し,両者間における委任関係その他の関係成立のための便宜を図り,その成立を容易ならしめる行為をいうものと解される。

(2)これを本件についてみるに,控訴人らは,相談希望者の顧客情報等を被控訴人に有償で提供し,これによって初めて被控訴人は債務整理案件の受任が可能となっていたという関係が認められるのであり,これらの行為は,弁護士法72条後段が禁止する周旋に当たるものと認められる。

 そして,弁護士法72条後段が,弁護士と顧客との間に介在して不当な利益をあげ,国民の法律生活の円滑な営みを妨げるとともに弁護士の品位を害することとなる周旋行為を公益の見地から排除する趣旨に出たものと解されることからすると,かかる違法な周旋を前提とする本件業務委託契約は,公序良俗に違反し,民法90条により無効というべきである。

(3)この点について,控訴人らは,単に広告内容を企画立案し,本件サイト運営者に出稿しただけであるから,控訴人らの行為は禁止される周旋に当たらないと主張する。しかし,控訴人らは,本件サイト運営者と被控訴人事務所との間で広告の出稿と顧客情報等の取得及びその提供を独占的に行うことにより,事件当事者と弁護士との委任関係を成立させているのであって,単に広告を出稿したに止まるものではないから,その主張は採用できない。

 また,被控訴人は,周旋といえるためには,当該行為を行う者において,顧客となり得る者をして弁護士に事件を受任させ得る程度の状態におくことが不可欠であると解すべきであり,控訴人らが広告を出稿したり顧客情報等を提供するだけではこれに当たらないと主張する。しかし,控訴人らの顧客情報等の提供がなければ,被控訴人が相談希望者との委任関係を成立させることはそもそも不可能であるとともに,これにより被控訴人は受任が可能となったと認められるのであるから,同行為が周旋に当たるのは明らかである。被控訴人の上記主張は採用できない。

4 小括
 以上によれば,控訴人らの各請求は,その余の点について判断するまでもなく,いずれも理由がない。

第4 結論
 よって,本件各請求を棄却した原判決は相当であり,控訴人らの各控訴は理由がないから,いずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官梅本圭一郎,裁判官工藤正 裁判官井出弘隆は,転補のため署名押印することができない。裁判長裁判官梅本圭一郎)
以上:4,261文字

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