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預貯金は原則として遺産分割の対象の範囲外

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平成18年 3月 1日(水):初稿
○昨日は、遺産である不動産の賃料は遺産には入らないと言う話しをしましたが、本日も遺産の話を続けます。
被相続人の残した遺産は全て遺産分割の対象になるかというと実はなりませんというのが正解です。これは我々法律専門家にも意外な盲点になっております。

○遺産の範囲と遺産分割の範囲は完全には一致しておらず、可分債権は、原則として遺産分割の対象となる財産には含まれません。典型は預貯金です。裁判所は、預貯金などの可分債権は共同相続人の遺産分割協議を待つまでもなく、相続開始と同時に、当然に相続分に従って分割されるとしています(最高裁昭和29.4.8民集8-4-819)。

○ですから家裁での遺産分割手続では預貯金は分割対象に含まれないはずですが、実際は預貯金を含めて遺産分割の話し合いをしている例の方が圧倒的に多くあります。これは、共同相続人間に分割の対象に含めるという合意が成立すれば家裁も合意に従って預貯金を分割対象に含めて審理するとの扱いになっているからです(判時1517号5頁参照)。

○この合意の性質は、各相続人が有する可分債権を集中してその再配分を家裁に委ねたとみる見解が有力ですが、実務では合意によって可分債権を遺産分割の対象とする扱いは定着しており、家裁の調停や審判に至る前に、共同相続人間において協議が成立して、可分債権である預貯金の帰属について相続分と異なる内容で合意することも有効です。

○可分債権である預貯金が相続開始と同時に当然に分割されるのであれば、現金も同様に相続開始と同時に分割されていると考えがちですが、実は現金は可分債権ではなく動産と同様に扱われます(最高裁平成4.4.10月報44-8-16)。ですから現金は当然に遺産分割の対象になります。

○預貯金が遺産分割と同時に分割されると言うことは、相続人は遺産分割協議を経なくても、預貯金の預け先である銀行に対し自己の法定相続分を払戻請求できると言うことです。しかし実際には銀行は共同相続人間の紛争に巻き込まれるのを避けるために遺産分割協議書を提出するか相続人全員の払戻請求でないと払戻には応じません。

○しかし相続人が銀行に対し訴えを提起して判決を取ると素直に支払ってきます。判決に従って支払えば銀行が共同相続人間の紛争に巻き込まれることはないからです。但し、「共同相続人間で預貯金を遺産分割の対象に含ませる合意が成立する余地がある限り払戻請求を拒み得る」との判例(東京地裁平成9.10.20判タ999号286頁)も現れ、この判例を盾に相続人個人での払戻請求の訴えに対しても支払を拒否する銀行が現れるかも知れません。
以上:1,082文字

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