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遺産として預貯金しかない場合の特別受益控除は4

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平成24年12月14日(金):初稿
○「遺産として預貯金しかない場合の特別受益控除は3」を続けます。
被相続人Aの財産は合計1億円あったところ、長男Bに3000万円を生前贈与し(特別受益)、残7000万円の預貯金のみを遺産として残して死去し、Bは7000万円の2分の1相当3500万円をZ銀行から払い戻し、Cも同様に3500万円を払い戻したが、特別受益持戻によってB、Cは各5000万円ずつ取得することになるべきところ、Cは3500万円しか所得出来ず1500万円不足しています。預貯金等可分債権は遺産分割の対象にならないとされており、この場合、分割対象遺産がないので遺産分割調停・審判ができないのかと言う問題です。

○この場合、長男Bが3000万円の生前贈与について、例えばAを長期に渡って介護した介護料として受領したもので贈与ではない或いは持戻免除の意思表示をしており特別受益持戻は不要である等の主張をした場合、Cが特別受益として持戻の対象となると主張する方法として、この3000万円が特別受益財産であることの確認を求める訴えを提起することが出来るでしょうか。

○これについては、平成7年3月7日最高裁判決(民集49巻3号893頁、判タ905号124頁、判時1562号50頁)があり、結論は「出来ない」でした。その全文は以下の通りです。

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主文
 本件上告を棄却する。
 上告費用は上告人の負担とする。

理由
 上告人代理人○○の上告理由について
 上告人の本件訴えは、第一審判決添付の物件目録記載の各不動産が被相続人AからB(被上告人○、同○、同○及び同○の被相続人)、被上告人C及び同Dに対し生計の資本として贈与された財産であることの確認を求めるものである。

 民法903条1項は、共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻、養子縁組のため若しくは生計の資本としての贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額に右遺贈又は贈与に係る財産(以下「特別受益財産」という。)の価額を加えたものを相続財産とみなし、法定相続分又は指定相続分の中から特別受益財産の価額を控除し、その残額をもって右共同相続人の相続分とする旨を規定している。

 すなわち、右規定は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額に特別受益財産の価額を加えたものを具体的な相続分を算定する上で相続財産とみなすこととしたものであって、これにより、特別受益財産の遺贈又は贈与を受けた共同相続人に特別受益財産を相続財産に持ち戻すべき義務が生ずるものでもなく、また、特別受益財産が相続財産に含まれることになるものでもない。そうすると、ある財産が特別受益財産に当たることの確認を求める訴えは、現在の権利又は法律関係の確認を求めるものということはできない。

 過去の法律関係であっても、それを確定することが現在の法律上の紛争の直接かつ抜本的な解決のために最も適切かつ必要と認められる場合には、その存否の確認を求める訴えは確認の利益があるものとして許容される(最高裁昭和44年(オ)第719号同47年11月9日第一小法廷判決・民集26巻九号1513頁参照)が、ある財産が特別受益財産に当たるかどうかの確定は、具体的な相続分又は遺留分を算定する過程において必要とされる事項にすぎず、しかも、ある財産が特別受益財産に当たることが確定しても、その価額、被相続人が相続開始の時において有した財産の全範囲及びその価額等が定まらなければ、具体的な相続分又は遺留分が定まることはないから、右の点を確認することが、相続分又は遺留分をめぐる紛争を直接かつ抜本的に解決することにはならない。また、ある財産が特別受益財産に当たるかどうかは、遺産分割申立事件、遺留分減殺請求に関する訴訟など具体的な相続分又は遺留分の確定を必要とする審判事件又は訴訟事件における前提問題として審理判断されるのであり、右のような事件を離れて、その点のみを別個独立に判決によって確認する必要もない。

 以上によれば、特定の財産が特別受益財産であることの確認を求める訴えは、確認の利益を欠くものとして不適法である。本件訴えを却下すべきものとした原審の判断は、結論において是認することができる。右判断は、所論引用の判例に抵触するものではない。論旨は、原判決の結論に影響しない部分の違法をいうものに帰し、採用することができない。
 よって、民訴法401条、95条、89条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官大野正男 裁判官園部逸夫 裁判官可部恒雄 裁判官千種秀夫 裁判官尾崎行信)


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○重要点は、この判決で「ある財産が特別受益財産に当たるかどうかは、遺産分割申立事件、遺留分減殺請求に関する訴訟など具体的な相続分又は遺留分の確定を必要とする審判事件又は訴訟事件における前提問題として審理判断されるのであり、右のような事件を離れて、その点のみを別個独立に判決によって確認する必要もない。」とされた点で、「具体的な相続分」に関しては、平成12年2月24日最高裁判決で「遺産分割手続における分配の前提となるべき計算上の価額又はその価額の遺産の総額に対する割合を意味するものであって、それ自体を実体法上の権利関係であるということはできず」とされていることです。
となると、前記設例でCは、特別受益持戻をすれば不足する1500万円回復するためには、遺産分割しようにも対象財産が無く、また特別受益に該当するかどうか確かめる手続もなく、具体的相続分は権利ではないので、何らの権利も主張できないとの結論にならざるを得ないでしょうか。
この問題についての最終結論は、「遺産として預貯金しかない場合の特別受益控除は5」に記載します。

以上:2,407文字

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