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養親からの包括受遺者提起養子縁組無効の訴えの利益を認めた最高裁判決紹介

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令和 1年12月 8日(日):初稿
○「養親からの包括受遺者提起養子縁組無効の訴えの利益を認めた高裁判決紹介」の続きで、その上告審である平成31年3月5日最高裁判決(判タ1460号39頁、判時2421号21頁)全文を紹介します。

○養親の相続財産全部の包括受遺者が提起した養子縁組の無効の訴えについて、一審平成29年9月22日徳島家裁判決(金商1569号20頁<参考収録>)は訴えの利益がないとして却下し、控訴審平成30年4月12日高松高裁判決(金融・商事判例1569号18頁、家庭の法と裁判21号57頁)は、訴えの利益があるとして、判断が分かれていました。

○平成31年3月5日最高裁判決は、養子縁組の無効の訴えを提起する者は養親の相続財産全部の包括遺贈を受けたことから直ちに当該訴えにつき法律上の利益を有するとはいえないと一審判決を支持して決着をつけました。

○理由は、縁組当事者以外の者が、養子縁組無効の訴えを提起できるのは、当該養子縁組が無効であることにより自己の身分関係に関する地位に直接影響を受けることが要件であるところ、遺贈は,遺言によって受遺者に財産権を与える遺言者の意思表示であるから,養親の相続財産全部の包括遺贈を受けた者は,養子から遺留分減殺請求を受けたとしても,当該養子縁組が無効であることにより自己の財産上の権利義務に影響を受けるにすぎないので、訴えの利益がないというものです。

○本件では、亡Cと養子縁組をしたYに対し、養親亡Cの実子であれば養子縁組無効の訴えを提起できますが、被上告人は、亡Cとの間に親族関係がなく,亡Yとの間に義兄(2親等の姻族)という身分関係があるにすぎないから,本件養子縁組の無効により自己の身分関係に関する地位に直接影響を受けることはなく訴えの利益はないとされました。

(身分関係図)
   ____
   |    |
亡C=○   ○
     __|__
     |    |
   A=亡Y  D=X(被上告人)
亡Cと亡Yが養子縁組、亡CがXに包括遺贈

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主   文
原判決を破棄する。
被上告人の控訴を棄却する。
控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。 

理   由
上告補助参加人代理人○○○○,同○○○○,同○○○○の上告受理申立て理由について
1 原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
(1) 亡Cを養親となる者とし,亡Yを養子となる者とする養子縁組届に係る届書が,平成22年10月▲▲日,徳島県a郡b町長に提出された。なお,亡Cは亡Y及びその実姉の叔父の妻である。また,被上告人は当該実姉の夫であり,上告補助参加人は亡Yの妻である。
(2) 被上告人は,平成25年12月に死亡した亡Cの平成22年7月11日付けの自筆証書遺言により,その相続財産全部の包括遺贈を受けた。
(3) 被上告人は,平成28年1月,亡Yから遺留分減殺請求訴訟を提起された。
 亡Yが平成29年10月に死亡したため,上告補助参加人は,上記訴訟を承継した。

2 本件は,被上告人が,検察官に対し,本件養子縁組の無効確認を求める事案である。

3 原審は,上記事実関係の下において,要旨次のとおり判断し,被上告人が本件養子縁組の無効の訴えにつき法律上の利益を有しないとして本件訴えを却下した第1審判決を取り消して,本件を第1審に差し戻した。
 養親の相続財産全部の包括遺贈を受けた者は,養親の相続人と同一の権利義務を有し,養子から遺留分減殺請求を受け得ることなどに照らせば,養親の相続に関する法的地位を有するものといえ,養子縁組が無効であることにより自己の身分関係に関する地位に直接影響を受ける者に当たる。そうすると,被上告人は,亡Cの相続財産全部の包括遺贈を受けた者であるから,本件養子縁組の無効の訴えにつき法律上の利益を有する。

4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
(1) 養子縁組の無効の訴えは縁組当事者以外の者もこれを提起することができるが,当該養子縁組が無効であることにより自己の身分関係に関する地位に直接影響を受けることのない者は上記訴えにつき法律上の利益を有しないと解される(最高裁昭和59年(オ)第236号同63年3月1日第三小法廷判決・民集42巻3号157頁参照)。そして,遺贈は,遺言によって受遺者に財産権を与える遺言者の意思表示であるから,養親の相続財産全部の包括遺贈を受けた者は,養子から遺留分減殺請求を受けたとしても,当該養子縁組が無効であることにより自己の財産上の権利義務に影響を受けるにすぎない。
 したがって,養子縁組の無効の訴えを提起する者は,養親の相続財産全部の包括遺贈を受けたことから直ちに当該訴えにつき法律上の利益を有するとはいえないと解するのが相当である。


(2) そして,被上告人は,亡Cの相続財産全部の包括遺贈を受けたものの,亡Cとの間に親族関係がなく,亡Yとの間に義兄(2親等の姻族)という身分関係があるにすぎないから,本件養子縁組の無効により自己の身分関係に関する地位に直接影響を受けることはなく,本件養子縁組の無効の訴えにつき法律上の利益を有しないというべきである。

5 これと異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,以上説示したところによれば,被上告人の訴えは不適法であり,これを却下した第1審判決は相当であるから,被上告人の控訴を棄却すべきである。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 宮崎裕子 裁判官 岡部喜代子 裁判官 山崎敏充 裁判官 戸倉三郎 裁判官 林景一)
以上:2,357文字

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