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遺産分割審判において共有状態解消を目指すべきとした高裁決定紹介

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令和 2年 1月 5日(日):初稿
○遺産として多数の不動産が存在する遺産分割事件を扱っています。多数の不動産にはそれぞれ特徴があり、相続人間で収益可能性等有利な条件の不動産取得を希望して、その調整が困難な事案です。
遺産である不動産の遺産分割方法は、
①現物分割-不動産それぞれを現物のまま各相続人取得とする分割する方法
②代償分割-特定相続人が不動産を取得し、他の相続人に代償金を支払う方法
③換価分割-不動産を売却して売却金を分割する方法
④共有分割-相続人の共有とする分割方法
があります。この①・②の判断が困難として、安易に④の方法をとる審判官が結構多くいるとのことです。しかし④は完全な紛争解決にはならず、単なる先送りです。

○そこで遺産分割審判においては、共有とする分割方法は、紛争の解決とならないことが予想されるから、現物分割や代償分割はもとより、換価分割さえも困難な状況にあるときに選択されるべき分割方法であり、共有・準共有状態の解消が比較的容易であれば、遺産分割においてその解消を行うべきであるとした平成14年6月5日大阪高裁決定(家庭裁判月報54巻11号60頁)関連部分を紹介します。

○大阪高裁決定は、ほぼ全部の遺産を各共同相続人の法定相続分割合に応じて共有・準共有取得させた原審判について、共有・準共有状態の解消が比較的容易であれば、遺産分割においてその解消を行うべきであるとして、取り消して差し戻しとしました。妥当な判断です。共有としたのでは、再度、地裁に共有物分割訴訟を提起しなければならず最終的解決にならないからです。

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主   文
1 原審判を取り消す。
2 本件を神戸家庭裁判所明石支部に差し戻す。
3 抗告費用は各抗告人の負担とする。

理   由
第1 抗告の趣旨及び理由

 抗告人X1及び抗告人X2は,主文1,2項と同旨の裁判を求めて原審判に対して即時抗告をしたものであり,抗告人Yも原審判を不服として即時抗告をしたものである。
 抗告人らの抗告の理由は別紙のとおりである。

第2 紛争の実情
 原審記録によれば,以下の事実が認められる。
1 相続の開始,相続人及び法定相続分
 被相続人は,平成5年9月18日死亡し,その相続が開始したが,妻は既に平成元年に死亡しており,子もないから,その相続人は,弟妹である抗告人ら及び相手方ら合計7名のみであり,各当事者の法定相続分率は各7分の1ずつである。
 また,本件においては,寄与分の申立てはなく,特別受益のある相続人もいないから,遺産の7分の1の金額が各相続人の相続分となる。

2 遺産の概要

         (中略)

3 遺産分割方法に関する当事者の意向
(1)当事者全員が,法定相続分率に従い全遺産を7等分すべきであるとの共通認識は存在するが,不動産の取得方法について意見の相違があるほか,遺産の収益及び管理費用の清算についても意見の対立があり,合意による遺産分割は不可能な状況にある。

         (中略)

第4 当裁判所の判断
1 原審判の遺産分割の対象に関する判断について

(1)前記のとおり,相続開始後しばらくは,抗告人X2,抗告人Y及び相手方孝信が中心となって預貯金等の解約や必要な支払が行われていたのであって,そのころには,当事者間で協議し相続分のとおりに預貯金を分配することも困難ではなかったと思われる。

 しかし,原審記録によれば,平成6年10月に申し立てられた本件の遺産分割調停は,預貯金の任意の分配も困難であることを前提とし,預貯金も含めた遺産の分割を求めるものであったし,その後,長期間にわたって行われた裁判所の手続においても,当事者全員が,相続開始後の利息を含む預貯金も遺産分割の対象とすることを前提とし,不動産を誰にいくらで取得させるのか,あるいは換価するのかを話し合っていた経過が明らかである。

(2)したがって,預貯金が可分債権であるとしても,被相続人が保有していた金融資産について,預貯金も含めて遺産分割の対象とすることは,少なくとも,当事者全員が黙示的に合意していたものと認めるべきであるから,原審判は,遺産分割の対象を見誤った疑いがある。

(3)もっとも,前記のとおり,目録第2の7(5)(6)の預金口座は,相続開始後に取得された△△町の家賃が入金されており,その預金の一部又は全部が被相続人の遺産ではない可能性が強い。
 そのような預金であっても,相続人全員の合意によって遺産分割の対象とし得るが,本件においては,相手方孝信が△△町物件の管理の対価を考慮した遺産分割を主張しているのであり,管理の対価を考慮すること(管理の対価相当額を遺産から優先的に控除し,相続分を無視する形でこれを相手方孝信に取得させること)は,話合いで行うことはできても,審判において行うことはできない。

 したがって,遺産分割が審判で行われる場合には,目録第2の7(5)(6)の預金については,その全部又は一部を遺産分割の対象とすることはできず,相続人間の不当利得の問題として処理されるべきことになる。

(4)以上のとおりであって,本件では,〔1〕預貯金のうち被相続人の遺産の性質を有するもの,〔2〕相続開始後に取得されたものを区分した上,〔3〕相続開始後に取得されたもののうち遺産分割の対象とすることにつき当事者全員の合意が得られるもの(相続開始後の利息がこれに該当する可能性が高い。)を明確にし,遺産分割の対象を確定した上で,預貯金を含めた遺産分割が命ぜられるべきであったということになる。

2 原審判の共有取得に関する判断について
(1)遺産分割は,共有物分割と同様,相続によって生じた財産の共有・準共有状態を解消し,相続人の共有持分や準共有持分を,単独での財産権行使が可能な権利(所有権や金銭等)に還元することを目的とする手続であるから,遺産分割の方法の選択に関する基本原則は,当事者の意向を踏まえた上での現物分割であり,それが困難な場合には,現物分割に代わる手段として,当事者が代償金の負担を了解している限りにおいて代償分割が相当であり,代償分割すら困難な場合には換価分割がされるべきである。

 共有とする分割方法は,やむを得ない次善の策として許される場合もないわけではないが,この方法は,そもそも遺産分割の目的と相反し,ただ紛争を先送りするだけで,何ら遺産に関する紛争の解決とならないことが予想されるから,現物分割や代償分割はもとより,換価分割さえも困難な状況があるときに選択されるべき分割方法である。


(2)ところで,本件の遺産は,現在では,1億数千万円から2億円の間の金額の株式や預貯金と合計1億2000万円ないし1億3000万円程度の3か所の不動産であり,ある基準日を定めて,個々の不動産及び個々の金融資産の価格をすべて明確にした上で,7分の1ずつに現物分割することがさほど困難ではない。
 したがって,基本的には,当事者の取得希望を考慮した現物分割がされるべきである。

 もっとも,不動産の取得を希望する者がいない場合で,中間の換価処分に反対する者があれば,終局審判において,競売による換価分割を命じるのが相当である。

(3)原判決は,以上と異なり,共有・準共有状態の解消も比較的容易であろうとの理由付けで,ほとんど全部の遺産を共有としたものであるが,共有・準共有状態の解消が比較的容易なのであれば,遺産分割においてその解消を行うべきであるから,原審判の命じた遺産分割は到底容認できるものではない。

3 原審判の命じた代償分割について
 本件において代償分割が必要となるのは,ある相続人が,遺産増額の7分の1(相続分)以上の遺産の現物取得を行う場合であるが,本件の遺産総額の7分の1は4000万円を超える金額となるものと思われる。少なくとも,△△町物件が3610万円であり,これを抗告人X1に取得させるのであれば,金融資産のうち抗告人X1の取得分を減額すれば足りたはずであって,わざわざ抗告人X1に代償金支払の負担を背負わせる必要はない。

 したがって,△△町物件の代償分割に関する原審判の判断も容認することはできない。

4 結論
 以上の次第で,原審判は,その選択した遺産分割の方法が相当ではないから取消しを免れないが,本件の遺産分割を行うためには,預貯金のうち分割対象とすべきものを特定し,その分割基準日(審判日又は当事者が合意した日)における額を明らかにし,不動産の分割基準日における評価額を確定し(おそらく,鑑定価格を基準にして路線価等の変動率を乗じる方法で合意ができるものと思われる。),株式等の個々の金融資産についても分割基準日の額を確定し(あるいは,予め全部換金する),その上で,当事者の取得希望に配慮して,現物分割又は換価分割を行うことが必要である。

 当審において,そのような事実認定を行った上で審判に代わる決定を行うことはできないから,本件を原審に差し戻すのが相当である。
 よって,主文のとおり決定する。(裁判長裁判官 岩井俊 裁判官 水口雅資 橋詰均)
以上:3,727文字

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