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特別受益制度の平成30年法改正と”生計の資本”の意義

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令和 7年11月16日(日):初稿
○民法第903条特別受益制度についての質問を受けました。
以下、平成30年改正についての備忘録です。

改正前903条1項
共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前3条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。

改正後903条1項
共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。

変更点は
改正前「前3条の規定により算定した相続分の中から」
改正後「第900条から第902条までの規定により算定した相続分の中から」
で、
民法902条の2(相続分の指定がある場合の債権者の権利の行使)追加されたことによる算定根拠条文表示が変わっただけで実質変更はありません。

903条2項は変更無し

改正前903条3項
被相続人が前2項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思表示は、遺留分に関する規定に違反しない範囲内で、その効力を有する。

改正後903条3項
被相続人が前2項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。

「遺留分に関する規定に違反しない範囲内で、その効力を有する。」が単に「その意思に従う。」と変更されました。その理由は、遺留分制度自体が改正され、特別受益の「持ち戻し免除」と遺留分の関係が整理されたためと説明されています。遺留分制度の改正については別コンテンツで説明します。

改正後新設規定
903条4項

婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第1項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。
この新設が改正の目玉で、配偶者を保護する目的で、これにより、生前贈与された自宅の価格を相続財産に持ち戻さなくて済むようになり、配偶者が遺産分割で不利益を被る事態を防ぎ、老後の生活保障を安定させることを目指しています。

○特別受益制度でやっかいなのは「生計の資本として贈与」 の意味です。
これは、相続人が自らの生活や職業、事業などの基盤を築くために受けた、扶養義務の範囲を超えるような多額の贈与を指し、被相続人からの「遺産の前渡し」とみなされます。

具体例は以下の通りです。
・住宅購入資金の援助:親が子のマイホーム購入のために提供した資金。
・事業資金の援助:子が新しく事業を始めたり、事業を拡大したりするための資金提供。
・不動産の贈与:土地や家屋そのものを贈与した場合。
・学費:通常の学費ではなく、特定の相続人のための多額の留学費用など、特に高額な教育費。
・独立開業のための資金:親元から独立して生活を始める際の経済的支援。

通常の生活費や一般的な教育費など、扶養義務の範囲内での援助は特別受益には当たらず、あくまで、個人の「生計の基盤」を形成するための、まとまった財産の移転が対象です。
以上:1,420文字

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