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無断転貸理由賃貸借契約解除権消滅時効援用権利濫用等判決紹介2

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平成25年 9月13日(金):初稿
○「無断転貸理由賃貸借契約解除権消滅時効が信義則違反・権利濫用とされた判決紹介1」の続きです。



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理 由
一 被控訴人の先代野原昭が本件土地をその所有者小池津るから賃借し、昭和28年頃、その地上に本件建物を新築したこと、その後昭和33年7月10日右建物について被控訴人名義で所有権保存登記がなされたこと、一方昭和35年訴外小池廣が本件土地所有権を取得して賃貸人たる地位を承継し、更に昭和48年9月12日控訴人が右小池廣との交換契約により本件土地の所有権を取得し、賃貸人たる地位を承継したこと、控訴人が無断転貸を理由に、昭和49年2月15日到達の内容証明郵便をもつて、被控訴人に対し、本件土地賃貸借解除の意思表示をなしたことは、当事者間に争いがない。

 よつて、控訴人主張の無断転貸の存否につき按ずるに、〈証拠〉を総合すると、被控訴人の先代野原昭は小池津るから賃借した本件土地上に終戦後バラツクを建てて被控訴人ら家族と共に居住していたが、昭和28年頃右バラツクを取り毀して新たに建物を建築するに際して、右昭と訴外天野次郎との間に、建築代金を平等に負担し合い、もつて建物を共有し(持分権各2分の1)、建物のほぼ真中に間仕切りを設けて、東半分に昭が、西半分に天野が、それぞれ居住すべき旨の合意が成立し、昭は建築代金120万円を支出して、本件建物を新築し、その東半分に被控訴人ら家族と共に入居し、天野は右代金の半額60万円を昭に支払つてその西半分に家族ともども入居したこと、これに伴い昭の賃借権の2分の1の持分が同人から天野に譲渡されたが、右譲渡については事前に地主小池津るに交渉したがその承諾を得られなかつたこと、右建物については、前記のように昭和33年7月10日被控訴人単独名義の所有権保存登記がなされているが、これは、右賃借権の持分の譲渡について右のように小池津るの承諾が得られなかつたため、右譲渡は昭と天野との内部関係にとどめ、右地主に対する関係では、右譲渡を主張しないこととした関係上、登記面上も天野の右建物の持分権を表面化することを避けようとした配慮に出たもので、このことは、昭、被控訴人及び天野の諒解の下になされたものであること(なお、その際昭は右建物の持分権及び本件土地貸借権の二分の一の持分を被控訴人に譲渡したものと認められる)、右登記に必要な費用(登記代及び手数料)は、被控訴人及び天野が各二分の一を負担、支出したこと、また右建物の固定資産税は、右建物の名義人である被控訴人宛に送られてくる四期分の納税通知書のうち二期分の通知書を天野が被控訴人から受取り、これを天野が被控訴人名義で支払うという方法により、昭和48年度分まで天野が半額を負担、支出していたこと、さらに昭(その後被控訴人)が地主に支払うべき地代についても、天野が二分の一を負担し、昭和49年5月頃までは天野が地代半額相当分を昭(その後被控訴人)に支払い、同年6月分以降は、被控訴人がその受領を拒絶したので、天野は、地代半額相当分を弁償供託していること、そして対地主関係では、昭、被控訴人は勿論、天野も右賃貸借の持分譲渡の事実を秘し、前述のように本件建物は被控訴人の単独所有である旨実体と異なる登記をしているのみでなく、昭及び被控訴人は、地主小池津る、小池廣に対して、天野は本件建物の間借り人に過ぎない旨虚偽の事実を告げ、控訴人に対しても同様であり、昭和48年11月頃、控訴人は、天野の申し出によつて、始めて右賃借権持分権譲渡の事実を知り、もつて前記賃貸借解除の意思表示をなすに及んだことが認められる。〈証拠判断略〉。そして、昭和28年頃小池津るが、昭和37年頃小池廣が前記譲渡を黙示的に承諾した旨の被控訴人の主張については、本件証拠上これを認めることができず、かえつて成立に争いのない甲第一号証によれば、昭和39年10月7日作成された本件土地の賃貸借契約書においては賃借人として被控訴人のみが表示されていることが認められ、この点からも地主としては当時いまだ賃借人を被控訴人のみと考えていたことが明らかである。

 右事実によれば、昭は昭和28年頃本件建物を建築し、天野との共有(持分権2分の1)にしたことに伴い本件土地の賃借権の2分の1の持分を天野に譲渡し、これについて事前にもまた事後にも地主(賃貸人)の承諾を得ず、かえつてこれを地主(賃貸人)に隠蔽していたことが明らかである。(控訴人の主張には、「本件建物の西半分を天野に譲渡し、同部分の敷地の賃借権を同人に転貸し使用させた」とあるが、弁論の全趣旨からして、控訴人の右主張には、上記認定の如き、本件建物の共有、本件土地の賃借権の持分の譲渡という主張を含むものと解される。)

二 そこで進んで、被控訴人の解除権の時効消滅の抗弁及び控訴人の権利濫用の主張について考えるに、賃借地の無断譲渡による解除権の消滅時効は、解除権者が無断譲渡の事実を知り得なかつたとしても、無断転貸の時から10年の時効期間が進行すると解されるから、本件においては、昭和28年頃の無断譲渡を理由とする本件土地の賃貸人の解除権は、昭和38年中には時効が完成したものといわざるを得ない。

 しかし、ひるがえつて考えるに、本件の事実関係は、前記のように、昭及び被控訴人は小池津る、廣ら地主に対して右賃借権持分譲渡の事実を隠蔽し、本件建物についても、それが被控訴人の単独所有である旨実体と異なる登記をしているのみでなく、更に、右小池津る、廣、及び控訴人に対し、天野は本件建物の間借人に過ぎない旨虚偽の事実を告げ、もつて同人らの解除権の行使を妨げていたのであり、このように自ら地主の解除権の行使を妨げて、時効期間を徒過させておきながら、消滅時効の援用を主張することは、信義則に反し、権利の濫用として許されないと解するのが相当である。よつて、被控訴人の消滅時効の抗弁は理由がない。

三 そうすると、控訴人の前記解除の意思表示は有効であり、これによつて本件賃貸借は消滅し、被控訴人は控訴人に対し、本件建物を収去して本件土地を明渡す義務があるから、控訴人の本訴請求は理由があり、これを認容すべきである。
 よつて、これと異なる原判決を取り消し、民訴386条、96条、89条を適用し、なお仮執行の宣言はこれを付さないのを相当と認め、主文のとおり判決する。
(大内恒夫 新田圭一 真榮田哲)


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