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迷惑行為を理由とする賃貸借解除が認められた裁判例判断部分紹介1

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平成26年 9月 6日(土):初稿
○建物賃貸借契約は、賃料不払いがないとなかなか解除が認められません。賃料はキチンと支払っているが、賃借建物の中はゴミの山になっており、それが外部から見えて不潔極まることが明らかなため、隣の部屋の方が退去し、隣の部屋が空き家のままで困っている、何とか解除できないかと言う相談を受けました。

○参考判例を探していますが、アパート1室の賃借人による近隣住民に対する度重なる迷惑行為を理由とする建物賃貸借契約の解除の有効性を認めて建物の明渡しを命じた一審判断を維持した平成26年4月9日東京高裁判決(判例秘書)の裁判所判断部分を2回に分けて紹介します。迷惑行為の程度が相当厳しい事案であり、解除ができる迷惑行為の程度の参考になる判例です。これほどひどい迷惑行為でなくても解除を認めても良いのではと思いますが。

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第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も、本件解除は有効であり、被控訴人の本件反訴請求は理由があると判断する。その理由は、以下のとおりである。

2 認定事実
 前記の前提となる事実に加え、証拠(略)及び弁論の全趣旨によると次の各事実が認められる。
(1) 控訴人は本件賃貸借契約締結後、10年以上にわたり、本件建物の近隣住民等に対して迷惑行為を行っており、本件建物の賃貸人及びその承継人である被控訴人は、近隣住民等から、平成16年8月5日に「水をまいているとそれに文句を言う。子供が遊んでいると邪魔にして手を引っ張る。ポストに脅迫めいた文を入れる。」、平成17年7月14日に「犬がうるさい、子供がうるさいなどと警察に通報し、多大な迷惑をかけた。」、平成20年6月11日に「午前4時にエアコンがうるさいと警察に通報した。」等の多数の苦情が寄せられた。

(2) このため、被控訴人は、上記(1)の平成17年7月の苦情の申入れ後に警察に相談し、控訴人から通報があったら被控訴人にまず連絡するよう要望するなどの対応を余儀なくされた。しかし、その後も控訴人の近隣住民等に対する迷惑行為が続いたため、被控訴人の社員は、平成21年7月14日頃に控訴人方を訪れ、控訴人に対し、控訴人による近隣住民等に対する度重なる迷惑行為について注意した。しかし、これに対して控訴人は興奮状態となり、被控訴人の担当社員の話を聞き入れようとしなかった。

 そこで、被控訴人は、同月16日、控訴人に対し、控訴人による本件特約違反を理由として本件賃貸借契約について猶予期間を置いた同年12月末日限り終了させる旨を記載した通知書(甲1)を送付した。さらに、被控訴人の社員は、同年8月4日頃、控訴人と面会し、控訴人の度重なる近隣住民等に対する迷惑行為をやめるよう口頭で再度申し入れた。

(3) しかしながら、その後、控訴人は、本件建物の隣室(102号室)の入居者に対しても迷惑行為を行った。このため、同入居者は、被控訴人に対し、平成23年1月14日、「同入居者が自室で静かな声で電話を掛けていたところ、同月13日の深夜1時頃、同入居者のドアポストに控訴人から通知書が投函されていた。前に投函された通知書とほぼ同じ内容であった。」との苦情を申し入れ、控訴人が投函した「このアパートは独身者、単身者専用である。女性を連れ込み同居することを止めないのであれば、警察に通報する。落書き、騒音に対しても通報する。このアパートは一人で生活するためだけの場所である。守れないなら退去するよう通告する。」と記載した通知書を被控訴人にファックス送信した。

 さらに、その後も控訴人が同入居者に対して迷惑行為をしたため、同入居者は、被控訴人に対し、同年7月22日、「ここ2、3日に控訴人方のドアポスト付近から外に向けて大音量で英語を流している。あまりの音量に迷惑している。」と、同年12月14日、「夜中、ロックの音楽を流したり、控訴人方のドアに張り紙を貼ったりとやりたい放題をしている。」とそれぞれ苦情を申し入れた。このため、被控訴人の社員が控訴人方を訪れたが、控訴人がドアを開けず、応対しなかったため、被控訴人は同入居者の苦情の申入れに対して対応することができなかった。

 控訴人が本件建物のドアに貼った張り紙は、ドアノブ上部の1枚が「オマエは既に許されない犯罪(住居侵入罪+覗き見)を犯している。必ず警察に引き渡し、法的に処罰する。この紙をはがした時点で損害賠償請求の裁判を提起する。」と、ドアポスト上部の1枚が「絶対にチラシ・ビラ、C区ニュースを入れるな。はがしたら裁判を提起する。ノゾキは警察に通報する。」とそれぞれ控訴人が自筆で記載したものである。なお、本件建物にはこのような張り紙がいつも貼られており、アパートの他の入居者や訪問者に対して不快感を生じさせるものであるため、被控訴人の社員がその度に剥がす作業を余儀なくされていた。

 このため、本件建物の隣室の入居者は平成24年1月10日付けで賃貸借契約を解約の上で退去するに至り、その後、同室は同年11月30日までの10か月以上にわたって空室となった。これは、不動産賃貸・管理業を営む被控訴人において同室の入居希望者に対して隣室居住者である控訴人によるこれまでの迷惑行為の状況を説明せざるを得ないためである。これにより、被控訴人は、同期間中の同室に係る賃料を受領することができず、また、被控訴人が同室の賃料を通常の額より6000円減額することによってようやく上記隣室の新入居者が決まった。

 なお、同室の新入居者からも、被控訴人に対し、控訴人による本件控訴提起の後である平成25年1月29日に「本件建物からの音声が大きい。時間帯(朝8時頃、昼14時頃、夜19時頃、夜明けまでの時もある。)、特に夜になると眠れない。注意して欲しい。」旨の苦情が申し立てられている。

(4) 上記のとおり、被控訴人が控訴人に対して近隣住民等に対する迷惑行為について口頭で注意したり、本件特約に反することを明記した通知書を発するなどしたにもかかわらず、控訴人は、上記の他にも、近隣住民等の雨戸の開閉、立ち話、子供の遊び声、飼い犬の鳴き声、室外機の音など、社会生活上日常的に発生する音に対して嫌悪感を示し、深夜に怒鳴り散らしたり、頻繁に匿名を装って警察に通報したり、保健所に連絡するなどした。

 また、控訴人は、「犬の鳴き声がうるさい。損害賠償する。」、「重大なプライバシー侵害に当たる。絶対に私宅を覗かないこと。」、「早朝、食器等の音をガチャガチャ立てて響かせて非常に迷惑だから静かにすること。夜も話し声が大きくアパートに音が漏れて、とてもうるさいから気をつけること。頭痛がひどくなるから静かにすること。」などを記載した葉書やメモを近隣住民等の自宅のポストに度々投函したり、夜中に本件建物の玄関のドアや窓のシャッターを大きな音を立てて閉めるなどの迷惑行為を行った。

 このため、近隣住民等は、控訴人が投函した書面を持参してD警察署に相談に行ったり、被控訴人の新任の社員が平成24年4月30日に挨拶に赴いた際に「過去に何度も苦情を申し入れているが、何も対応していない。」と改めて苦情を申し立てるなどしていたが、控訴人による迷惑行為は改善されることはなかった。近隣住民等の中には控訴人とトラブルになるのが怖くて犬を飼うことができないでいる者もいる。また、近隣住民等が控訴人に話そうとしても控訴人が無視するために話合いになることはない。
以上:3,081文字

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