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中途解約条項がない定期借地契約を中途解除できるか

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平成26年12月10日(水):初稿
○借地期間を50年とする定期借地契約を締結し、借地上に工場建物を建築して事業を営んでいた会社から、借地上の建物での事業が採算が合わなくなり、借地契約後20年経過した時点で解約したいが、地主が了解せず、解約するなら残り30年分の地代を一括して支払えと請求されており、この地主の請求は正当でしょうかと言う質問を受けました。

○定期借地契約は、平成3年に成立した借地借家法で始めて認められた制度でその条文は以下の通りです。
借地借家法第22条(定期借地権)
 存続期間を50年以上として借地権を設定する場合においては、第9条及び第16条の規定にかかわらず、契約の更新(更新の請求及び土地の使用の継続によるものを含む。次条第1項において同じ。)及び建物の築造による存続期間の延長がなく、並びに第13条の規定による買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる。この場合においては、その特約は、公正証書による等書面によってしなければならない。


○借地契約は、原則として期間が30年以上で、期間経過時に建物が存続する限り、借地人から契約更新を請求されると「正当事由」がない限り、契約更新を拒否できず、且つ契約更新をしない場合、存続建物を地主が時価で買い取らなければなりません。
第3条(借地権の存続期間)
 借地権の存続期間は、30年とする。ただし、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間とする。
第5条(借地契約の更新請求等)
 借地権の存続期間が満了する場合において、借地権者が契約の更新を請求したときは、建物がある場合に限り、前条の規定によるもののほか、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、借地権設定者が遅滞なく異議を述べたときは、この限りでない。
(中略)
第6条(借地契約の更新拒絶の要件)
 前条の異議は、借地権設定者及び借地権者(転借地権者を含む。以下この条において同じ。)が土地の使用を必要とする事情のほか、借地に関する従前の経過及び土地の利用状況並びに借地権設定者が土地の明渡しの条件として又は土地の明渡しと引換えに借地権者に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、述べることができない。
(中略)
第13条(建物買取請求権)
 借地権の存続期間が満了した場合において、契約の更新がないときは、借地権者は、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原により土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる。


○借地契約の契約更新拒否の困難性、また建物買取の義務が借地契約の成立を阻む面があり、そこで契約更新もなく建物買取義務もない借地契約の必要性が認識されて期間50年以上、契約更新無し、建物買取義務無し、但し公正証書での契約が必要とするとした定期借地制度が、平成3年成立新借地借家法で導入されました。

○定期借地契約の期間は、50年以上で契約更新無しとされたため期間途中での中途解約は想定外として、契約書式集にも規定されておらず、中途契約の定めのなく公正証書で契約締結されるのが一般でした。しかし、現実には事業不振等の事情変更で借地人側から中途解約をしたい場合も出てきます。中途解約する場合残り期間地代全額を支払う必要があるかどうかについて裁判例を調べてみましたが、私が加入している判例データベースには出てきません。

○そこでネット上の解説を探してみましたが、公益社団法人全国宅地建物取引業保証協会苦情解決委員会編集紙上研修第93号佐藤貴美弁護士著「定期借地契約の留意点-中途解約の取扱について-」との論考が最も詳しいものでした。

○借地人側からの解約を認める特約がない定期借地契約において中途解約する方法については、一定の解約承諾料を支払って合意解約をするか事情変更の原則に基づく一方的解除の2通りあります。事情変更に基づく一方的解除の主張をしても、それによって地主側に生じる損害について賠償義務が発生します。問題はその損害額ですが、これについて争いになって事案についての裁判例は現時点では見当たりません。裁判になった場合、借地人側の事情変更の程度、地主側の貸地再利用可能性(直ぐに他に貸すことができる等)等総合考慮して決定され、残り地代全額までは至らずとも、その何割程度になるかはケースバイケースとしか言えません。

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