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建物建築請負人に建替費用相当額損害等賠償支払を命じた大阪地裁判決紹介1

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平成29年11月 9日(木):初稿
○建物建築請負工事において重大な瑕疵のため建物が人が住めない状況となったとして建替費用相当額の損害賠償請求ができないかとの相談を受け、関連判例を探しています。
比較的古い判例で、
①建物建築の請負人に建替費用相当額の損害賠償、
②損害賠償請求訴訟の資料収集のため支出した訴訟外の鑑定の費用の損害賠償、
③瑕疵修補に代わる損害賠償と併せて慰藉料の支払い

のいずれも認めた昭和59年12月26日大阪地裁判決(判タ548号181頁)の主文と理由文を2回に分けて紹介します。

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主   文
一 被告は、原告に対し、1545万円及びこれに対する昭和56年6月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用はこれを8分し、その1を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。
四 この判決は、原告が200万円の担保を供するときは、原告勝訴部分に限り、仮に執行することができる。

事   実

《省略》

理   由
一 請負契約の成立と本件建物の引渡

 原告が被告との間で、昭和54年5月24日、原告を請負人、被告を注文者として、公庫基準に適合することを内容とする本件請負契約を締結したこと、被告が、昭和54年12月23日、本件建築工事を完了し、同日、本件建物を原告に引渡した事実は、当事者間に争いがない。

二 本件建物の瑕疵
 そこで、本件建物の建築工事による瑕疵について判断する。
(一) 基礎
(1) 土

〈証拠〉によれば、公庫基準では、土工事は割栗石を根切り底に入れ、すき間なく小端仕立てに張り込み、目潰し砂利を敷き十分に突き固めた上、割栗石の上面を捨てコンクリートで均一な平面にならすべきものとしていること、ところが、本件建築工事の土工事においては、割石の大きさを整合することなく、小端仕立てもなく、投げ込み敷であり、目つぶし砂利も入れていないこと、小端仕立ては投げ込み敷の場合より、建物の荷重を地盤に均等に伝えやすくすることができ、基礎構造の強さに差があることが認められ、証人大塚孝雄及び同速川岩雄の各証言中、右認定に反する部分は前掲各証拠と対比して信用できず、他に右認定を覆えすに足りる証拠はない。

(2) 基礎底盤
〈証拠〉によれば、公庫基準では、基礎底盤は、巾32センチメートル以上、厚さ12センチメートル以上の形態が必要とされており、本件請負契約においても、巾、厚さが一定の直方体状の基礎底盤が約定されていること、ところが、本件建築工事においては、型枠なしの引均しコンクリートがなされているにすぎず、基礎底盤が不整形の形態をなしており、フーチングの測定がなされていないこと、このように、基礎が不整形の場合、不同沈下のため、基礎の底盤が破綻することがあり、型枠なしにコンクリートを流し込んだ場合、水分が土に吸収され、強度のおちる可能性があり、厚さ、幅の一定しない捨てコンクリートは、基礎構造のための補助手段にすぎず、フーチングと同視できないことが認められ、〈証拠〉中、右認定に反する部分は、前掲証拠と対比して信用できず、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

(3) 右事実によれば、本件建物の土工事及び基礎底盤には、いずれも基礎の構造耐力に影響を及ぼす欠陥があると認められるから、土工事及び基礎底盤工事の瑕疵があるというべきである。

(二) 木材
(1) 通し柱

〈証拠〉によれば、本件建物の階下洋間と階上和室の各東南端を結ぶ通し柱の外側部分に、長さ約1メートルの腐材部分があり、入り皮も認められること、本件建築工事の際、腐朽部分は削りおとされ、化粧材を貼り、更に側面から、60ミリメートル×100ミリメートル大の補強材が添えられているが、入り皮部分はそのままであること、入り皮とは、形成層を含む部分が、種々の外傷をうけて傷害組織が形成され、その中に樹皮が巻き込まれて材中に認められるものであつて、この通し柱の腐朽をめぐつて、昭和54年8月ころから、原被告間に紛争が生じ、被告から、本件建物を買取り、適当な代替地を見つけて建て替えしたいという提案もなされたことのあることが認められる。
 右事実によれば、通し柱に、新築建物に不相当な腐朽部分及び入り皮のある材が使用されたことにより、本件建物の構造耐力に影響を及ぼすものと認められるから、通し柱工事の瑕疵があるというべきである。

(2) 管柱
〈証拠〉によれば、公庫基準では、建築材料は、日本農林規格に適合する品質のものを求めているところ、日本農林規格では、管柱のねじれはきわめて軽微であることを要求していること、ところが、本件建物の階下和室八帖の間の西側の窓両側の管柱二本に最大幅約3ミリメートルのねじれがあり、このねじれは、人が認識可能な程度であることが認められる。右事実によれば、人の目につきやすい和室の管柱に新築建物に不相当な美匠上見苦しい材が使用されているのであるから、管柱工事の瑕疵があるというべきである。

 原告は、階下和室六帖の間の南側テラス窓西側の管柱二本にも、ねじれのある不良材が使用されている旨主張するが、本件全証拠によるもこれを認めることはできない。

(3) 小屋裏の梁材
〈証拠〉によれば、小屋裏の梁材に小口割れの著しい材が使用されている事実を認めることができ、新築建物に不相当な不良材が使用されているのであるから小屋裏の梁材工事に瑕疵があるというべきである。

(4) 筋かい材
〈証拠〉によれば、本件建築工事当時の建築基準法施行令45条2項では、筋かい材の大きさは、これに接する柱の三つ割の木材と規定されており、これに従えば、本件工事では、筋かい材は10・3センチメートル×3・4センチメートルの木材でなければならないこと、本件請負契約では、筋かい材として、8・7センチメートル×3・0センチメートルの木材を用いることになつており、本件工事では、10・0センチメートル×2・8センチメートルの木材が使用されていること、木造軸組の筋かいは専ら圧縮力に対するものであるから、材の厚みは挫屈に抵抗する大切な要素であり、材料工学的に比較するために断面二次モーメントの計算をすると、現況使用材及び本件請負契約の木材の性能は、いずれも本件建築工事当時の前記法令の規定する材より劣ることが認められる。

 右事実によれば、前記基準法施行令に違反する筋かい材の設計・施行がなされているのであるから、筋かい材の設計及び施行の瑕疵があるというべきである

(5) その他の部材
〈証拠〉によれば、本件請負契約では、一般の市場寸法が日本農林規格による標準寸法より2ないし3ミリメートル小さいことを考慮して本件建物の各部材の寸法が定められていること、部材は、これにかんなをかけて仕上げた上、用いられることから、各面一ないし、1・5ミリメートルの減損が見込まれること、しかし、柱、和室柱、間柱、母屋の使用材は、右市場寸法と標準寸法の差、かんな仕上げによる減損を考慮しても、なお小さく標準寸法において一ランク小さい材が使用されていることが認められる。右事実によれば、木材の品質において約定より劣るものが採用されているのであるから、部材の施工に瑕疵があるというべきである。

 原告は、火打ち梁も部材の断面寸法が約定より小さく施工されている旨主張するが、本件全証拠によるもこれを認めることはできず、むしろ、標準寸法をわずかに下回る断面寸法で施工され、約定寸法よりは大きい部材が使用されていることが認められるから、右原告の主張は理由がない。

(三) 木構造の瑕疵
(1) 一階床組に火打土台の取付けがないこと(原告主張の瑕疵(3)の(イ))

 二階小屋組西南隅角に火打ち梁の取付けがなく、火打ち梁と二階床組、小屋の組各横架材との仕口が、材それ自体を結合した上でボルトで緊結接合するかたぎ胴付き短ほぞ差しボルト締めとなつておらず、材を釘のみで打ちつけボトルで締めるだけの仕口加工のない突き付け納めとなつていること(瑕疵(3)の(ロ))、
小屋組に梁をつなぐ振れ止め、垂直材である小屋束を相互につなぐ小屋筋かい、けた行筋かいの取付けがないこと(瑕疵(3)の(ニ))、
小屋組構造材の継手、仕口が適切な緊結金物で補強されておらず、羽子板ボルトの取付けがない箇所もあること(瑕疵(3)の(ホ))、
1、2階の接合部の西南隅の柱又はこれに準じる柱に、通し柱もしくはこれに代わるべき耐力補強が施工されていないこと(瑕疵(3)の(ヘ))、
床下の束と束とを相互に直交して貫材でつなぐ床束根がらみの取付けがないこと(瑕疵(3)の(ト))、
勝手口蹴込みの立上り下地を囲んでいるラス下地ベニヤ板が地面と接する部分に相当な防湿方法がなされていないこと(瑕疵(3)の(チ))
は当事者間に争がない。
そして、前記甲第3号証の1、第4号証によれば、瑕疵(3)の(イ)(ロ)(ト)は本件請負契約の内容とされている公庫基準の内容とされていることが認められる。

 右事実によれば、瑕疵(3)の(イ)(ロ)(ト)は、本件請負契約に違反し、瑕疵(3)の(ニ)は建築基準法施行令46条2項に、同(3)の(ホ)は同施行令47条1項に、同(3)の(ヘ)は同施行令43条5項に違反しており、瑕疵(3)の(チ)の点も、建物の施工における基本的な欠陥というべきであるから、本件建築工事の瑕疵にあたるというべきである。

(2) 間仕切り壁(原告主張の瑕疵(3)の(ハ))
〈証拠〉によれば、構造計算上、安全な耐力を保つためには、本件建物には、本件請負契約の内容となつている間仕切り壁のほかに、なお数箇所に間仕切り壁を増設する必要があることが認められる。右事実によれば、構造計算上の安全性を考慮して間仕切り壁の設計をなさなかつた点に間仕切りに壁設計の瑕疵があるというべきである。
 間仕切り壁に、壁すじかいがないことについては、これを認めるに足りる証拠はない。

(四) 床下地盤高
〈証拠〉によれば建築基準法19条1項、本件請負契約及び公庫基準では、建物の防湿上、屋内地盤には、若干の盛土をして屋外地盤面より約5ないし6センチメートル高くしなければならないこととされていること、本件工事でも、屋内地盤に約3ないし4センチメートルの盛土をしたが、竣工間際に植木植栽のため、庭に10センチメートルばかりの盛土をした結果、屋内地盤面が、屋外地盤面より約5センチメートル低くなつたまま、特に防湿対策も施されていないことが認められる。

 右事実によれば、本件床下の地盤高工事については、敷地の衛生面に関し、基本的な欠陥があると認められるから、床下地盤高工事の瑕疵があるというべきである。

(五) 小屋裏換気孔
〈証拠〉によれば、本件請負契約と公庫基準では、特に断熱材施工をしたときには、小屋裏には換気孔を設けなければならないとされていること、もつとも、徳島県下では、台風等のため雨風が非常に強いため、実際には、換気孔を設けず、飾りにすることが多いが、屋根裏換気孔を設けても雨が入らないようにする施工は可能であること、本件建物では、断熱材施工が付されているのに、屋根裏換気孔が施工されず、飾りがつけられているにすぎないが、被告から原告に、徳島県下の右事情を説明した上で、その取付けが省略されたものではないことが認められる。
 右事実によれば、外気に対する室内空間の温度、湿度の調整、家屋全体の空気の清浄化等に重要な役割を果たす屋根裏換気孔が設けられていないのであるから、尾根裏換気孔工事の瑕疵があるというべきである。

(六) 設備
(1) 屋外給湯ボイラー

 原告は、屋外給湯ボイラーが極端に外壁面に近接して設置されている旨主張するが、本件全証拠によるも、これを認めることはできないので原告の右主張は理由がない。

(2) 電気配線のジョイントカバー
〈証拠〉によれば、公庫基準では、電気工事は、電気事業法による電気設備に関する技術基準、電気供給事業者の諸規程に従い施工することを義務づけているところ、社団法人日本電気協会内線規定では、床下、天井裏等における電気配線は、その接続結線部分においては、ねずみ等の被害により、火災等の危険がない様に、適当な接続箱を用いなければならないこととされていること、本件建物では、天井裏の電気配線の接続結線部分がすべて露出状態のままとなつていることが認められる。
 右事実によれば、電気配線の接続工事に瑕疵があるというべきである。

(3) 屋外排水管
 屋外排水管の溜桝から溜桝までの間に90度の角度で三か所の曲りがあるが、その一か所に溜桝が設置されていないし、他の二か所は溜桝に直線で連結することが困難なために成り行きまかせに連結されていることは、当事者間に争いがない。
 右事実によれば、屋外排水管の施設についての基本的な欠陥というべきであるから、本件建築工事の瑕疵にあたるものというべきである。

(七) 雨漏り
〈証拠〉によれば、本件建物の引渡し前に、一階台所の天井から雨漏りがあつたことが認められる、しかし、他方、〈証拠〉によれば、右雨漏り箇所は、既に被告によつてコーキングによる補修がなされ、現在では、雨漏りが停止していることを認めることができる。

 これらの事実に照らし考えると、現時点でも、吹き上げる強い雨の時には、本件建物に雨漏りがあることを推認することはできず、本件建物に雨漏りの瑕疵があるということはできない。
以上:5,522文字

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