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複数金銭貸借取引が一連の取引となる判断基準を示した最高裁判決紹介

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令和 3年 3月26日(金):初稿
○「748日空白期間がある契約を一連契約として充当計算を認めた簡裁判決紹介」の続きで、同判決の原告が援用した有名な平成20年1月18日最高裁判決(判タ1264号115頁)全文を紹介します。いわゆるリボルビング方式の金銭消費貸借に係る2つの基本契約に基づいて行われた取引を一連のものとみて利息制限法所定利率による充当計算ができる基準について判断しています。

○この最高裁判決は、この第1の取引と、その後の第2の取引が、一連の取引と認めるかどうかの判断基準は、第1の基本契約に基づく貸付け及び弁済が行われた期間の長さやこれに基づく最終の弁済から第2の基本契約に基づく最初の貸付けまでの期間、第1の基本契約についての契約書の返還の有無、借入れ等に際し使用されるカードが発行されている場合にはその失効手続の有無、第1の基本契約に基づく最終の弁済から第2の基本契約が締結されるまでの間における貸主と借主との接触の状況、第2の基本契約が締結されるに至る経緯、第1と第2の各基本契約における利率等の契約条件の異同等としました。

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主   文
原判決中、主文第1項及び第2項を破棄する。
前項の部分につき、本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。

理   由
上告代理人○○○○の上告受理申立て理由について
1 本件は、上告人を貸主、被上告人を借主としていわゆるリボルビング方式の金銭消費貸借に係る二つの基本契約が締結され、各基本契約に基づいて取引が行われたところ、被上告人が、上記取引を一連のものとみて、これに係る各弁済金のうち利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超えて利息として支払われた部分(以下「制限超過部分」という。)を元本に充当すると過払金(不当利得)が生じていると主張して、上告人に対し過払金の返還を請求する事案である。最初に締結された基本契約に基づく取引について生じた過払金をその後に締結された基本契約に基づく取引に係る債務に充当することができるかどうかが争われている。

2 原審が確定した事実関係の概要は次のとおりである。
(1)上告人は、貸金業の規制等に関する法律(平成18年法律第115号により法律の題名が貸金業法と改められた。)3条所定の登録を受けた貸金業者である。

(2)被上告人は、上告人との間で、平成2年9月3日、次の約定により、継続的に金銭の借入れとその弁済が繰り返されるリボルビング式金銭消費貸借に係る基本契約(以下「基本契約1」という。)を締結した。
ア 融資限度額 50万円(被上告人はこの範囲で自由に借増しができる。)
イ 利息 年29.2%
ウ 遅延損害金 年36.5%
エ 返済日 毎月1日
オ 返済方法 借入時の借入残高に応じた一定額以上を毎月弁済日までに支払う。

(3)被上告人は、平成2年9月3日から平成7年7月19日までの間、第1審判決別紙法定金利計算書1の番号1から74までの年月日欄記載の日に借入金額欄又は弁済額欄記載のとおり金銭の借入れと弁済を行った。これにより、基本契約1の約定利率による利息及び元金は、平成7年7月19日に完済された計算となる。
なお、この間の弁済につき、制限超過部分を元本に充当されたものとして計算をした残元金は、上記法定金利計算書1の番号1から74までの残元金欄記載のとおりであって、平成7年7月19日の時点における過払金は42万9657円となる。

(4)被上告人は、上告人との間で、平成10年6月8日、次の約定により、継続的に金銭の借入れとその弁済が繰り返されるリボルビング式金銭消費貸借に係る基本契約(以下「基本契約2」という。)を締結した。
ア 融資限度額 50万円(被上告人はこの範囲で自由に借増しができる。)
イ 利息 年29.95%
ウ 遅延損害金 年39.5%
エ 返済日 毎月27日
オ 返済方法 借入時の借入残高に応じた一定額以上を毎月弁済日までに支払う。

(5)被上告人は、平成10年6月8日から平成17年7月7日までの間、第1審判決別紙法定金利計算書2の番号1から146までの年月日欄記載の日に借入金額欄又は弁済額欄記載のとおり金銭の借入れと弁済を行った。

(6)上告人は、基本契約2の契約書の作成に際し、被上告人から、借入申込書の提出を受け、健康保険証のコピーなどを徴求した上、被上告人の勤務先に電話して在籍の確認をした。
 上記契約書作成に際しての審査項目のうち、被上告人の融資希望額、勤務先、雇用形態、給与の支給形態、業種及び職種、住居の種類並びに家族の構成は、基本契約1を締結したときのものと同一であり、年収額及び他に利用中のローンの件数、金額についても大差はない状況であった。また、基本契約2を取り扱った上告人の支店は基本契約1を取り扱った支店と同一であった。

3 原審は、次のとおり判示して、第1審判決中、被上告人の過払金返還請求のうちの一部を棄却した部分を取消し、上告人に対し、第1審の認容額である28万7552円及びうち27万2973円に対する平成17年11月19日から支払済みまで年5分の割合による金員に加えて、43万8157円及びうち41万4829円に対する同日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を命じた。 

(1)同一の貸主と借主との間で継続的に貸付けとその弁済が繰り返される金銭消費貸借契約においては、借主は、借入総額の減少を望み、複数の権利関係が発生するような事態が生じることは望まないのが通常であると考えられるから、仮にいったん約定利息に基づく元利金が完済され、その後新たな借入れがされた場合でも、少なくともそれらの取引が一連のものであり、実質上一個のものとして観念されるときは、利息制限法違反により生じた過払金は新たな借入金元本の弁済に当然に充当されるものと解するのが相当である。


(2)本件においては、基本契約1の完済時から基本契約2の締結時まで取引中断期間が約3年間と長期間に渡ったものの、この間に基本契約1を終了させる手続が執られた事実はないこと、基本契約2締結の際の審査手続も基本契約1が従前どおり継続されることの確認手続にすぎなかったとみることができることを考慮すると、基本契約1と基本契約2とで利率と遅延損害金の率が若干異なっており、毎月の弁済期日が異なっているとしても、基本契約1及び基本契約2は、借増しと弁済が繰り返される一連の貸借取引を定めたものであり、実質上一体として1個のリボルビング方式の金銭消費貸借契約を成すと解するのが相当であるから、基本契約1につき平成7年7月19日の弁済時に生じた過払金42万9657円は、その後平成10年6月8日に50万円の貸付けがされた時点で、何らの意思表示をすることなく同貸付金債務に当然に充当される(したがって、基本契約1の取引により生じた過払金について、上告人の主張に係る消滅時効は成立しない。)。

これにより、平成10年6月8日から平成17年7月7日までの借入れ及び弁済について、制限超過部分を元本に充当されたものとして計算をすると、法定金利計算書1の番号75から220までに記載のとおり、平成17年7月7日の時点において過払金元金68万7802円が、同年11月18日までに過払金利息3万7907円がそれぞれ発生している。

 これに対し、第1審判決は、平成7年7月19日に生じた過払金42万9657円は平成10年6月8日の貸付金債務に充当されないとする判断を前提として被上告人の請求を一部認容しているが、その判断は誤りであるから、第1審の認容額に加えて上記のとおりの金員の支払を命ずる。
4 しかしながら、原審の上記判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。
(1)同一の貸主と借主との間で継続的に貸付けとその弁済が繰り返されることを予定した基本契約が締結され、この基本契約に基づく取引に係る債務の各弁済金のうち制限超過部分を元本に充当すると過払金が発生するに至ったが、過払金が発生することとなった弁済がされた時点においては両者の間に他の債務が存在せず、その後に、両者の間で改めて金銭消費貸借に係る基本契約が締結され、この基本契約に基づく取引に係る債務が発生した場合には、第1の基本契約に基づく取引により発生した過払金を新たな借入金債務に充当する旨の合意が存在するなど特段の事情がない限り、第1の基本契約に基づく取引に係る過払金は、第2の基本契約に基づく取引に係る債務には充当されないと解するのが相当である(最高裁平成18年(受)第1187号同19年2月13日第三小法廷判決・民集61巻1号182頁、最高裁平成18年(受)第1887号同19年6月7日第一小法廷判決・民集61巻4号1537頁参照)。

そして、第1の基本契約に基づく貸付け及び弁済が反復継続して行われた期間の長さやこれに基づく最終の弁済から第2の基本契約に基づく最初の貸付けまでの期間、第1の基本契約についての契約書の返還の有無、借入れ等に際し使用されるカードが発行されている場合にはその失効手続の有無、第1の基本契約に基づく最終の弁済から第2の基本契約が締結されるまでの間における貸主と借主との接触の状況、第2の基本契約が締結されるに至る経緯、第1と第2の各基本契約における利率等の契約条件の異同等の事情を考慮して、第1の基本契約に基づく債務が完済されてもこれが終了せず、第1の基本契約に基づく取引と第2の基本契約に基づく取引とが事実上1個の連続した貸付取引であると評価することができる場合には、上記合意が存在するものと解するのが相当である。

(2)これを本件についてみると、前記事実関係によれば、基本契約1に基づく取引について、約定利率に基づく計算上は元利金が完済される結果となった平成7年7月19日の時点において、各弁済金のうち制限超過部分を元本に充当すると過払金42万9657円が発生したが、その当時上告人と被上告人との間には他の借入金債務は存在せず、その後約3年を経過した平成10年6月8日になって改めて基本契約2が締結され、それ以降は基本契約2に基づく取引が行われたというのであるから、基本契約1に基づく取引と基本契約2に基づく取引とが事実上1個の連続した貸付取引であると評価することができる場合に当たるなど特段の事情のない限り、基本契約1に基づく取引により生じた過払金は、基本契約2に基づく取引に係る債務には充当されないというべきである。

 原審は、基本契約1と基本契約2は、単に借増しと弁済が繰り返される一連の貸借取引を定めたものであり、実質上一体として1個のリボルビング方式の金銭消費貸借契約を成すと解するのが相当であることを根拠として、基本契約1に基づく取引により生じた過払金が基本契約2に基づく取引に係る債務に当然に充当されるとする。

しかし、本件においては、基本契約1に基づく最終の弁済から約3年間が経過した後に改めて基本契約2が締結されたこと、基本契約1と基本契約2は利息、遅延損害金の利率を異にすることなど前記の事実関係を前提とすれば、原審の認定した事情のみからは、上記特段の事情が存在すると解することはできない。
 そうすると、本件において、上記特段の事情の有無について判断することなく、上記過払金が基本契約2に基づく取引に係る債務に当然に充当されるとした原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。


5 以上によれば、論旨は理由があり、原判決中、主文第1項及び第2項は破棄を免れない。そこで、前記特段の事情の有無等につき更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すこととする。
 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。(裁判長裁判官 今井功 裁判官 津野修 裁判官 中川了滋 裁判官 古田佑紀)
以上:4,865文字

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