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第10章知的財産権侵害訴訟の効果1 担当(石井)

平成17年 4月23日(土):初稿
知的財産権研究会 レジュメ h17.4.19 石井慎也

第1 差止請求権
 1 主体
特許権,実用新案権,意匠権,商標権者及びその専用実施権者
著作者,著作権者,出版権者又は著作隣接権者
不正競争行為により,営業上の利益が侵害され,あるいは侵害せられるおそれがある者

2 差止請求権の内容
ア 現に反復継続中の侵害行為の禁止を求める差止請求権(狭義の差止請求権)
イ 将来の侵害の防止を求める差止請求権(予防請求権)
ウ 侵害組成物の廃棄,侵害行為に供した設備の除去その他侵害の停止または予防に必要な行為を請求する差止請求権(除去請求権)

3 差止請求権をめぐる問題点
(1)対象物件・方法の特定
 侵害物件・方法の特定は,ア,イの2つの場面によって,必要とされる特定の程度が異なる。
ア 差止請求の対象を特定することにより審理の対象を特定するとともに,判決の既判力や執行力の範囲の確定しようとする場合
 →社会通念上,差止めの対象として他と区別できる程度に特定されていれば足りる。
イ 請求原因において対象物件・方法が特許発明の技術的範囲に属するか否か(構成の対比)という争点の範囲を限定しようとする場合
 →「特許請求の範囲」に記載された構成と対比できるように具体的に記載されなければならない。

(2)除去・廃棄請求権の範囲
☆問題意識 侵害行為の再発防止と被告に対する加重な負担の回避。
 ア 完成品に至る前の半製品の廃棄を命じることができるか
 →ケースバイケースだが,主文その他の記載から相当程度具体的に特定できる必要あり。
 イ 商標権侵害訴訟や不正競争訴訟における侵害標章や表示の抹消に加え,当該標章・表示を付した商品(表示物という。)の廃棄請求ができるか。
 →① 表示物と分離して侵害標章・表示そのものを抹消することが可能であれば,原則として侵害標章・表示の抹消のみを命ずるべき。
② 表示物と分離して侵害標章・表示そのものを抹消することが困難であるか,抹消を行うのに著しい費用を要する場合には,抹消にかえて表示物の除去ないし廃棄請求が認められてよい。
ウ 商号登記の抹消請求
侵害者が法人の場合で,原始商号から商号変更したときは,原始商号に戻させれば良い。これに対し原始商号自体が商標権を侵害している場合に,原始商号の登記抹消請求を許すと,登記簿上,当該法人の同一性を識別する方法が失われるため,法人の原始商号の登記抹消請求を許すべきではないとう判例があった。
しかし,登記実務上,原始商号等を抹消した場合にも,「抹消前旧商号○○株式会社」というように,旧商号を付加することによって登記簿上の会社の特定を行う取扱が行われるようになった。
よって,最近では,原始商号についても,抹消登記請求を認容する判例が主流となりつつある。

(4)差し止め請求権の行使期間
原則として,時効・除斥期間の制約がない。
ただし,不正競争防止法2条1項3号の不正競争行為(商品形態模倣行為)については,権利保護期間は最初に当該商品を販売した日から3年。また,同法4号ないし9号の不正競争行為(営業秘密に関する)に対する差止請求権については,同法8条により,その事実及び行為者を知ってから3年,行為のときから10年の消滅時効にかかる。)
いずれにせよ,権利者による差止請求権の不誠実な行使に対しては,信義誠実の原則等による制約がありる。

以上:1,541文字

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