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夫名義借金返済金額の半分について妻に財産分与を認めた地裁判決紹介

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令和 2年 5月25日(月):初稿
○「オーバーローン不動産住宅ローン返済金に清算を認めた家裁審判紹介」に関連した続きで、夫名義の借金について返済した金額の半分を夫婦財産の清算として夫に対し、妻に返還を命じた昭和49年10月1日名古屋地裁判決(判時786号68頁、判タ320号281頁)全文を紹介します。

○財産分与は、夫婦別居時に残っている財産について、その財産の名義如何に拘わらず、夫婦共有財産として、原則半分ずつに分けるものです。一般には積極財産について分配すると考えられていますが、夫婦の一方が相手方個人の借金の返済に協力した場合、その協力により減少した借金を清算するのが公平であるとして、夫が費消した借金230万円の返済について妻が協力したとして半分の115万円を妻に返還を命じました。

○現実に財産として残っていない場合、返還を命じられた夫に対して、強制執行をかけても回収が実現しない方が多いと思われます。しかし、妻が苦労して夫の借金返済に協力していた場合、その清算を求めて判決だけでも取っておけば、将来、夫の経済力が回復した場合、回収できる可能性もあります。

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主   文
1 原告と被告とを離婚する。
2 原被告間の長男乙夫(昭和44年7月4日生)の親権者を原告と定める。
3 被告は原告に対し215万円およびこれに対する本判決確定の日から右支払済にいたるまでの年5分の割合による金員を支払え。
4 訴訟費用は被告の負担とする。

事   実
1 原告は、別紙(訴状関係部分写、但し、一部訂正)記載のとおり請求の趣旨および請求の原因を述べた。
2 被告は、適式な呼出をうけながら、本件口頭弁論期日に出頭せず、答弁書等も提出しない。
3 本件証拠関係は、本件書証目録および証人等目録記載のとおりである。

理   由
《証拠略》によると次の事実を認定することができる。
(一) 被告は,その先妻星子と昭和44年9月26日協議離婚したが、同女との間に長男一郎(昭和37年8月5日生、右協議離婚後のその親権者は被告)、二男二郎(昭和39年7月30日生、前同様その親権者は被告)があったところ、自己が旅客誘致員として勤務する○○○バス株式会社でしり合った原告(原告も当時同会社にバスガイドとして勤務しており、現在も勤務中)と昭和44年9月29日婚姻(の届出を)(原告は初婚)し、両名は被告の本籍地において被告の両親、被告の前記の先妻の子二人とともに結婚生活をつづけ、原被告間に長男乙夫(昭和44年7月4日生)をもうけた。

(二) 被告は、昭和45年2月頃から同年5月頃にかけて右会社の旅客誘致員として集金した金員263万2950円を、その頃同会社に入金せず自己の賭事等の遊興費として費消し、そのうち66万6070円を自己の親戚から借りて同会社に返済したが、右残金については返済の見込がたたず、止むなく、原告は被告と協力して両者の毎月の給料を合して、被告の給料分の殆んど全額を同会社への分割返済にあて、原告の給料分で親子3人の生活を支えることにし、同年9月頃から48年6月頃にかけて右方法で分割返済をなし、原被告は右の残金とこれの遅延損害金合計230万8195円を完済した。

(三) ところが、被告は右の返済が漸く終ろうとする昭和48年6月24日頃原告に行先をつげずに突然家出して消息を絶ち、その後約1ケ月位たってから一度家に寄りついたが、その際も原告に対し被告が何処で何をしていたかを全然知らさず、すぐさままた家を出てそのまま消息を絶った。

(四) 被告の家出後、原告は被告の親との折合も悪くなり、被告が飲屋等他に借金を残したまま家出したためその取立などに責められたこともあって被告の実家にいずらくなり、原告は同年7月末頃長男を連れて原告の肩書住所地の原告の実家に帰らざるをえなくなったが、被告は現在にいたるまで原告に何らの音信もせず、その住所は不明で、もとより、原告の生活費等にあてるべき金員の送付等も全然しない。
 原告としては、原告がどこかのスナックの女将と同棲しているらしいとか、時たま自己の実家にその様子をみるため立寄るらしいとかの噂を耳にするだけである。

(五) 被告は前記の不始末とは別に、昭和44年6月28日頃原告の父親からも仕事のためと称して95万円を借りうけ、そのうち33万円は返済したが残金の返済を今もってなさないので、原告は自己の両親に対しても肩身のせまい思いをしている。

(六) 以上のような状態なので原告は被告との婚姻関係をつづけることを諦め、離婚を決意したが、原告は右のような被告の仕打により精神的打撃をうけ、また本件離婚につき幼い長男をかかえ、今後の身の処し方等についても非常な不安にかられ眠れぬ夜を送っている。
 かように認めることができ、この認定に反する証拠はない。

2 以上の事実によると、被告は正当な理由なく原告との同居義務および協力扶助義務を尽さないことが明らかであり、その他一切の事情を考慮しても本件婚姻の継続を相当と認めえないから、原告の本訴の離婚請求は被告の悪意の遺棄を原因とする点ですでに理由があり、また、右認定の事実関係の下においては、原告の申立のとおりの親権者指定をするのが相当である。

3 原告は本訴において慰藉料として100万円の請求をするが、原告主張の右の慰藉料請求は被告の悪意の遺棄等本件の離婚の原因となるべき被告の個々の行為によるもののみならず、これを含み、これらの個々行為の結果原告が余儀なくされた離婚自体によるもの、すなわち、本件離婚そのものによる原告の精神上の損害の賠償を求めているものと把握することが原告の主張の趣旨に照らし相当であると解されるのであるから、かかる慰藉料の請求については民法第709条以下の不法行為ないしは債務不履行の一般規定によらしめず、民法第768条の財産分与の請求のうちに包含せしめ、この請求についての規定によらしめると解する方が合理的と考えられる(蓋し、そう解する方が、一方、実体的にみて離婚を余儀なくされた者の求めうる賠償の範囲が広くなり、手続的にみてもその者の離婚給付の手続がより簡便になるし、他方、民法第768条の規定につき、これの沿革や立法趣旨、その性格からみて同条にいう財産分与の請求とは、その中に右のような慰藉料の請求をも含むものであるとこれを解釈することも決して背理ではないと考えられるからである。)ので、本件慰藉料の請求については右規定に従うことにし、この額につき考えるに、前記認定のような、被告の有責な行為、これらによって原告が本件離婚を余儀なくされるに至った経緯、程度、後記説示の夫婦財産の清算たる内容をもつ財産分与の額、その他諸般の事情を勘案し、本件離婚による原告の慰藉料の額を100万円と定めるのが相当である。

4 次に、原告はその主張の財産分与として115万円を請求するが、その主張の趣旨に照らし、これは民法第768条所定の財産分与請求のうちの夫婦財産の清算たる内容をもつものと解すべきところ、この額については、前記認定のような被告において費消した約230万円を原被告双方が協力して完済した経緯、前記説示の慰藉料の額、その他本件における一切の事情を考慮し、これを115万円と定めるのが相当である。

5 なお、原告は、その主張する慰藉料および財産分与につきこれらに対する本件訴状送達の日の翌日からこれらの支払ずみにいたるまでの年5分の割合による遅延損害金の請求をするが、右慰藉料および財産分与はいずれも民法第768条所定の財産分与の内容をなすものに外ならないものであることはさきにみたとおりであり、この財産分与の請求権は本件離婚に伴って発生し、その額についてもこの裁判の確定によって形成的に決定されるものであるから、右遅延損害金の請求(申立)は、主文掲記の限度(なお、主文にいう本判決確定の日とは、その午前零時の経過をもって本判決が確定すべきところのその日のことである。)では認められるが、その余のものはこれを認めるに由がないのであるが、そもそも、同条所定の財産分与そのものが本来審判事項であってその申立(請求)の額につき裁判所が拘束されるわけではない(従って、仮に右申立を減額してもその減額部分につき棄却の裁判は必要でない)のであるから、これの附帯請求(申立)のうち、それが認められない部分についても同様に主文において特にこれの棄却の裁判をする必要をみない(右の財産分与やこれの遅延損害金について不服があれば、離婚と一体として本判決そのものに対して上訴すれば足りる)。

6 訴訟費用の負担につき民訴89条を適用する。
(判事 海老塚和衛)
別紙《略》
以上:3,579文字

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