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実父養育費支払義務の消滅時期を養子縁組時とした家裁審判紹介

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令和 3年 6月25日(金):初稿
○「離婚後前妻が再婚したにも拘わらず養育料請求してきた場合」に「『実父と同程度以上に稼ぎのある男』と再婚した場合、実父の養育料支払義務は無くなると考えるべき」と記載していました。

○問題は、実父の養育料支払義務が無くなる時期ですが、実子と再婚した妻の相手方が養子縁組をした時期ではなく、実父の養育料支払義務が消滅するためには養育料支払減額申立をして家裁が養育料支払義務について変更又は取消をする必要がある(民法第880条「扶養をすべき者若しくは扶養を受けるべき者の順序又は扶養の程度若しくは方法について協議又は審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その協議又は審判の変更又は取消しをすることができる。」)との平成16年12月27日東京地裁判決からは家裁が養育料支払義務を取り消したときと思っていました。

○ところが平成26年5月に年収1320万円程度の実父が3人の子供にそれぞれに大学を卒業するまで1人当たり月額6万円を支払うとの合意をして協議離婚した実母が平成27年11月年収3000万円以上の相手と再婚し、同年12月に3人の子供後妻の再婚相手方が養子縁組をした事案で実父の養育料支払義務が消滅するのは、養子縁組をした平成27年12月とした令和元年12月5日東京家裁審判(判時2480号6頁<参考収録>)を紹介します。

○私の感覚では極めて合理的判決と思いますが、平成16年12月27日東京地裁判決の考えとは全く異なります。案の定、元妻が抗告し、抗告審東京高裁で覆されており、別コンテンツで紹介します。

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主   文
1 申立人の相手方に対する未成年者らの養育費の支払義務を,平成27年12月15日以降,いずれも免除する。
2 手続費用は各自の負担とする。
 
理   由
第1 事案の概要

 本件は,申立人が,相手方に支払うべきものとされた未成年者らの養育費を免除することを求めた事案である。

第2 当裁判所の判断
1 本件記録によれば,次の事実を認めることができる。
(1) 申立人と相手方は,婚姻中である平成11年○○月○○日に長女であるD,平成15年○○月○○日に二女であるE,平成19年○○月○○日に三女であるFをもうけた。

(2) 申立人と相手方は,平成26年5月,未成年者らの親権者をいずれも相手方と定めて協議離婚すること,未成年者らの養育費について,申立人が,相手方に対し,同年6月から未成年者らがそれぞれ大学を卒業する月まで,毎月末日限り,1人当たり月額6万円を支払うこと,申立人又は相手方の親族構成に変化があったときは,遅滞なく他方に通知することなどを合意した。

(3) 申立人と離婚した相手方は,平成27年11月22日,利害関係参加人と再婚し,利害関係参加人は,同年12月15日,未成年者らと養子縁組した。

(4) 申立人は,独立行政法人Hに勤務し,平成30年に約1320万円の給与収入を得た。
 利害関係参加人は,I株式会社に勤務し,平成30年に約3870万円の給与所得を得た。


(5) 申立人は,令和元年5月15日,未成年者らの養育費の支払義務を免除することなどを求めて調停を申し立てたが(東京家庭裁判所令和元年(家イ)第3634号ないし同第3636号),同年9月4日,調停不成立となり,本件審判手続に移行した。


(1) 両親の離婚後,親権者である一方の親が再婚したことに伴い,その親権に服する子が親権者の再婚相手と養子縁組をした場合,当該子の扶養義務は,第一次的には,親権者及び養親となった再婚相手が負うべきであるから,非親権者が親権者に対して支払うべき子の養育費は零になるものと解される。

 これを本件についてみると,上記1(2),(3)によれば,申立人との離婚の際に未成年者らの親権者となった相手方は利害関係参加人と再婚し,利害関係参加人は未成年者らと養子縁組したことが認められるから,申立人が相手方に対して支払うべき未成年者らの養育費は,零とすべきである。

 相手方は,相手方及び利害関係参加人が未成年者らを十分に扶養することはできない状態にあるなどと縷々主張するが,上記1(4)のとおりの申立人及び利害関係参加人の収入状況のほか,本件記録に現れた一切の事情に照らしてみても,相手方及び利害関係参加人において未成年者らを扶養することができず,申立人において第一次的に扶養すべき状況にあるとはいえないから,相手方の上記主張は採用できない。

(2) そして,養子縁組によって利害関係参加人が未成年者らの扶養を引き受けたという事情の変更は,専ら相手方側に生じた事由である上に,相手方において,当該養子縁組以降,申立人から養育費の支払を受けられない事態を想定することは十分に可能であり,また,相手方が当該養子縁組の事実を遅滞なく申立人に通知したことを認定するに足りる的確な資料もないことなどからすると,申立人が相手方に対して支払うべき未成年者らの養育費を零にすべき始期は,利害関係参加人が未成年者らと養子縁組した平成27年12月15日とするのが相当である。

3 よって,主文のとおり審判する。
 東京家庭裁判所  (裁判官 西功)
以上:2,142文字

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