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既婚不知理由で不貞行為第三者への慰謝料請求を棄却した地裁判決紹介

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令和 3年11月30日(火):初稿
○原告が、被告に対し、被告が原告の元配偶者Cとの交際を続けて性行為に及ぶ等したほか、原告と元配偶者との離婚等に関する家事事件において元配偶者に協力する等し、また長女を連れて元配偶者と会うことによって原告と長女との面会交流に悪影響を及ぼす等したことについて220万円の損害賠償を請求しました。

○事案は以下の通りです。
・h24.12原告とC女婚姻
・h26Cは原告との間の長女を出産
・h29.4Cは原告に離婚申し出
・h29.7.5原告・C間で離婚届作成
・h29.8原告はCと別居、h31.2離婚
・h29.7.7被告はCと知り合い、同年同月29日には性行為に及ぶ
・h29.8.5Cは離婚届提出するも原告の不受理申立のため受理されず
・h29.8.14Cは原告と別居
・h29.8.24頃Cは原告に対し離婚調停申立
・h29.12.21原告Cに対し離婚調停申立、
・h30.7.20原告C間離婚調停は親権者決まらず不成立
・h31.2.22原告C間で長女親権者Cとして協議離婚成立・公正証書に原告C間に何ら債権債務がなく、相互に何らの請求をしないことを確認
上記経過中、被告は平成29年7月7日にCと知り合い、同月29日に性行為に及んだ後は、継続してCと関係を継続して、Cは平成29年8月末には、被告の子を妊娠し、原告との離婚が未了であることを告げ、10月11日は堕胎するなどの事情がありました。

○そこで原告は被告に対し、平成29年7月当時,少しの注意を払えばCに夫がいることを容易に認識し得たにもかかわらず,その注意を怠り,知り合った直後のCと避妊をせずに性行為に及んで妊娠させて、Cの体により負担がかかる状況で堕胎をさせ、遅くとも平成29年8月末には、Cに夫がいることを確定的に知ったにもかかわらず,との交際を継続し,Cと互いを「婚約者」と呼び合い,別件家事事件において,Cに有利に働くように協力し,原告とCとの夫婦関係の悪化や解消に悪影響を及ぼした等を理由に慰謝料220万円の支払を求めて提訴しました。

○これに対し令和元年12月17日東京地裁判決(LEX/DB)は、被告において,Cとの性行為に及ぶに先立ち,配偶者の存在についての故意又は過失があったと認めることはできず、Cは平成29年8月14日に長女を連れて原告との別居を開始し,同月24日頃には,離婚を目的とした夫婦関係調整調停事件を申し立て、遅くともこの頃までには原告とCの夫婦関係は、回復させるのが困難な状況になり、被告において同年8月末頃にCが既婚者であると認識したにもかかわらず,Cとの交際を継続したとしても,その頃までには,原告とCとの婚姻関係が既に破綻していたから,不法行為を構成するものとはいえないとして原告の請求を棄却しました。

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主   文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は,原告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求

 被告は,原告に対し,220万円及びこれに対する平成29年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
1 被告は,原告の配偶者であったC(以下「C」という。)が,原告と離婚する前に性行為に及んだ。本件は,原告が,被告に対し,被告がCに配偶者がいることを知りつつ,Cとの交際を続け,原告が反対していたにもかかわらず,Cとの間にもうけた長女D(以下「長女」という。)と入浴を続け,原告とCとの間の家事事件においてCに協力し,被告によるこれらの行為によって,原告とCとの婚姻関係が破綻したなどと主張して,不法行為に基づく損害賠償の一部請求として,220万円及びこれに対する不法行為の日の後である平成29年8月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
 被告は,Cと性行為に及んだ当時にCに配偶者がいるとは知らず,知らなかったことに過失もないなどと主張して,その支払義務を争っている。

2 前提事実(当事者間に争いがない事実,証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実)

         (中略)


第5 当裁判所の判断
1 認定事実

 前提事実,証拠(甲5ないし9,乙6,12ないし14のほか後掲の各書証)及び弁論の全趣旨によれば,以下の各事実が認められる。
(1)原告とCは,平成24年12月25日に婚姻し,平成26年○○月○日に長女をもうけた。Cは,平成29年1月にがん検診を受けた際,将来に子宮筋腫を発症するおそれを指摘され,再度の妊娠をするのであれば,早い方が望ましい旨の助言を受け,原告に第2子の妊娠について意見を求めたが,原告から積極的な回答を得ることができなかったため,原告と離婚をした上で再婚し,第2子を懐妊しようと考え,同年4月頃に原告に対して離婚を持ちかけた。

原告が明確に拒否的な態度を示さなかったため,Cは,原告が離婚をすることに同意をしたものと認識し,同年6月18日には原告に対して離婚届に所定の事項を記入して交付するように催促するとともに,お盆休みに引っ越しをする予定であるので,同年7月には離婚届を区役所に提出したい旨を伝えた(甲2,乙1)。

(2)原告は,平成29年7月5日,帰宅後にCから同人が記入すべき事項が既に記入された離婚届の交付を受け,原告も記入をするように促され,これに応じた。もっとも,原告の証人欄などその場で全ての事項を記入することができなかったことから,原告において離婚届を預かることにした(甲2)。

(3)Cは,原告が離婚届に署名をしたことから,原告と離婚するには離婚届の届出をするだけであり,再婚相手を直ちに探そうと考え,平成29年7月5日,本件ウェブサイトに登録をし,同月6日にプロフィールを作成した(乙2)。本件ウェブサイトは,再婚を目的とする男女が知り合うことを目的としており,本件ウェブサイトを通じて相手にメールを最初に送付する場合にのみ有料(1500円)であるが,それ以外に登録料や成約時の報酬等を支払う必要はない(乙17)。

また,本件ウェブサイトは,利用規約において,会員資格を満たしていない者の会員登録や虚偽の情報を記載することを禁止しており(1条2号及び3号),既婚者の場合には,いわゆる仮面夫婦や別居中,離婚が決まった者であっても利用を禁止しているが,登録に先立ち,戸籍等の独身であることを証するための資料の確認や提出までは求めていない(乙11,17,被告本人〔12頁〕)。

(4)被告は,Cよりも先に本件ウェブサイトに登録をしていたが,平成29年7月7日,本件ウェブサイトを介してCにメールを送信し,同月14日,LINEを通じてのやり取りを始めた(乙3)。被告は,同月22日,長女を同伴したCと面会し,同月29日の日中も長女を同伴したCと面会したが,同日夜間に長女を預けることが可能であったとして単身のCと面会した際,ホテルに赴き,Cと性行為に及んだ。
 なお,被告とCは,いずれも平日に勤務をしていたことから,週末に面会することが多かった。

(5)Cは,原告が離婚届を提出しようとしなかったため,平成29年8月10日,原告が保管していた離婚届を区役所に持参し,離婚届を届け出た。しかしながら,原告が,Cによる届出の直後に不受理申出をしたため,上記の離婚届は,受理されなかった。

(6)Cは,平成29年8月14日,長女を連れて原告との別居を開始し,同月24日頃には,被告を相手方とする東京家庭裁判所に離婚を目的とした夫婦関係調整調停事件及び婚姻費用分担調停事件を申し立てた(甲4)。
 Cは,同月末頃には,被告に対して懐妊した旨を告げるとともに,原告との離婚が未了である旨も併せて伝えた。また,Cと原告が別居した後,被告は,長女と入浴することがあった(甲2)。

(7)原告は,平成29年9月30日頃,Cに長女の誕生日の関係で連絡をしたところ,Cから警察に通報されるということがあった(甲6・3頁)。

(8)Cは,被告に対して懐妊した旨を告げた後も原告と離婚をすることができなかったことから,胎児を出産するかについて思い悩み,平成29年10月8日頃には被告と口論となった。Cは,堕胎をする際に,被告を頼ることが困難であったため,同月9日,原告と連絡を取り,被告との性行為に及び,被告の子を懐妊した旨を伝えて,協力を求めた。そして,Cは,同月11日に堕胎の処置を受けた。

(9)原告は,平成29年10月30日に長女と面会をした後,長女をCの下に戻さなかった。そのため,Cは,同年11月13日,東京家庭裁判所に子の監護者の指定審判事件及び仮の地位を定める仮処分(子の引渡し・子の監護)申立事件を申し立てた。被告は,同事件において同月6日付けの陳述書を提出したが,同陳述書には,長女と被告の関係が良好である旨の記載や原告とCが離婚した後にCと再婚する予定である旨の記載があった(甲9)。原告は,同月14日,LINEを通じて,Cに対し,調停や裁判になると費用を要するため,早急に離婚届を提出するように促した(乙9)。

(10)原告は,平成29年12月21日,東京家庭裁判所にCを相手方として離婚を目的とする夫婦関係調整調停事件を申し立てたが,長女の親権者等で合意に至らず,平成30年7月20日に不成立により終了した。
 その後,原告と被告は,平成31年2月22日,長女の親権者をCと定めて協議離婚をした。また,原告と被告は,同年3月28日,公証人に離婚給付等契約公正証書と題する公正証書の作成を委嘱したが,同公正証書には,財産分与や慰謝料についての定めはなく,清算条項(5条)において,財産分与,慰謝料等何らの債権債務がないことを確認するとともに,名目のいかんを問わず,相互に請求しない旨の定めがされた(乙15)。

(11)被告の訴訟代理人弁護士は,本件訴えの提起に先立つ平成30年10月16日付けの書面により,原告の訴訟代理人弁護士に対し,被告が原告に対して損害賠償債務を負わないので,訴えを提起した場合には不当提訴である旨を伝えた(乙5)。

2 争点1(被告による不法行為の成否)について
(1)被告は,原告とCが離婚する前であり,別居する前であった平成29年7月29日にCと性行為に及び,Cにおいてその後に懐妊している(なお,Cの母子手帳(乙4)において9月22日の診察時に10週と1日との記載があることに照らすと,その頃に被告とCが性行為に及んだことで懐妊したものと推認される。)。

 しかしながら,上記1の認定のとおり,被告は,Cと平成29年7月7日に本件ウェブサイトを通じて知合い,同月14日にLINEを通じてのやり取りを始め,同月22日,初めてCと面会し,同月29日にCと性行為に及んだものであり,被告がCと知り合ってから性行為に及ぶまでに直接に面会をしてやり取りをした期間が短期間である(なお,被告とCが就業しており,いずれも子がいた上,Cに至っては,その当時に原告と同居していたことに照らすと,直接に面会をしてのやり取りは,上記のとおりに限定的であったものと認める。)ことに加え,離婚ができたものと考え,再婚の上,懐妊を希望していたCが,既婚者であることを秘し,虚偽の情報を掲載して本件ウェブサイトに登録したとの経緯に照らすと,Cから知り合って間もない被告に対して婚姻が困難になると当然に予想される離婚が未了であるとの事情を告げたとは考え難い。

また,その当時,再婚を希望していた被告からCに対して離婚していることを確認するために,住民票の提示を求めることや,既婚者の有無を尋ねることは,極めて困難であったといえる。そして,他に被告がCに配偶者がいることを認識し,又は,認識し得たと認めるに足りる事情がうかがわれないことに照らすと,被告において,Cとの性行為に及ぶに先立ち,配偶者の存在についての故意又は過失があったと認めることはできない。

 なお,本件ウェブサイトは,仮面夫婦や別居中,又は離婚が決まった既婚者による利用を禁止しているが,独身であることを確認するための資料の提出まで求めていないことからすると,既婚者が本件ウェブサイトに登録している可能性を否定することはできない。

 しかしながら,既婚者の男性がいわゆる婚活を目的とした女性との性的な交際を求めて,既婚者であることを秘して婚活サイト等に登録するような事例は,メディアなどで紹介されることがあるものの,女性の既婚者が懐妊を目的として登録することはまれであろうし,女性が懐妊を希望することを明らかにしている場合には,その前提として,既婚者ではないことを暗黙の前提とするのが通常であろうから,男性において既婚者であることを疑わなかったとしても,そのことによって何らかの過失があったとは認め難い。

 したがって,この点についての原告の主張を採用することはできない。

(2)上記1のとおり,被告は,平成29年8月に,Cが既婚者であり,原告と離婚をしていないことを認識していたにもかかわらず,Cとの交際を継続するとともに,Cと互いを「婚約者」と呼び合い,別件家事事件においても陳述書を提出している。

 しかしながら,上記1の認定のとおり,Cは,被告に対して原告との離婚が未了であることを伝えるに先立ち,平成29年8月14日に長女を連れて原告との別居を開始し,同月24日頃には,離婚を目的とした夫婦関係調整調停事件を申し立てており,それ以前にCが提出した離婚届が不受理となったことも併せ考慮すると,遅くともこの頃までには原告とCの夫婦関係は、回復させるのが困難な状況にあったものと考えられ,原告がCに復縁を迫ったとの事情はうかがわれず,同年10月30日の面会交流後に長女をCの下に戻さず,その後,Cに対して早急に離婚届を提出するように促していることに照らし,原告がCとの復縁を期待しておらず,原告とCが別居した当時から長女の親権を巡る争いが離婚の障害となっているものであったと考えられることも併せ考慮すると,被告において同年8月末頃にCが既婚者であると認識したにもかかわらず,Cとの交際を継続したとしても,その頃までには,原告とCとの婚姻関係が既に破綻していたから,不法行為を構成するものとはいえない。

 また,被告は,別件家事事件において長女との関係が良好である旨や原告とCの離婚後にCと再婚する予定である旨の記載がある陳述書を提出しているが,上記の陳述書における記載は,その当時に被告が置かれていた状況や被告の認識を踏まえると,不合理な内容とはいえず,そのことによって別件家事事件において原告の思惑のとおりに調停や審理が進まなかったとしても,原告とCとの夫婦関係の悪化や解消に悪影響を及ぼしたものとはいえないから,被告が上記の陳述書を提出したことが,原告に対する関係で不法行為を構成するものとはいえない。

(3)Cは,被告との面会時に長女を同行していたが,長女の監護者であるCの判断によるものである。したがって,被告とCとの面会時に長女が同行していたとしても,そのことが,不法行為を構成するものとはいえない。

 また,被告は,長女と入浴をしているが,長女の監護者であるCの補助者として入浴をしたものであり,その際に長女の福祉に反する行為に及んだとの事情もうかがわれないから,被告において原告との関係で当然に不法行為を構成するものとはいえない。

 なお,原告は,原告の反対にもかかわらず,被告が長女との入浴を続けた旨の主張をするが,かかる事実を認めるに足りる証拠はなく,仮に,Cに対して入浴に反対する旨の意思を示していたとしても,その時点におけるCと原告及びCと被告の関係性に鑑みると,Cが被告に伝えたとは考え難いから,上記の認定判断を左右するものとはいえない。
 したがって,この点についての原告の主張も採用することはできない。

(3)被告は,訴訟代理人弁護士作成の平成30年10月16日付けの書面において,訴えを提起した場合には「不当提訴」であるとの表現を用いているが,上記1で認定した事実関係と上記(1)及び(2)で述べたところを踏まえると,不合理なものとはいえないし,原告がその当時に別件家事事件の関係で訴訟代理人弁護士に委任していたことに照らすと,権利の行使が困難になったともいえないから,被告において原告との関係で不法行為を構成するものとはいえない。
 したがって,この点についての原告の主張も採用することはできない。

(4)以上によれば,原告が主張する不法行為は成立しない。

第6 結論
 以上によれば,その余の点を検討するまでもなく,原告の本件請求は理由がないから,これを棄却することとし,訴訟費用の負担について民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第39部 裁判官 品川英基

以上:6,904文字

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