仙台,弁護士,小松亀一,法律事務所,宮城県,交通事故,債務整理,離婚,相続

旧TOPホーム > 男女問題 > 不倫問題 >    

ホスト夫の女性客に対する不貞行為慰謝料50万円の支払を命じた地裁判決紹介

   男女問題無料相談ご希望の方は、「男女問題相談フォーム」に記入してお申込み下さい。
令和 7年 9月10日(水):初稿
○夫原告P1と妻原告P2が、原告P1と男女関係になった被告に損害賠償請求をするとの珍しい事案を紹介します。事案は以下の通りです。

○①妻である原告P2が、被告が原告P2の夫である原告P1と不貞行為をしたと主張して、不法行為に基づく損害賠償請求として、慰謝料等50万円と遅延損害金の支払、
②原告らが、被告が原告P1に対してストーカー行為をしたと主張して、不法行為に基づく損害賠償請求として、原告P1につき引越費用、慰謝料100万円、原告P2につき慰謝料100万円と遅延損害金の支払、
③原告P1が、被告の原告P1の勤務先ホストクラブに対する売掛金を立替払したと主張して、立替金約45万円の求償請求
をそれぞれ被告に対し求めました。

○被告は、
①については、P1はホスト業で独身と信じて男女関係なったもので、且つ、原告ら夫婦は婚姻破綻状態にあった、
②については、原告P1が自らを欺いて被告との関係を継続していたことにつき説明と謝罪を求めるべく、原告P1が住んでいると思われる住居に行く旨連絡しただけでストーカー行為はしていない、
③については原告P1の45万円支払事実は認めるが被告のための支払ではない
と主張しました。

○これに対し
①について、女性との会食等の写真を見たことを契機に僅かな期間で離婚に至ったという原告P1の説明は、直ちに疑いなく信用することが相当な内容でないことなどから、原告P1が婚姻関係にないと認識していたことにつき被告に過失があり被告の原告P2に対する不法行為を認め、
②については一部ストーカー行為を認め、
③については被告のための立替支払を認め、
①被告に原告P2への不貞行為慰謝料50万円、
②原告らにストーカー行為慰謝料5万円、
③について立替金約45万円の請求をそれぞれ認めた
令和6年3月21日東京地裁判決(LEX/DB)関連部分を紹介します。

○被告は、原告P1勤務ホストクラブの客として原告夫婦が婚姻前から、原告P1と男女関係になっていたもので、不貞行為慰謝料についての結論に疑問も感じます。この分野は裁判官の裁量部分が大きく注意が必要です。

********************************************

主   文
1 被告は、原告P1に対し、46万1000円及びこれに対する令和4年12月24日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
2 被告は、原告P2に対し、60万5000円及びこれに対する令和4年12月24日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
3 原告らのその余の請求を棄却する。
4 訴訟費用は、原告P1に生じた全ての費用及び被告に生じた費用の5分の3の合計の6分の5を原告P1の負担とし、原告P2に生じた全ての費用及び被告に生じた費用の5分の2の合計の3分の2を原告P2の負担とし、その余を被告の負担とする。
5 この判決は、第1項及び第2項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求

1 被告は、原告P1に対し、270万4041円及びこれに対する令和4年12月24日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
2 被告は、原告P2に対し、165万円及びこれに対する令和4年12月24日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
 本件は、夫婦である原告らが、被告に対し、次の請求をする事案である。
〔1〕原告P2は、被告に対し、被告が原告P2の夫である原告P1と不貞行為をしたと主張して、不法行為に基づく損害賠償請求として慰謝料等合計55万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の割合による遅延損害金の支払を求める(以下「請求〔1〕」という。)。

〔2〕原告らは、被告に対し、被告が原告P1に対してストーカー行為をしたと主張して、不法行為に基づく損害賠償請求として原告P1につき引越費用、慰謝料等合計225万4041円、原告P2につき慰謝料等110万円及びこれらそれぞれに対する上記〔1〕同様の遅延損害金の支払を求める(以下「請求〔2〕」という。)。

〔3〕原告P1は、被告に対し、被告の原告P1の勤務先に対する売掛金を立替払いしたと主張して、立替金請求(当事者間の合意に基づかない不当利得返還請求等と解される。)として45万円及び上記〔1〕同様の遅延損害金の支払を求める(以下「請求〔3〕」という。)。

1 前提事実(争いのない事実、顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1)当事者
ア 原告P1と原告P2は、令和3年1月26日に婚姻した夫婦であり、令和4年8月当時、夫婦間に子が1名出生していた(弁論の全趣旨)。
イ 被告は、原告P1が勤務するホストクラブ(以下「P1勤務先」という。)の顧客である。

(2)原告P1と被告の関係
 被告は、令和2年11月頃、P1勤務先に顧客として訪れるようになり、同年末頃から肉体関係をもつようになり、令和4年8月17日までこれを継続した。

2 争点

     (中略)

第3 当裁判所の判断
1 認定事実

 前記前提事実に加え、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の各事実が認められる。
(1)本件に至るまでの経緯
ア 被告は、令和2年11月頃、P1勤務先に顧客として訪れるようになり、同年末頃から肉体関係を持つようになった(前提事実(2))。

イ 原告P1と原告P2は、令和3年1月26日、婚姻した(前提事実(1)ア)。

ウ 被告は、令和3年9月頃、原告P1名義で賃貸借契約を締結し、同原告が賃料を直接負担する住居において居住を開始し、以降、原告P1は、しばしば深夜に同住居を訪れ、少なくとも朝方まで滞在することがあった。その後、被告は、令和○年○月に原告P1との会食等の写真画像をSNS上に投稿したことを契機として一時原告P1と不仲になり、同月頃、同住居を退去した。(乙14、原告P1本人(調書2、4頁)、被告本人(調書3ないし6、27頁))。

エ 原告P1は、令和4年6月30日、原告ら新居に入居する際の清算書の交付を受け、同年7月5日に仲介手数料を支払い、同年7月15日から原告ら新居に係る賃貸借契約の契約期間が開始された(甲2、3)。

オ 原告P2は、令和○年○月○○日までに、SNS上に「家族が増えるから2LDKに引越ししたよ」とのメッセージを投稿した(乙11)。

(2)本件に関する原告P1と被告の連絡状況等
ア 被告は、令和4年7月25日、SNS上で原告P1の結婚式の一場面と思われる写真画像を確認し、原告P1が既婚であるとの疑いを持つに至ったが、その後、原告P1から、被告との交際状況を上記(1)ウの被告による投稿を見た妻が知ったため、既に離婚した旨の説明を受けた(乙4ないし7、14、被告本人(調書3頁))。

イ 被告は、令和4年7月30日、原告P1に被告の転居先について相談した。その際、原告P1は、被告に対し、被告が月額7万円を支払えば、賃料月額17万円の物件に入居できる旨告げた。(乙8の1、13)

ウ 原告P1と被告は、令和4年8月17日、肉体関係を持った(争いのない事実。以下「本件行為」という。)。

エ 原告P1は、令和4年8月20日、被告に対し、未だ離婚しておらず、離婚調停中である旨告げた(乙9の1ないし9の3、14、被告本人(調書7頁))。

オ 被告は、令和4年8月24日、原告らが引っ越し前に居住していたマンションを訪れ、承諾なくオートロックの設けられているマンション玄関内に侵入し、原告らの居室のインターホンを押した後、その居室玄関先に原告P1から贈られたネックレスを置いていった(争いのない事実)。

カ 被告は、令和4年9月4日、通信用アプリを用いて、離婚したことの証明を出すので関係を継続するよう求める原告P1に対し、同原告が独身であると被告を騙しており信用することができない旨を告げた(乙10の1ないし5)。

キ 被告は、令和4年9月5日、原告P1が事情を説明するとして予約したホテルに赴いたが、同原告が現れなかったことを受け、通信用アプリを用いて、同原告に対し、「散々待った上にこれはないだろ しねよ 許さない」と告げ、原告ら新居のマンション名(上記ホテルのチェックインの際の画面に表示されたため被告が認識したもの)を告げた上、更に原告らの子の写真画像を送信して「大切なひとを守ろうwwwwww守れないね~」「もう家知っちゃったから 全部壊していきますね」と告げた(本件言動2。甲1、6、乙14、被告本人(調書9、10頁))。

2 請求〔1〕関係
(1)争点(1)ア(原告P1の婚姻についての被告の認識(故意・過失の有無))について
 前記認定のとおり、被告は、令和4年7月25日、SNS上で原告P1の結婚式の一場面と思われる写真画像を確認していたもので、原告P1も一度の婚姻をしたことは認めていたものである。
 そして、原告P1から、その1か月ないし2か月前の被告による投稿を見た妻が被告との交際状況を知ったため、既に離婚した旨の説明を受けたもので、この説明を信じたという被告の供述を直ちに排斥することができず、本件行為の時点においてその故意を認めることはできない。

 もっとも、上記説明は、女性との会食等の写真を見たことを契機に僅かな期間で離婚に至ったというもので、直ちに疑いなく信用することが相当な内容であるということはできない上、被告は、原告P1が現に婚姻関係にあるか否かについて特段有意な調査をしたなどの事情も見当たらないものであり、仮に原告P1が婚姻関係にないと認識していたとしても、そのことにつき過失があると言わざるを得ない。このことは、それ以前から原告P1と被告が相当期間肉体関係を伴う親密な関係にあり、本件行為の前にも原告P1が被告の住居の手配について被告と協議していたとしても左右されるものではない。

 したがって、原告らの婚姻関係について被告が認識していなかったことにつき被告に過失があると認められる。

(2)争点(1)イ(原告らの婚姻関係の破たんの有無)について
 被告は、原告P1の言動や被告と半同棲状態にあったことに照らせば,原告らの婚姻関係は破たんしていた旨主張するが、自らが婚姻していないと虚偽の事実を申し向けていた被告に対する原告P1の言動から原告らの夫婦関係の状況について推認することはできないし、認定事実(1)ウ記載の生活状況を前提とすると、原告P1は午前中からホストクラブへの出勤までの時間を家庭生活に費やすことができないものとまではいえず、上記生活状況から原告らの婚姻関係が破たんしていたことを推認することもできない。

 その他、本件全証拠によっても、原告らの婚姻関係が破たんしていたと認めることはできず、本件行為が、婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害する行為であることは否定されない。 

(3)争点(1)ウ(不貞行為による損害額)について
 原告P1と被告の不貞行為の状況、これに至る経緯、不貞行為時に原告らに未成熟子のあったことその他本件に顕れた一切の事情を考慮すると、原告P2が不貞行為により被った精神的苦痛を慰謝するには、50万円をもってするのが相当である。
 また、本件事案の内容、本件訴訟の経過、上記認容額等を踏まえると、本件行為と相当因果関係のある弁護士費用としては、5万円が相当である。

3 請求〔2〕関係
(1)争点(2)ア(被告の原告P1に対するストーカー行為による不法行為の成否)について
ア 原告らは、被告が令和4年5月頃から原告らの自宅住所に行くなどの旨を述べたという内容の本件言動1をしたと主張するが、これを裏付ける的確な証拠は一切提出されておらず、上記主張を採用することはできない。

イ 本件言動2は、被告に対して独身であると虚偽の事実を申し向け、相当期間被告をして誤信した状態を継続させ、最終的に自ら説明の場を設けたにもかかわらずその場に現れなかった原告P1に相応の落ち度があるとはいえ、その内容は、被告が原告らの住所を認識しており、その子を含む原告らの家庭生活を破壊するために何らかの害悪を原告らに与えることを告知するものであって、被告がその12日前にも実際に原告らの引っ越し前の住居に断りなく来訪したことがあり、原告らにおいて被告が現実に何らかの行動をする可能性を感じたとしてもやむを得ないことも踏まえれば、故意に原告らの日常生活の平穏などの人格的利益を侵害する行為として不法行為に当たるものというべきである。

(2)争点(2)イ(ストーカー行為による損害の発生及びその額)について
ア 本件言動2の内容、態様及びこれに至る経緯(上記(1)イの原告P1の落ち度も含む。)その他本件に顕れた一切の事情を考慮すれば、本件言動2によって原告らが受けた精神的苦痛を慰謝するには、それぞれ5万円をもってするのが相当である。
 また、本件事案の内容、本件訴訟の経過、上記認容額等を踏まえると、本件行為と相当因果関係のある弁護士費用としては、各5000円が相当である。

イ 原告らは、被告の言動により引っ越しを余儀なくされたと主張してその引越費用まで損害であると主張するが、前記認定のとおり本件言動1の存在は認められない上、認定事実(1)エ及びオからすれば、原告らが原告ら新居に引っ越したのは令和4年7月15日から同月19日までの間と推認することができ(原告らの主張によっても同年8月23日である。)、この引っ越しを企図したのも同年6月30日より前のことであるから、同年9月5日の本件言動2によって原告らが引っ越しを余儀なくされたなどと認めることはできない。
 したがって、原告らの主張する引越費用は、被告の本件言動2による不法行為と因果関係のある損害であると認めることはできず、原告らの上記主張を採用することはできない。

4 請求〔3〕関係
(1)争点(3)ア(原告P1の勤務先の被告に対する売掛金の成否)について
 証拠(甲12、被告本人(調書25、26頁))によれば、P1勤務先は、被告がP1勤務先において飲食に関するサービスを受けた対価として、被告に対し、本件売掛金〔A〕を除く本件売掛金合計121万6000円(前記第2の3(6)ア(ア)参照)の売掛金債権を取得したことが認められる。そして、被告が前記第2の3(6)ア(イ)のとおり合計81万円の弁済をしたことに争いはないから、令和4年9月5日時点の本件売掛金の残高は、少なくとも40万6000円であったものと認められる。

 他方、本件売掛金〔A〕については、その一次的な証明力を有する伝票(甲12の写真〔2〕)上被告の署名がなく、被告本人も当法廷で本件売掛金〔A〕に係るサービスの提供を受けたか分からない旨供述しており(調書25頁)、上記伝票を基に作成したとみられるP1勤務先のシステム上の記録(甲9)その他の証拠によっても被告が同サービスの提供を受けたものと認めることはできない。したがって、P1勤務先が被告に対して本件売掛金〔A〕4万4500円の売掛金債権を取得したものと認めることはできない。

(2)争点(3)イ(原告P1が売掛金45万円を立替払いしたか否か。)について
 被告は、P1勤務先から本件売掛金の残高について請求を受けなかったこと、原告P1がP1勤務先に対して45万円を支払ったことをいずれも認めているところ、前記(1)のとおり本件売掛金の残高が存していたと認められる以上、その支払の請求をP1勤務先から受けなかったことは、被告以外の者が支払ったことを示す事情ということができる。そして、令和4年9月5日にP1勤務先において本件売掛金の残高として認識されていたとみられる45万0500円と1000円未満の端数の点を除いて概ね同じ額の支払が原告P1によってされており、他に被告に替わって本件売掛金の残高を支払うべき者も見当たらない以上、同残高(ただし、前記(1)で認められる限度の40万6000円)は原告P1が被告に替わって支払ったものと認めるのが相当である。

5 小括
 したがって、請求〔1〕について、原告P2は、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償請求として、55万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求めることができる。
 また、請求〔2〕について、原告らは、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償請求として、5万5000円及びこれに対する請求〔1〕と同様の遅延損害金の支払を求めることができる。
 さらに、請求〔3〕について、原告P1は、被告に対し、立替金請求(不当利得返還請求等と解される。)として、40万6000円及びこれに対する請求〔1〕と同様の遅延損害金の支払を求めることができる。


6 よって、原告の請求は、主文の限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第6部 裁判官 武見敬太郎
以上:6,976文字

タイトル
お名前
email
ご感想
ご確認 上記内容で送信する(要チェック

(注)このフォームはホームページ感想用です。
男女問題無料相談ご希望の方は、「男女問題相談フォーム」に記入してお申込み下さい。


 


旧TOPホーム > 男女問題 > 不倫問題 > ホスト夫の女性客に対する不貞行為慰謝料50万円の支払を命じた地裁判決紹介