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20数年ぶりに日照権被害の損害賠償請求相談を受けての復習2

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平成28年 6月26日(日):初稿
○「20数年ぶりに日照権被害の損害賠償請求相談を受けての復習」の続きで、昭和47年6月27日最高裁判決(判タ278号110頁、判時669号26頁)の説明です。
この判決の第一審は昭和40年12月24日東京地裁判決(判タ187号118頁、判時433号18頁)で請求を棄却し、第二審は昭和42年10月26日東京高裁(判タ211号218頁、判時497号25頁)で100万円の請求に対し20万円を認容していました。

○東京高裁判決に不服の被告が上告したところ昭和47年6月27日最高裁判決は、居宅の日照、通風は、快適で健康な生活に必要な生活利益であつて、法的な保護の対象にならないものではなく、南側隣家の二階増築が、北側居宅の日照、通風を妨げた場合において、この増築が、建築基準法に違反するばかりでなく、東京都知事の工事施行停止命令などを無視して強行されたものであり、他方、被害者においては、住宅地域内にありながら、日照、通風をいちじるしく妨げられ、その受けた損害が、社会生活上一般的に忍容するのを相当とする程度を越えるものであるなど判示の事情があるときは、この二階増築の行為は、社会観念上妥当な権利行使としての範囲を逸脱し、不法行為の責任を生ずるとして二審判決を維持し上告を棄却しました。

○この事件は、平成28年からは50年以上前の昭和40年に一審判決が出ましたが、当時、いわゆる日照権訴訟として、第1、2審判決とも世間の注目を集め、最高裁の判断が注目されていたものでした。
事案概要は以下の通りです。
・原告(控訴人・被上告人)と被告(被控訴人・上告人)は、昭和32年8月ころ、相前後して東京都世田谷区砧町所在の隣接する建売住宅(いずれも宅地約32坪、建坪約11坪)を買い受けて居住
・南側の被告が昭和33年春ころ、浴室兼台所を増築し、次いで、昭和35年10月上旬ころから同36年中にかけて、二階居室と玄関などを増築
・被告の二回にわたる増築工事のうちで、浴室兼台所や玄関などの増築は、それらの位置からみて、原告方への日照通風には格別の影響を及ぼしていないが、二階増築部分は、原告家屋および敷地への日照をいちじるしくさえぎるようになり、季節により幾分の変動はあるにせよ、朝夕の1時間を除いては、日照がおおむね遮断されるに至つたほか、通風も悪くなり、生活条件が悪化し、原告家族は健康を害するに至つたため、原告は、やむなく、昭和39年1月に右宅地家屋を不利な価格で第三者に売却して他に転居
・被告の宅地家屋所在地は住宅地域に属し、当時、第二種空地地区に指定されていたから、建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合は30パーセント以下でなければならなかつたが、被告の2回にわたる増築で家屋の延べ面積の敷地面積に対する割合は68パーセントに達した
・そこで、原告は、被告の増築は建築基準法56条3項に違反しているのみならず、二階増築工事は、同法6条に定める建築確認手続を経ないでおこなつた、いわゆる無届建築であり、都知事の発した工事施行停止命令、違反建築除去命令をいずれも無視して強行されたもので、二階増築による原告方への日照通風妨害を原因とする不法行為に基づき、宅地家屋の値下り、慰藉料として100万円の支払を求めて提訴


○第一審東京地裁は、建物の増築が建築基準法に違反しても、そのことから直ちにこの増築の結果、日照通風を妨げられた者に対する建築主の私法上の損害賠償責任を生ずるものではなく、隣家の二階建築の結果、自宅の日照を甚しく妨げられるに至つても、この増築がその規模、意図等からみて道徳的非難に値するようなものでなく、自宅の住居としての価値の大半が失われたといえない等の事情の下では、この障害は相隣者として受忍すべき範囲に属する、と判示して、原告の請求を棄却しました。

○第二審東京高裁は、住宅の日照通風は、快適で健康な生活の享受のために必要な生活利益として法的保護に値するものであり、二階増築により隣家に対する日照通風を阻害した場合において、それが建築基準法に違反し、かつ住宅地域内であるなど判示の事情のもとでは、社会通念上受忍限度をこえた違法な生活妨害として、不法行為責任を生ぜしめる、と判示して、原告の請求中、20万円の限度で慰藉料を認容しました。

○最高裁判決は、上記のとおり妨害者たる隣人について不法行為責任を認め、第二審判決を維持しましたたが、最高裁が日照通風の問題を正面から取扱つた判決としては、はじめてのものでした。本判決は「居宅の日照、通風は、快適で健康な生活に必要な生活利益であり、それが他人の土地の上方空間を横切つてもたらされるものであつても、法的な保護の対象にならないものではなく」ただ「日照、通風の妨害は、従来与えられていた日光や風を妨害者の土地利用の結果さえぎつたという消極的な性質のものであるから、騒音、煤煙、臭気等の放散、流入による積極的な生活妨害とはその性質を異にするものである」けれども、「土地の利用権者がその利用地に建物を建築してみずから日照、通風を享受する反面において、従来、隣人が享受していた日照、通風をさえぎるものであつて、土地利用権の行使が隣人に生活妨害を与える点においては、騒音の放散等と大差がなく、被害者の保護に差異を認める理由はない」として、積極的生活妨害と消極的生活妨害とを区別する理由のないことを強調しています。
以上:2,214文字

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