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動産競落にも民法第192条即時取得適用を認めた最高裁判決紹介

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平成30年 3月 9日(金):初稿
○執行債務者の所有に属さない動産が強制競売に付された場合であつても、競落人は、民法第192条によつて右動産の所有権を取得することができること、即ち、動産の競落にも民法192条即時取得が適用されることを初めて正面から認めた昭和42年5月30日最高裁判決(判時486号39頁、判タ208号109頁)全文を紹介します。

○換価手続としての強制競売の性質については、国家が目的物を徴収して競落人に売却する公用徴収類似の公法上の処分とする見解と、執行機関が債務者の意思に反して目的物の所有権を移転させる点において公法上の処分であるが、同時に、処分の効果の帰属する債務者と競落人との関係は、私法上の売買であつて、競落人は、債務者から目的物の所有権を承継取得する関係にあるとする見解があり、後者が通説・判例とされています。

○後者の見解によれば、強制競売の私法上の売買の性質から当然民法第192条即時取得も適用になりますが、昭和42年5月30日最高裁判決は、後者の見解で動産の強制競売について民法192条が適用されることを正面から判示した初めての最高裁判決です。

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主   文
原判決中被上告人Aの原判決添付の別紙第一目録記載の(8)の物件に対する請求を認容した部分を破棄する。
原判決中被上告人Bの請求を認容した部分を破棄する。
前二項の部分について本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。
原判決中その余の部分に対する上告人の上告を棄却する。
前項の部分に関する上告費用は上告人の負担とする。

理   由
上告人の上告理由第一点および第二点について。

 上告人が、第一審以来被上告人Aの請求に対する抗弁として、原判決添付の別紙第一目録記載の(8)の物件は、同被上告人の所有であつたとしても、訴外Cが昭和32年11月競落によつてその所有権を即時取得した旨を主張していたにもかかわらず、原判決が右抗弁についてなんらの判断をもしないで、右物件に対する同被上告人の請求を認容したことは、所論のとおりである。

 また、上告人が、第一審以来被上告人Bの請求に対する抗弁として、原判決添付の別紙第二目録記載の物件は、同被上告人の所有であつたとしても、訴外Cが昭和32年11月競落によつてその所有権を即時取得した旨を主張していたところ、原判決は、右物件は、同被上告人の所有に属していたが、訴外Dの所有であるとして強制競売に付され、訴外Cが競落した事実を認定しながら、右訴外Cは民法192条によつて右物件の所有権を取得することはあり得ないと判示して、上告人の右即時取得の抗弁を排斥した。

 しかしながら、執行債務者の所有に属さない動産が強制競売に付された場合であつても、競落人は、民法192条の要件を具備するときは、同条によつて右動産の所有権を取得できるものと解すべきである。したがつて、前記第一目録記載の(8)の物件については、所論のように訴外平野正が競落したのであれば、同人は同条によつてその所有権を取得することがあり得るし、また、前記第二目録記載の物件についても、訴外Cは同条によつてその所有権を取得することがあり得る筋合であるから、上告人の前叙の各抗弁は、いずれも採用される余地のあるものである。

 されば、原判決は、被上告人Aの請求に対する上告人の前叙の抗弁については、判断遺脱の違法があり、また、被上告人Bの請求に対する上告人の前叙の抗弁については、民法192条の解釈を誤つた違法がある。よつて、原判決中右抗弁にかかわる物件に対する請求を認容した部分は破棄を免れない。そして、右破棄部分については、右抗弁が採用できるかどうかについてさらに審理を尽させる必要があるので、本件を原審に差し戻すのを相当とする。

同第三点について。
 かりに、被上告人Aと訴外Dとの関係が所論のとおりであるとしても、それがため、右訴外人に対する債務名義をもつて同被上告人所有の物件に対する強制執行が許されるものではなく、右に反する論旨は、独自の見解であつて、採るを得ない。
 以上の次第で、原判決中、被上告人Aの前記第一目録記載の(8)の物件に対する請求を認容した部分および被上告人Bの請求を認容した部分を破棄して、これを原審に差し戻すが、その余の部分に対する上告を棄却することとし、民訴法407条1項、396条、384条1項、95条、89条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(横田正俊 柏原語六 田中二郎 下村三郎 松本正雄)

以上:1,865文字

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