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職場におけるパワーハラスメントの定義についての基礎の基礎覚書1

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令和 1年12月20日(金):初稿
○「上司の言動をパワハラと認定して慰謝料100万円認めた地裁判例紹介」の続きです。
ここで紹介した平成24年4月19日岡山地裁判決関連部分(労働判例ジャーナル6号1頁)では、上司の部下に対する度重なる注意や叱責について、訴えられた3人の上司の内1人Cついてのみ「本件で行われたような叱責は,健常者であっても精神的にかなりの負担を負うものであるところ,脊髄空洞症による療養復帰直後であり,かつ,同症状の後遺症等が存する原告Xにとっては,さらに精神的に厳しいものであったと考えられること,それについて被告Cが全くの無配慮であったことに照らすと,上記原告自身の問題を踏まえても,被告Cの行為はパワーハラスメントに該当するといえる。」とパワハラが認定されました。

○しかし、この判例を紹介・解説している「わかりやすいパワーハラスメント新・裁判例集」の322頁には、その控訴審平成24年11月1日広島高裁岡山支部判決(公刊物、未掲載)では、「Cは、Xの仕事上のミス等に不満を持ち、たびたび注意や叱責を繰り返しており、その中には、大声になることや、(他人と比較して)誰々以下だと言うことなど、指導や叱責としても穏当を欠く発言がなされたり、やや強い口調になることもあったと認められるが、いずれもXの具体的なミスに対してされたものであって、注意や叱責が長時間にわたったわけではなく、口調も常に強いものであったとは言えない」と認定し、Cに対する請求も棄却されたと説明されています。

○「上司の言動をパワハラと認定せず会社の責任を否定した地裁判例紹介」の判例では、パワハラの定義を「同じ職場で働く者に対して,職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に,業務の適正な範囲を超えて,精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」として、まず①職場内の優位性を背景、②業務の適正な範囲を超えて、行うことがポイントです。

○「職場内の優位性」とは、「職務上の地位」に限らず、人間関係・専門知識・経験等様々な優位性を含むとされ、具体的には以下のような例があると説明されています。
・職務上の地位が上位の者による行為
・同僚または部下による行為で、当該行為を行う者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、当該者の協力がなければ業務の円滑な遂行が困難である場合
・同僚または部下からの集団による行為で、これに抵抗または拒絶をすることが困難であるもの


○「業務の適正な範囲を越えて」とは、「社会通念に照らし、当該行為が明らかに業務上の必要性がない、またはその態様が相当ではないもの」と説明されており、具体的には以下のような行為とされています。
・業務上明らかに必要性のない行為
・業務の目的を大きく逸脱した行為
・業務を遂行するための手段として不適当な行為
・当該行為の回数、行為者の数等、その態様や手段が社会通念に照らして許容せざる範囲を超えるもの


○以上の基準がありますが、その説明は抽象的であり、特に「業務の適正な範囲」については、具体的事件での適用にあたっては、その判定はなかなか難しいと思われます。注意・指導についての言動は、与える方と受ける方の意識に相当なかい離があり、与える方は大したことを言っていないと思っても、受ける方は極めて重大に感じ、言われた方は「こんな酷いことを言われた」、言った方は「そんな言い方はしていない」と、その程度については双方の水掛け論になります。いずれにしても注意・指導を与える立場の人間は、より慎重になるべきでしょう。
以上:1,453文字

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