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名の変更申立を却下した家裁審判紹介-名の変更許可要件は厳しい

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令和 8年 1月28日(水):初稿
○40年近く前に以下の戸籍法107条の2に基づく名の変更許可申立をして認められたことがあります。幼児時代に養子縁組した子について、養子縁組後、実親が名付けた名前Aを使わず、Bという名前で通し、5年以上経過し小学3年生になった時に、名前の長年使用等を理由に名の変更許可申立をして、認められました。氏の変更は比較的認められやすいのですが、名の変更はなかなか認められません。
戸籍法第107条の2
 正当な事由によつて名を変更しようとする者は、名及び名の振り仮名を変更することについて家庭裁判所の許可を得て、その許可を得た名及び名の振り仮名を届け出なければならない。


○この「正当な事由」とは、名の変更をしないとその人の社会生活において著しい支障を来す場合をいうものと解され、認定要件は大変厳しいものです。

○申立人は、重篤なPTSD及びうつ病により複数の自殺未遂をしてきたところ、戸籍上の名である「a」の名を使用し続ければ、申立人の精神的健康、治療からの回復、生命に対する重大かつ継続的な脅威となり、申立人の治療を妨げ、その社会生活に重大な支障を生じさせるのであり、単なる不便や主観的な不快感の問題にとどまらないとして、名の変更許可を申し立てました。

○これに対し、申立人が、うつ病と診断されたこと、申立人が両親の言動に苦痛や不満を長年抱いていたことを医師に伝えていることは認められるものの、それらは主観的なものにとどまり、戸籍名を使用することで社会生活において著しい支障を来すことを裏付ける的確な資料は提出されていないから、戸籍法上の名を変更すべき事情としての客観的合理性・妥当性は認め難く、また、申立人は、b(▽▽▽)という通称名を使用していると主張し、これを裏付ける資料も提出するが、その資料によっても、いまだ相当期間にわたって「b」(▽▽▽)という通称名が広く社会一般に通用しているとまでは認められないから、申立人の名を「a」(▽▽▽)から、「b」(▽▽▽)に変更することについては、戸籍法107条の2に定める正当な事由があるとは認められないとして、本件申立てを却下した令和7年10月20日東京家裁立川支部審判(LEX/DB)全文を紹介します。

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主   文
1 本件申立てを却下する。
2 手続費用は申立人の負担とする。

理   由
第1 申立ての趣旨及び理由の要旨
1 申立ての趣旨

 申立人の名「a」(▽▽▽)を「b」(▽▽▽)と変更することの許可を求める。

2 申立ての理由の要旨
 申立人は、重篤なPTSD及びうつ病により複数の自殺未遂をしてきたところ、戸籍上の名である「a」の名を使用し続ければ、申立人の精神的健康、治療からの回復、生命に対する重大かつ継続的な脅威となり、申立人の治療を妨げ、その社会生活に重大な支障を生じさせるのであり、単なる不便や主観的な不快感の問題にとどまらない。
 よって、名の変更許可を申し立てる。

第2 当裁判所の判断
1 本件記録によれば、以下の事実が認められる。
(1)申立人は、平成11年△△月△△日にcとd(以下、それぞれ「父」、「母」という。)との間の長男として出生し、名を「a」【名の振り仮名】▽▽▽)と届け出られた。

(2)申立人は、令和6年2月10日、医師の診察を受け、問診票には、主訴を「何事にもやる気が起きなく、ご飯をたべること・入浴・歯磨きなどが億劫になっている。」、発症時期を「6か月くらい前から」、思い当たる原因を「幼少期からの両親からの精神的虐待」と記入した(甲3の1)。申立人は、同月14日、「気分の落ち込み、意欲低下、思考制止症状、自殺企図、さらには幼少期からの精神的ハラスメントによりそういった症状が生じている」として、PTSD、二次性うつ病を傷病名と医師に診断され(甲1の1)、同年8月5日には、うつ病であると医師に診断された(甲1の2)。

(3)e医療センター精神神経科担当医師fによる令和6年8月13日作成の診療情報提供書には、申立人の現病歴として、「幼少期より2歳下の妹と比べられることが多く、「優秀な妹」は好きな物を何でも買い与えられたが、本人はおこづかい制で欲しいものはお金を貯めて買うしか無かった。(中略)学校で作った美術の作品を持って帰ってきても、両親から「うわ、ゴミ持ってきたよ」と言われ、ゴミ箱に捨てられたり、学校での問題があると両親いずれからも激しく罵られ、物を投げられたりしたことがあった。」、「法学部入学を目指して予備校に通ったが、(中略)その過程で両親から「勉強もしないで引きこもっていて、お前には生きている価値なんかない」と言われることもあった。」、「2023年の夏に法科大学院の受験ラッシュがあり、複数校受験したものの全て落ちてしまい、両親から「お前なんかが弁護士になれるわけない。予備校時代も全然勉強しなかったのに、受かるわけないだろ」と否定的な言葉を言われたことで、法科大学院受験の意欲を一気に失ってしまった。好きだった料理も段々と出来なくなり自炊をしなくなり、昼夜逆転、抑うつ気分、意欲低下、食欲低下、情動不安定(突然泣き出す)、全身倦怠感等が出現するようになり、趣味の好きだったアイドルの音楽や料理もする気にならなくなった。」との記載がある。

 外来経過には、「背景に、法科大学院を失敗した事による反応性の抑うつの要素もあると考え、御本人には少しずつ行動を増やしていくことが抑うつの改善に重要であることを外来で説明しております。」と記載されている。また、【まとめ】の○家庭の項目には、「(今までは)親からのハラスメントに悩まされてきたが、これからは、一人の人間として強く生きたい。(もし母が)改心して、精神的ハラスメントをしないと宣言してくれるなら1度くらい会ってみても良いと思う。(もし私の父が)私の意見に耳を傾けてくれていたら、今でも信用関係が続いていたことだろう。」との記載がある。

(4)申立人は、令和6年8月6日、申立人の名aをbと変更することを求める旨の名の変更許可の申立てをしたが(当支部令和6年(家)第2061号)、同年9月27日、申立ては却下され、これに対する申立人の抗告(東京高等裁判所令和6年(ラ)第2506号)も、同年12月3日に棄却され(甲2の3)、これに対する申立人の特別抗告(最高裁判所令和7年(ク)第97号)も、令和7年3月12日に棄却された(甲2の4)。

(5)株式会社g作成の「電気ご使用量のお知らせ」と題する書面の宛先として,令和6年9月30日締切分から「b様」と印刷されている(甲6の2)ほか、令和6年9月20日以降の領収書の宛名が「b様」と記載されている(甲6の7)。

(6)父及び母は、令和6年12月12日頃、申立人に対し、これまでの4年8か月の間、アパートの賃料、生活費、大学の授業料等を仕送りしてきたこと、予備校、運転免許取得及びロースクール受験の費用等の要望に対しても、少しでも自立に向かえばと思い、認める形で支援してきたことを述べるともに、「今月の12月20日を最後に以降の貴方への仕送りを停止することを通告します。」などと記載した「仕送りの停止通告」と題する書面を送付した(甲4の2)。申立人は、父及び母に対し、支払督促の申立て(木更津簡易裁判所令和6年(ロ)第451号)をし、同人らは、令和6年12月23日、督促異議の申立てをした(甲4の3)。 

2 戸籍法107条の2は、名の変更につき「正当な事由」を必要としているところ、その趣旨は、名は、氏とともに人の同一性を表す呼称であることから、みだりに変更することを許さず、客観的に合理性・妥当性があると認められる場合に限って許可することとしたものであると解され、「正当な事由」とは、名の変更をしないとその人の社会生活において著しい支障を来す場合をいうものと解される。

 申立人は、その心的外傷後ストレス障害及びうつ病の症状が、申立人の両親、特に父による長年にわたる精神的虐待の直接的な結果として発症したものであり、申立人の現在の戸籍名「a」は、心的外傷後ストレス障害及びうつ病の症状を誘発・悪化させる直接的かつ持続的な原因となっているとして、「a」を使用することの不都合を主張する。

しかし、前記認定事実によれば、申立人が、うつ病と診断されたこと、申立人が両親の言動に苦痛や不満を長年抱いていたことを医師に伝えていることは認められるものの、それらは主観的なものにとどまり、戸籍名を使用することで社会生活において著しい支障を来すことを裏付ける的確な資料は提出されていないから、戸籍法上の名を変更すべき事情としての客観的合理性・妥当性は認め難い。また、申立人は、b(▽▽▽)という通称名を使用していると主張し、これを裏付ける資料も提出するが、その資料によっても、いまだ相当期間にわたって「b」(▽▽▽)という通称名が広く社会一般に通用しているとまでは認められない。

 以上によれば、申立人の名を「a」(▽▽▽)から、「b」(▽▽▽)に変更することについては、戸籍法107条の2に定める正当な事由があるとは認められない。

3 よって、本件申立ては理由がないから、主文のとおり審判する。
令和7年10月20日
東京家庭裁判所立川支部
裁判官 小林愛子
以上:3,840文字

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