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自賠責後遺障害非該当を14級後遺障害認定地裁判決紹介2

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令和 7年 6月13日(金):初稿
○原告が、被告に対し、信号待ちのために停車していた原告が乗車する車両に、後方から進行してきた被告の運転する車両が追突した交通事故が発生し、これにより原告が傷害を負ったと主張し、自賠責後遺障害認定は非該当のところ、頸椎椎間板ヘルニアの傷害を理由に後遺障害等級12級に該当するとして民法709条又は自動車損害賠償保障法3条本文に基づき、約1099万円の損害賠償を求めました。


○これに対し、頸椎椎間板ヘルニアが判明したのは本件交通事故から5か月余りが経過した後ではあるものの、上記の受傷をするに至った原因について、本件交通事故のほかに同部分に衝撃が加わる出来事があったとはうかがわれず、また、本件交通事故以前から頸椎に同傷病が存し、頸部の痛み等の症状があったともうかがわれないことを踏まえると、原告の頸椎椎間板ヘルニアについては、本件交通事故により生じたものと推認するのが相当であるなどとして後遺障害等級第14級を認定した令和6年1月30日千葉地裁判決(交通事故民事裁判例集57巻1号148頁)関連部分を紹介します。

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主   文
1 被告は、原告に対し、331万7465円及びこれに対する令和3年9月30日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は、これを10分し、その3を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。
4 この判決は、第1項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求

 被告は、原告に対し、1098万8833円及びこれに対する令和3年9月30日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要等
 本件は、原告が、被告に対し、原告が乗車する車両に被告の運転する車両が追突した交通事故が発生し、これにより原告が傷害を負ったと主張して、民法709条又は自動車損害賠償保障法(自賠法)3条本文に基づき、損害賠償金合計1098万8833円及びこれに対する交通事故の日である令和3年9月30日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を請求する事案である。

1 前提事実等(当事者間に争いのない事実、又は書証により容易に認定することができる事実)

     (中略)

第3 当裁判所の判断
1 前記第2の1のほか、後掲の証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実
(1)本件交通事故の態様

     (中略)

(5)原告の後遺障害の事前認定の結果等
 原告は、被告車両に付されていた自賠責保険会社に対し、原告の後遺障害に係る事前認定の手続を求めたが、同年7月27日頃、被告車両に付されていた保険会社(E保険会社)の担当者から、非該当と判断された旨連絡を受けた(甲7の1)。原告は、同認定について異議申立てをしたが、同年12月5日頃、同担当者から、再度非該当と判断された旨連絡を受けた。

     (中略)

4 後遺障害逸失利益について
(1)本件交通事故と頸椎椎間板ヘルニアとの間の因果関係の存否について
 前記1(3)アのとおり、原告は令和4年2月8日、頸椎単純MRIの検査を受け、C4
5-6/7の椎間板ヘルニアとの診断を受けている。また、前記1(1)のとおり、本件交通事故の結果、原告車両のバンパの奥にあるボデーロワバックパネルの変形が生じその板金修理を要するような損傷が生じたものであり、本件交通事故により相応の衝撃が加わったと推認され、現に、原告は、本件交通事故の後、頸部に痛みを感じ、臨場した救急隊員に対しその痛みを訴えていたものである。このような本件交通事故の態様及び原告の本件交通事故直後の言動は、原告の椎間板ヘルニアの受傷と整合するものといえる。

 この点について、被告は、原告がA整形外科を受診したのは本件交通事故の6日後であり、原告の傷害が自制できる範囲にとどまるものであった旨の主張をする。この点について原告は、自らの勤務先の病院について、本件交通事故の当時は繁忙であり代替要員もいなかったため、ロキソニンを自ら摂取して出勤し、勤務先の休日に上記医療機関を受診した旨供述しており、この点も併せ考慮すると原告の受診が本件交通事故の6日後であることから直ちに原告の受傷が軽いものであったとはいえない。また、被告は、本件交通事故の態様について、停車している原告車両の後ろに一旦停止したもののその後にいわゆるクリープ現象により被告車両が前進して原告車両に衝突した、衝突時の被告車両の速度は時速約4キロメートルであった旨の供述をするが、前記1(1)のとおり本件交通事故により原告車両に軽微でない損傷が生じていること等に照らし、採用し難い。

 そして、確かに、頸椎椎間板ヘルニアが判明したのは本件交通事故から5か月余りが経過した後ではあるものの、上記の受傷をするに至った原因について、本件交通事故のほかに同部分に衝撃が加わる出来事があったとはうかがわれず、また、本件交通事故以前から頸椎に同傷病が存し、頸部の痛み等の症状があったともうかがわれない。以上を踏まえると、原告の頸椎椎間板ヘルニアについては、本件交通事故により生じたものと推認するのが相当である。

 これに対し、本件交通事故後、任意保険会社の事前認定申請を受けた自賠責保険会社は、原告の申請する後遺障害について非該当との判断をし、原告の異議申立てについて、頸部画像の変性所見について外傷に伴う変化とは捉えられないとの指摘をしているが、同指摘を踏まえても、前記記載の各事情を踏まえると上記の推認は左右されない。

(2)後遺障害の存否及びその程度
ア 原告は、本件交通事故により、原告には別表第二第12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」に該当する後遺傷害が生じた旨主張する。確かに、前記1のとおり本件交通事故により原告のC4
5~6/7に椎間板ヘルニア等が存するものといえ、原告の訴える頸部の痛みの症状は、上記の所見と一応整合するものとはいえる。しかし、本件訴訟に先立ち、自賠責保険会社は事前認定の判断に際し、外傷性の異常所見又は脊髄及び神経根への圧迫所見は認められないとの評価をしており、この認定を覆すに足る証拠はない。

また、原告を診察した丁山医師は、後遺障害診断書上に明らかな神経学的異常所見は見られないとの記載をしており、その他、原告の頸部の痛みについて他覚的に神経系統の障害が証明されると認めるに足りる証拠はない。よって、本件交通事故により、原告に自賠法施行令別表第二第12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」に該当する後遺障害が生じたものとまでは認めるに足りない。原告は、上記の後遺障害が生じた旨の丁野竹男医師作成の意見書(甲8)を提出するが、その意見書の内容を踏まえても上記の評価を左右するものとはいえない。

イ 他方、前記のとおり原告に生じた椎間板ヘルニア等の傷病は、原告が訴える頸部の痛みの症状と一応整合するものである上、書証(甲18)及び原告の本人供述によれば、同症状は、本件交通事故後の通院によっても消失せずに遷延しているものと認められる。

この点につき、被告は、丁山医師作成の診療録に「症状はon&off」「夜間痛」との記載があること等から継続する痛み(常時痛)を伴っていたものとはいえない旨主張するが、同医師の診療録の記載は多義的であり常時痛の存在を直接否定するものとはいえない上、前記(1)のとおり原告が本件交通事故により頸椎椎間板ヘルニアの傷害を負っていることにも照らすと、丁山医師の上記の診療録の記載から、後遺障害の存在を否定するほどの常時痛が存しなかったとは言い難いというべきである。(なお、原告は、上肢のしびれの症状についても主張するが、原告が同症状をA整形外科に申告した時期が令和4年2月16日であり本件交通事故から相当期間経過していたことを考慮すると、同症状について本件事故によるものとは認めるに足りない。)

 以上を踏まえると、原告の頸部の痛みについては、本件交通事故により発症し、その後その症状が一貫しており、単なる故意の誇張ではないと医学的に推定されるものと認められ、自賠法施行令別表第二第14級9号「局部に神経症状を残すもの」に該当する後遺傷害が存するものといえる。これに反する被告の主張は採用することができない。

     (中略)

7 文書作成費について
 前記4(2)のとおり、原告は本件交通事故により、頸椎捻挫、腰椎捻挫及び頸椎椎間板ヘルニアの傷害を負い、別表第二第14級第9号に該当する後遺障害を負ったものと認められることからすると、原告の診療録の取得費用(2680円、甲12)及び後遺障害慰謝料の取得費用(1万1000円、甲13)については、本件交通事故と相当因果関係の範囲にある損害と認められる。

 他方、証拠(甲7の2、8、14)によれば原告は、自賠責保険会社に対して事前認定結果に係る異議申立てを行う前に、F株式会社に対して原告の後遺障害に関する意見書の作成を依頼し、同社の査定をする医師作成の令和4年10月3日付意見書を受領し、これを上記異議申立て手続に提出したこと、また原告が同社に対しカルテ精査及び意見書作成費用として合計33万円(税込み)を支払ったことが認められ、同意見書を本件訴訟手続において証拠として提出していることは当裁判所に顕著である。しかし、一般に自己の主張等を理由づけるための証拠の収集は当事者の責任及び費用で行われるものである上、本件で争われている障害の内容及び意見書の内容を踏まえると、上記の意見書作成費用が、本件交通事故と相当因果関係の範囲内にあるとは認められない。

8 総損害額
 以上の検討によれば、原告に生じた総損害の額は、46万7230円+8460円+105万4148円+97万円÷110万円÷1万3680円=361万3518円となる。

9 既払金の控除及び弁護士費用
 上記8の金額から、原告が受領した既払い金の額59万7640円を控除した残額は301万5878円となる。
 そして、前記1(5)のとおり、原告は原告代理人に依頼して、本件訴訟に至る前に事前認定の手続を申請したが、後遺障害について非該当との判断を受け、本件訴訟の提起を余儀なくされたものといえ、本件交通事故と相当因果関係の範囲内にある弁護士費用として30万1587円を認める。よって、原告が被告に対して不法行為に基づく損害賠償として請求することのできる額は、331万7465円というべきである。
 なお、原告は、選択的に、自賠法3条に基づく損害賠償請求もしているが、同条に基づき認容すべき額は、法行為に基づく損害賠償の額と同額であるから、更なる検討を要しない。

10 結論
 よって、主文のとおり判決する。なお、仮執行免脱宣言は相当でないからこれを付さないこととする。
裁判官 宮崎陽介
以上:4,469文字

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