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信用保証協会対連帯保証人請求を権利濫用として棄却した地裁判決解説

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令和 2年 6月 9日(火):初稿
○「信用保証協会対連帯保証人請求を権利濫用として棄却した地裁判決紹介」の続きで、その内容解説です。
事案概要は以下の通りです。
・原告保証協会が、訴外A社が、信用金庫と銀行から借入に当たり、被告Y1・Y2と保証委託契約締結
・A社は、信用金庫・銀行から借入後、支払停止し、金融機関に代位弁済し、A社は原告に対し求償債務負担
・被告らが、本件求償債務につきAのために連帯保証をしていたことから、原告が被告らに連帯保証債務の支払を求めた事案
・A社は、自己破産決定を受け、原告が求償金債権について債権届・配当を受け破産手続は平成3年2月12日終結
・原告は、破産手続終結平成3年2月12日から5年以内の平成8年2月5日訴え提起
・Y2は、原告が破産手続で最後の弁済を受けたのが平成2年11月27日なので5年経過の平成7年11月27日消滅時効成立と主張
・原告は時効中断効は破産手続終結の平成3年2月12日まで継続するので消滅時効不成立と主張
・Y2は、本件求償債務については、請求を受けず最早免責されたものと考えて生活し、原告が代位弁済から10年以上に渡り、法的手続を取らず放置しておきながら、現在に至って訴えを起こすのは権利濫用と主張
・原告は、本件訴え提起まで、平成4年5月、平成7年11月残高通知を送付しており、請求を放置していないと主張


○原告保証協会が、Y1・Y2に支払を求めた金額は1億0176万6162円(元金5528万7912円)という高額でしたが、Y1は認め、Y2は、消滅時効成立と権利濫用を強く主張し争いました。争点はY2の原告に対する消滅時効及び権利濫用の成立の有無でした。

○先ず消滅時効ですが、主たる債務者が破産した場合、破産債権届により消滅時効が中断しますが、その消滅時効中断効の終期についてY2は、最後の配当時の平成2年11月27日とし、訴え提起が5年を経過した平成8年2月なので消滅時効が成立すると主張しました。原告保証協会は、破産債権届での消滅時効中断効終期は、破産手続終結時平成3年2月12日なので、訴え提起平成8年2月5日は5年経過まで7日間あり、消滅時効は訴え提起による中断すると主張しました。

○消滅時効について、判決は、最高裁平成7年3月23日第一小法廷判決を引用して「破産者に対して取得する求償権の消滅時効は、右求償権の全部について、右届出名義の変更のときから破産手続の終了に至るまで中断すると解するのが相当である」として消滅時効は完成していないとしました。

○権利濫用については、
破綻の原因を作った主債務者には、免責などにより更生の機会を与えられながら、連帯保証人は、なお何時までも求償債務につき法的責任を負い、債権額によっては、何時でも破産の危険を負担しなければならないという不合理なことも発生する
近時、消費者破産において、破産者の生活の更生のため免責制度が利用されていることにも鑑みると、主債務者が経済的に破綻したことが明らかになった破産宣告や代位弁済から、5年以上も経過しながら、何らの具体的法的手段を取らず放置しておくことは、職務の怠慢というしかない。
本訴提起の平成8年2月5日まで法的手段を取らず、いつでも破産に追い込める状態に置いておくことは、被告Y2にとって、甚だしく苛酷な状態であるものと考えることができる。
等の理由を挙げて
Aに対する破産手続の関係で、被告Y2の本件求償債務に対する連帯保証債務につき時効が成立したと直ちに解されないとしても、なお被告Y2に対する本件求償債務の請求は、権利の濫用として許されないものというべきである。
と結論付けました。
極めて妥当な判決と思われます。

○判例タイムズ解説は、「本判決は、主債務者の破産手続により求償権行使についても消滅時効が中断することを認めつつ、長時間、連帯保証人に対して権利行使をしなかった求償債権者について権利濫用を認定したものであり、信用保証期間に対し何らかの対策を迫るものであるといえる。」と結んでいます。
以上:1,648文字

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