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3口貸金への一部弁済は最初の貸付のみの債務承認とした高裁判決紹介

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令和 3年 5月21日(金):初稿
○「3口貸金への一部弁済は最初の貸付のみの債務承認とした高裁判決紹介」の続きで、その控訴審令和2年1月29日東京高裁判決(LEX/DB)全文を紹介します。

○亡Aは、長男である被控訴人に対し、平成16年253万5000円(本件貸付け〔1〕)、平成17年400万円(本件貸付け〔2〕)、平成18年300万円(本件貸付け〔3〕)の3件の貸金債権を有し、長男は平成20年に約78万円を亡Aに返済し、亡Aは平成25年1月に死去し、遺言により、亡Aの三女B(控訴人)が、3件の貸金債権を相続承継したとして、3件の貸金全部から、弁済金約78万円を差し引いた約874万円を請求していました。

○原審は、貸金1は、平成20年の78万円弁済により消滅時効が中断され約175万円の債務が残っているが、貸金2・3は貸付日から10年経過して消滅時効が完成しているとして請求を棄却し、被控訴人に対し約175万円の支払を命じました。これに対し控訴人Bが、平成20年78万円の支払により貸金1乃至3全部の消滅時効が中断するとして控訴しました。

○控訴審判決も「Aに対して複数の別個の債務を負う債務者である被控訴人が弁済する際の合理的意思としては,当該弁済により別個の債務全てについてまでその存在を知っている旨表示したとは考え難く,当該弁済が充当されるものについてその旨表示したと認めるのが相当」として、貸金1のみが時効中断され、貸金2・3は時効中断がなく、消滅時効は完成しているとして、原審の結論を維持し、控訴を棄却しました。

○この判断は、最高裁判決で覆されており、後日紹介します。

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主   文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は,控訴人の負担とする。

事実及び理由
第1 控訴の趣旨
1 原判決を次のとおり変更する。
2 被控訴人は,控訴人に対し,874万7971円及びこれに対する平成20年9月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要(以下,理由説示部分も含め,原判決の略称をそのまま用いる。)
1 本件は,控訴人が,被控訴人に対し,控訴人及び被控訴人の父であるA(A。平成25年1月4日死亡)は,被控訴人に対して3回にわたって合計953万5000円を貸し付けた(本件貸付〔1〕ないし〔3〕,併せて本件貸金)ことから,金銭消費貸借契約に基づく貸金返還請求権を有していたもので,これを控訴人が遺言により相続したとして、本件貸金合計から弁済金78万7029円を控除した残金874万7971円及びこれに対する被控訴人が上記弁済をした平成20年9月3日の翌日である同月4日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。

 原審は,本件貸付〔1〕ないし〔3〕がされたことについて争いはないところ,Aが被控訴人に対し,その債務を免除したとは認められず,被控訴人による弁済は法定充当により弁済期が先に到来した本件貸付〔1〕に充当され,これについては時効が中断するが,本件貸付〔2〕及び〔3〕は消滅時効の完成により消滅したとして,本件貸付〔1〕から弁済額を控除した残金174万7971円及び本件訴状送達による催告の日から相当期間が経過した平成30年9月27日以降の遅延損害金の限度で請求を一部認容した。 
 控訴人は,その敗訴部分を不服として,本件控訴を提起した。

2 本件における争いのない事実等,争点及び争点についての当事者の主張は,以下のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」の「第2 事案の概要」の1及び2に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1)原判決2頁18行目,3頁14行目及び19行目の「返済」並びに23行目の「返済金」をいずれも「弁済」に改める。

(2)原判決3頁4行目の「第2回弁論準備手続期日」を「原審における第2回弁論準備手続期日」に改める。

(3)原判決3頁24行目末尾の次に以下を加える。
「弁済充当は法定充当によったとしても,それと時効の承認の範囲は別である。

 なお,Aは,生前,度々被控訴人に対し貸付金の返還を催告し,控訴人に遺産の多くを相続させる旨遺言し,被控訴人を「勘当」に値すると考えていたもので,Aが被控訴人に対し弁済を求めていなかったとはいえないから,遅延損害金の起算点は,遅くとも被控訴人が弁済した日の翌日である平成20年9月4日となる。」

第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も,控訴人の請求は,本件貸付〔1〕から被控訴人の弁済額を控除した残額及びこれに対する平成30年9月27日以降の遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し,その余の請求は理由がないから棄却すべきものと判断する。その理由は,以下のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」の「第3 争点に対する判断」の1ないし3に記載のとおりであるから,これを引用する。

(1)原判決4頁3行目及び5頁5行目の「返済」をいずれも「弁済」に改める。

(2)原判決5頁8行目冒頭から「本件貸金の」までを以下のとおり改める。
「しかし,併せて本件貸金という本件貸付〔1〕ないし〔3〕は,いずれも別個の機会にそれぞれ借用書を作成して貸し付けられたものである(争いのない事実等(2),上記1(1)イ,甲3の1ないし3)から,別個の貸付けであるというべきところ,被控訴人が上記弁済をした際,A又は被控訴人において,本件貸付〔1〕ないし〔3〕の」

(3)原判決5頁14行目の「解されるから,」を以下のとおり改める。
「解されるところ,いずれも利息等の定めはなく,債務者にとって弁済の利益(同条2号)は同じといえるから,弁済期が先に到来するものから順に充当されるべきである(同条3号)。したがって,上記弁済は,」

(4)原判決5頁16行目の「(3)そうすると,」を以下のとおり改める。
「そして,Aに対して複数の別個の債務を負う債務者である被控訴人が弁済する際の合理的意思としては,当該弁済により別個の債務全てについてまでその存在を知っている旨表示したとは考え難く,当該弁済が充当されるものについてその旨表示したと認めるのが相当である。
 そうすると,」

(5)原判決5頁20行目末尾の次に改行して以下を加える。
「この点につき,控訴人は,弁済充当と債務承認の範囲は別であると主張するが,上記説示に照らし,採用することができない。」

(6)原判決6頁1行目の「催告とみることはできないから,」を「催告とみることはできず,その他Aが被控訴人に対し催告していたことを認めるに足りる証拠はないから,」に改める。

2 以上によれば,本件貸付〔1〕に係る残金174万7971円及びこれに対する平成30年9月27日以降の遅延損害金の支払を求める限度で控訴人の請求を一部認容した原判決は相当であって,本件控訴は理由がないから,これを棄却すべきである。
 よって,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第9民事部 裁判長裁判官 小川秀樹 裁判官 瀬戸口壯夫 裁判官 間史恵

以上:2,902文字

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