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介護による寄与分について一定金額を認めた家裁審判紹介

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令和 7年 7月31日(木):初稿
○遺産分割で相続人の一人が被相続人の介護を担い、その介護について寄与分の主張をした場合、どのような基準で金額が算定されるかについての裁判例を探しています。
申立人Bが、被相続人と同居を始めた昭和48年から平成7年12月末ころまでの家事労働、洗髪介助、排泄の介助,後始末などの身辺介助、入浴介助等について1日或いは1回毎の基準料金を定め、合計約3775万円が寄与分相当額と主張しました。

○相手方らは、申立人Bは,毎月10万円の介護料を被相続人から受領し、その他にも多額の金員を受領し、既に申立人Bの寄与をはるかに超える金額を受領済みであり、且つ、申立人Bらによる介護には不適切な面があり,寄与というべきでないなどと主張しました。

○これに対し、申立人Bの介護の専従性を認めた上で、申立人が被相続人から金銭を受領しているものの他の相続人らも同様に金銭を受領していた事実があるから、その介護の無償性は否定されず、寄与分を評価する上で評価すべき事情としてその他の事情と併せ考慮し、申立人の寄与分を遺産総額の3.2%強である750万円と定めた平成19年2月26日大阪家裁審判(家庭裁判月報59巻8号47頁)関連部分を紹介します。

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主   文
1 申立人Bの寄与分を750万円と定める。
2 申立人Aの寄与分を定める処分の申立てを却下する。
3 被相続人Eの遺産を次のとおり分割する。
(1)申立人Aは,別紙1遺産目録記載のすべての遺産を取得する。
(2)申立人B,相手方らはいずれも,遺産を取得しない。
4 申立人Aは,申立人Bに対し,前項(1)の遺産取得の代償金として,6288万2098円を支払え。
5 申立人Aは,相手方Cに対し,第3項(1)の遺産取得の代償金として,5538万2097円を支払え。
6 申立人Aは,相手方Dに対し,第3項(1)の遺産取得の代償金として,5538万2097円を支払え。
7 本件手続費用は各自の負担とする。

理   由
 一件記録に基づく当事者の主張,当裁判所の事実認定及び法律判断は,以下のとおりである。
1 被相続人は平成14年×月×日死亡し,相続が開始した。相続人は,被相続人の子らである申立人B,相手方C,相手方D及び申立人Bの夫であり被相続人の養子である申立人Aである。各人の法定相続分は,いずれも1/4である。

2 遺産の範囲及び評価
 現在残存する遺産として認められるのは,別紙1遺産目録に記載した預貯金,現金,保管金,配当金である。
 本件係属当初未分割遺産であった○○市△△町に所在する不動産については,平成17年×月×日に全員が1/4ずつ共有取得することで一部調停が成立した。

 本件係属当初存在した被相続人名義の株券や有価証券は,当事者合意の上,申立人ら代理人弁護士がすべて売却し,売却代金を同弁護士名義の預金口座で保管している。現在保管している売却代金は,別紙1遺産目録4記載の保管金記載のとおりである。
 したがって,現時点における分割すべき遺産の総額は,別紙1遺産目録記載の財産の総額である2億2902万8389円となる。

3 申立人Bの寄与分主張について
(1)申立人Bの主張
ア 被相続人宅の家事労働など

     (中略)

エ 申立人Bの寄与分の評価
 申立人らが被相続人と同居を始めた昭和48年から平成7年12月末ころまでの申立人Bの家事労働に関する寄与分は,1日当たり少なくとも2000円として,1600万円(=2000円/日×約8000日)である。

 平成8年から平成12年8月24日まで(約1700日)の洗髪介助については,1回の介助を300円,3日に1回として約574回で17万2200円である。排泄の介助,後始末などの身辺介助を1回1000円,1日1回として,合計170万円である。さらに,この間の家事労働一般を1日5000円として,850万円である。したがって,この期間の申立人Bの寄与分は,これらの合計の1037万2200円である。

 平成12年8月25日から平成13年11月まで(約450日)の介護に関する寄与分は,平成12年に導入された介護保険制度の基準を参考にすると,入浴介助は1回1万3250円として450日で596万2500円となる。排泄介助は1回400円で,1日4回として算定すると72万円である。家事一般は1日1万円で,450万円である。深夜の排泄介助は1回1000円,2日に1回程度として20万円となる。したがって,この期間の寄与分は,これらの合計の1138万2500円である。
 以上を合計した3775万4700円が申立人Bの寄与分である。

オ 平成7年12月にFが亡くなるまでは,被相続人夫婦と申立人らは,生活費を折半で負担していた。平成7年12月のFの死後,被相続人は,生活費として,年金や恩給から月額平均10万円を申立人らに交付してきた。しかし,これのみでは被相続人の生活費を賄いきれず,申立人Bは,自らが小遣いとして被相続人から取得した金銭からも,被相続人の生活費を支出していた。

(2)相手方らの反論

     (中略)

e 申立人Bは,毎月10万円の介護料を被相続人から受領していた。その他にも,被相続人から,平成8年から12年にかけて合計928万円の資金供与,生活費として452万円,さらに被相続人の生活費の余剰金168万円などの供与を受けており,既に申立人Bの寄与をはるかに超える金額を受領済みである。

f 申立人らによる介護には不適切な面があり,寄与というべきでない。

     (中略)

(3)認定事実
 一件記録によると,以下の事実が認められる。

     (中略)

(4)申立人Bの寄与分の有無及び評価
 寄与分を認めるためには,当該行為がいわゆる専従性,無償性を満たし,一般的な親族間の扶養ないし協力義務を超える特別な寄与行為に当たると評価できることが必要である。以下,(3)の認定事実に基づき,検討する。

ア 平成8年ころまでの家事労働などについて

     (中略)

エ 申立人Bの寄与分の評価
(3)の認定事実を前提に,以下,申立人Bの寄与分の評価につき検討する。
a 申立人Bが被相続人の介護にほぼ専従したのは,平成12年8月24日の風呂場での転倒時から平成13年12月末ころまでの約16か月間(486日間)である。
b 看護師家政婦紹介所が看護師等を派遣する際の標準賃金表(ただし平成17年当時の基準)によれば,看護師の場合,〔1〕泊込勤務が1万8000円,〔2〕午前9時から午後5時までの通勤勤務が1万3
000円である。ケアワーカーの場合は,泊込勤務が1万2100円,〔2〕午前9時から午後5時までの日勤が7800円である。いずれも泊込勤務の際,午後10時から午前6時まで特に介護を要した場合,泊り料金の1割から2割増しとなり,徹夜勤務の場合は5割増しとなっている。

c 上記の標準賃金を参考にしつつ,申立人Bの介護が
〔1〕勤務としてではなく,あくまで親族介護であること,
〔2〕少人数による在宅介護のため,完璧な介護状態を保つことは困難だったと窺われること,
〔3〕申立人Bが他の親族より多額の小遣いを取得していたこと,
〔4〕昼間は,他の親族も交代で被相続人の介護を手伝っていたこと,
〔5〕被相続人の生活が次第に昼夜逆転し,深夜の排泄介助もしばしばあったことは負担感を増したといえること,
〔6〕被相続人が□□体型であり,介護の肉体的負担が極めて大きかったといえること
などを考慮して,一日当たりの介護費用を1万2000~1万3000円程度として算定することとする。とすれば,申立人Bの当該期間の介護労働を金銭的に換算すると,600万円程度との評価が可能である。

d 上記の数字は,専ら当該期間中の介護面のみを抽出して金銭換算したものであるが,最終的な寄与分評価としては,上記の数字を踏まえ,相続財産の額その他一切の事情を考慮(民法904条の2)し,相続人間の実質的衡平に資するべく評価を決定することとなる。

 本件において,申立人Bは,
〔1〕平成8年4月以来,被相続人の洗髪を介助するなど,軽度の身体介助は相当早期から始まっていたこと,
〔2〕失禁の後始末など排泄にまつわる介助も平成8年ころから既に行っていたこと,
〔3〕平成11年ころから,被相続人が幾度も転倒しており,その行動に注意を要する状態は既に始まっていたこと
などを併せて考慮すれば,最終的な寄与分の評価としては,遺産総額中の3.2%強である750万円と認めることとする。

     (中略)

5 当裁判所の定める分割方法
(1)各自の具体的相続分
 現時点における分割すべき遺産の総額は,2億2902万8389円である。申立人Bの寄与分を750万円認めた各自の具体的相続分は,以下のとおりとなる。
申立人B 6288万2098円
申立人A 5538万2097円
相手方C 5538万2097円
相手方D 5538万2097円

(2)具体的分割方法
 現時点の遺産は,預貯金,申立人Aの手元現金,申立人ら代理人弁護士保管金,株式配当金であり,いずれも容易に換金可能なものである。従前からこれらの財産を申立人Aにおいて主として管理してきたことによれば,遺産の現物をすべて申立人Aに取得させた上で,申立人Aから他の当事者に対して,各自の具体的相続分に相当する代償金の支払いを命じることとする。

6 手続費用の負担
 手続費用はいずれも,それぞれ支出した当事者に負担させるのが相当である。よって,主文のとおり審判する。
(家事審判官 山本由美子)
以上:3,942文字

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