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貴金属・宝石類の生前贈与と特別受益の該当性について

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令和 7年12月 5日(金):初稿
○遺産分割における民法第903条規定特別受益について相談を受けています。特別受益については「民法第903条特別受益制度の基礎の基礎-具体例考察」に基本的説明を記述しています。この説明時の特別受益規定に相続法改正によって「4 婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第一項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。」が加えられており、この趣旨は、配偶者の居住財産の遺贈・贈与は、持ち戻し免除の意思表示があったと推定して配偶者の居住確保によりその地位を強化していることです。

○特別受益の相談では、持ち戻し免除の意思表示があったかどうかの相談が多く、これについては「持戻免除の意思表示概観」に基礎的説明を記述し、具体的な裁判例は「持戻免除の意思表示が認められた具体例紹介1」以下に説明を加えています。現在、貴金属・宝石類の生前贈与が特別受益に該当しないかどうかの相談を受けています。

○裁判例を探すと、不動産についての判断例は多くありますが、ズバリ貴金属・宝石類の生前贈与が特別受益に該当するかどうかを判断した裁判例は現時点では見つかっていません。しかし、貴金属・宝石類は相続税での遺産として評価されており、その価値は千差万別ですが、不動産同様重要な財産であり、理屈上は特別受益に該当することがあると考えられます。

○貴金属・宝石類の生前贈与が特別受益に該当する理由は以下の通りです。
生計の資本としての贈与: 高価な貴金属は金銭に見積もれる資産であり、その価格や性質から、通常の生活費の援助ではなく、生計の資本(生活や事業の基礎となる財産)として贈与されたと判断される可能性があります。
相続人間の公平性: 特別受益の制度は、相続人全員の公平を図るためのものです。特定の相続人だけが多額の財産を受け取っていると、他の相続人との間で不公平が生じるため、相続財産にその贈与分(特別受益分)を算入(持ち戻し)して計算される可能性が高くなります。
財産の価値: 宝石や貴金属は資産価値が高く、相続税の課税対象にもなるため、単なる装飾品や通常のプレゼントとは区別されます。

○貴金属・宝石類の生前贈与が特別受益に該当するかどうかの判断のポイントは以下の通りです。
先ず価格で、貴金属の価格がどれくらい高額かが重要な判断材料となり、社会通念上、通常の扶養義務の範囲内と考えられる程度であれば、特別受益には該当しませんが、贈与税が課税される110万円の価値を超えれば該当する可能性は出てくるでしょう。遺産総額とのバランスも考慮されます。
次に目的ですが、何の目的で贈与されたかも考慮され、例えば、単なる誕生日プレゼントや記念品としての性質が強い場合は、価値が高くても特別受益とされない可能性もあります。
最後に他の相続人とのバランスが考慮されるべきで、他の相続人が受けた生前贈与や援助との比較も必要です。
要するに被相続人の意思と相続の公平性のバランスを考慮した総合判断で、前記持ち戻し免除の意思の有無の判断を含めて、相当難しい判断になります。
以上:1,322文字

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