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裁判所鑑定結果による賃料増額請求を認めた地裁判決紹介2

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令和 7年 7月29日(火):初稿
○「裁判所鑑定結果による賃料増額請求を認めた地裁判決紹介」の続きで、本件土地の賃貸人である原告が、賃借人である被告に対して、原告と被告との間の賃貸借契約について、平成30年9月以降月額40万7000円の賃料について、令和4年6月に同年7月以降は月額54万5339円に増額する通知をしましたが、被告が応ぜず、調停を経て、賃料増額確認請求の提訴をしました。

○これに対し、裁判所が実施した本件土地の適正月額賃料に関する裁判所鑑定によれば、令和4年7月1日時点における本件土地の継続支払賃料は月額47万円であると評価され、本件鑑定の鑑定人は、本件の当事者と特段の利害関係を有しておらず、全証拠に照らしても、鑑定人が当事者のいずれか一方に与した評価をするような事情があることはうかがえないとして、令和4年7月1日時点の月額賃料は47万円と確認した令和6年3月27日東京地裁判決(LEX/DB)関連部分を紹介します。

○賃料増額請求の事案は結構多いのですが、先ず私的鑑定が必要で、それに基づき賃借人に対し賃料増額請求通知をして、賃借人がが拒否したら調停手続を経て、訴訟を提起し、最終的には裁判所が選んだ鑑定人による鑑定結果で決まりますと説明すると、殆どの相談者は、そんな面倒な手続が必要ですかと言って諦めます。本件も賃料増額訴訟での判決は、殆どが、裁判所が選んだ鑑定人による鑑定結果に従っている一例です。

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主   文
1 原告と被告との間の別紙物件目録記載2の土地に係る賃貸借契約について、令和4年7月1日時点の月額賃料が47万円であることを確認する。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は、これを2分し、それぞれを各自の負担とする。

事実及び理由
第1 請求

 原告と被告との間の別紙物件目録記載2の土地に係る賃貸借契約について、令和4年7月1日時点の月額賃料が54万5339円であることを確認する。

第2 事案の概要
 本件は、別紙物件目録記載2の土地(以下「本件土地」という。)の賃貸人である原告が、賃借人である被告に対し、原告と被告との間の賃貸借契約について、令和4年7月1日以降の賃料の増額請求をしたとして、同賃貸借契約における同日時点の月額賃料が54万5339円であることの確認を求める事案である。

1 前提事実(当事者間に争いがないか、後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1)原告は、別紙物件目録記載1の土地を所有し、同土地を同目録記載2の土地(本件土地)と同目録記載3の土地に分けた上、本件土地を被告に、同目録記載3の土地を被告以外の会社にそれぞれ賃貸している(甲8)。

(2)被告は、平成15年12月、当時、本件土地上にあった建物を買受け、本件土地の借地人となった。原告と被告との間の本件土地の賃貸借契約(以下「本件賃貸借契約」という。)における月額賃料の推移は次のとおりである。
ア 平成15年12月5日以降平成16年5月まで 14万6219円
イ 平成16年6月以降同年12月まで 25万3622円
ウ 平成17年1月以降同年12月まで 24万2438円
エ 平成18年1月以降平成21年1月まで 28万7208円
オ 平成21年2月以降平成30年8月まで 37万2000円
カ 平成30年9月以降 40万7000円

(3)原告は、令和4年6月9日、被告に対し、同年7月1日以降、本件賃貸借契約における賃料を月額54万5339円に増額する旨の通知をしたが、被告はこれに応じなかった(甲1の1、1の2)。

(4)原告は、令和4年7月、前記(3)と同旨の内容の確認を求める調停の申立て(東京簡易裁判所令和4年(ユ)第288号調停事件)をしたが、同事件は、同年12月21日、調停の不成立により終了した。

2 争点及びこれに関する当事者の主張

     (中略)

第3 当裁判所の判断
1(1)当裁判所が実施した本件土地の適正月額賃料に関する裁判所鑑定(以下「本件鑑定」という。)によれば、令和4年7月1日時点における本件土地の継続支払賃料は月額47万円であると評価されている。

(2)本件鑑定の鑑定人は、本件の当事者と特段の利害関係を有しておらず、全証拠に照らしても、鑑定人が当事者のいずれか一方に与した評価をするような事情があることはうかがえない。また、前記評価を導いた判断過程をみると、鑑定人は、令和4年7月1日時点における本件土地の継続支払賃料につき、〔1〕差額配分法による試算賃料は月額52万8500円、〔2〕実際利回り法による試算賃料は月額44万5900円、〔3〕スライド法による試算賃料は月額41万3000円、〔4〕賃貸事例比較法による試算賃料は月額46万5500円、〔5〕公租公課倍率法による試算賃料は月額49万7280円と算出している。その上で、鑑定人は、各手法の特徴や問題点を踏まえて、各手法による試算賃料の加重割合をいずれも0.2とすることが妥当であると判断し、結論として、令和4年7月1日時点における本件土地の継続支払賃料は月額47万円であると評価している。

 これらの事情に照らせば、鑑定人は、中立・公正に本件鑑定を実施し、その鑑定手法や判断内容に特段不合理なところはないものと評価できる。

 加えて、鑑定人は、その判断過程において、本件土地の公租公課の金額や周辺の地価、公租公課倍率法や利回りの適切な評価又は考慮方法、コロナ禍等を踏まえた昨今の社会経済情勢といった、当事者双方が主張の中で指摘している内容を十分に斟酌していることがうかがえる。そして、当事者双方とも、本件鑑定による前記評価に関し、特段の意見を述べていない。

 以上からすれば、本件鑑定による前記評価は相当なものとして、これを採用することができる。

(3)したがって、本件賃貸借契約における令和4年7月1日時点の相当賃料額は、月額47万円であると認められる。

2 結論
 よって、本件請求は、本件賃貸借契約につき、令和4年7月1日時点の月額賃料が47万円であることの確認を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余の請求は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第4部 裁判官 君島直之

(別紙)物件目録
(省略)
以上:2,602文字

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