○横浜パートナー法律事務所
代表弁護士大山滋郎(おおやまじろう)先生が毎月2回発行しているニュースレター出来たてほやほやの令和7年10月16日発行第399号「
弁護士残酷物語」をお届けします。
○弁護士残酷物語という表題なので、弁護士に関する残酷な話しが、これでもかこれでもかと、出てくるのかと思いましたが、最後の数行だけで、収入の多い弁護士を羨む話しも出ていました。10数年前までは弁護士羨望物語と言える弁護士資格を取れば一生食いっぱぐれはないなんて言われていました。ところが20年以上前の司法改革によって司法試験合格者数が500名から1500名に3倍増となり、裁判官・検察官の数はさほど変わらないのに弁護士の数だけ激増し、弁護士資格の価値も激減し、弁護士残酷物語は彼方此方に溢れる時代となり、弁護士羨望物語は正に今は昔の話しになりました。
○「世界残酷物語」は大昔、映画で観たような記憶がありますが、「日本残酷物語」は全く知りませんでした。そんな本もつぶさに読み込んでいる大山先生の博識にはいつも驚きます。太平洋戦争時の日本残酷物語は山のように語られてきましたが、近世から現代までの民衆の貧しく辛い生活の話しは、余り語られていないようです。「日本残酷物語」をネット検索しても内容を詳しく解説したサイトは見つけられませんでした。本はまだ売られている様ですが、買ってまで読む気にはなりません(^^;)。
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横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作
弁護士残酷物語
先日、漂着したクジラが海岸で死んだニュースを流していました。クジラの遺骸を沖に運んで沈めるのに、数千万円の費用が掛かったそうです。食べてしまえばプラスになったのにと思ったのは、私だけではないはずです。現代は本当に豊かな社会だと思います。先日マクドナルドのハッピーセットで、おまけのポケモンカード欲しさに買って、ハンバーガーは捨てる人がいるとニュースになっていました。でもこれって私が子供の頃にもあったんです。おまけの仮面ライダーカード欲しさに買ったお菓子を捨ててました。もったいないので、私は捨てられるお菓子を貰って食べていたら、太ってしまった。ううう。
「日本残酷物語」というのは、今から60年ほど前に、民俗学者の宮本常一を中心にまとめられた本です。近世から現代までの民衆の生活を描いた記録で、いかに貧しく辛い生活を送っていたのかという話が、これでもかと出てきます。基本的に当時の人は常に飢えています。海辺で暮らす人たちは、クジラが浜に打ち上げられると、海からの贈り物だとして喜んで食べるんですね。現代では食べないどころか、費用をかけて沖に遺骸を捨てに行くなんて知ったら、当時の貧しい人たちは腰を抜かしそうです。漂着するのはクジラだけでなく、難破した船の積み荷などが流れ着くこともあります。これは人々にとってとても幸運なことですから、「沢山の船が沈没するように」と、毎年祈願をしていたなんて話もありました。
もっとも現代でも、臓器移植を待つ人が、早く脳死の人が出ないかと祈っていたなんて話がありました。人間の本性はなかなか変わらないのでしょう。弁護士の場合も、交通事故が激減したので仕事が減ったと嘆く声を聴いたことがあるので、他人のことはあまり言えませんが。。。 日本残酷物語の世界では、老人や女性といった弱い人たちは露骨に迫害されていました。そういう人たちから見れば、今の日本の生活は、天国みたいに見えるに違いありません。それなら現代の人たちがみんな幸福に暮らしているかといいますと、そんなことはないのです。
先日ネット掲示板で、国民年金未加入のため年金を受け取れない人たちの口コミを読みました。保険料を払ってさえいれば、毎月5万円はもらえて生活がもっと楽になったのにと悔やんでいます。それなら国民年金に加入していた人達は幸福かというとそういうわけでは無い。国民年金の数万円しかもらえないのでは、どうやって生きていけばよいのかと不満を漏らし、厚生年金の人を羨んでます。次に厚生年金も併せて20万円貰っている人の口コミでは、年金から税金を取られるなんてひどい、年金だけでは満足な生活もできないと、やはり不満のオンパレードなんです。さらに言えば、年収1000万円の人たちの口コミでも、税金が高くてとてもじゃないが豊かな生活はできないと、やはり不満がいっぱい書かれています。なるほど、「今」を幸福だと思わない人は、いつまでたっても幸福になれないというのは本当だなと、いつも不平不満ばかり言っている私も思うのです。
そんなわけで、弁護士の残酷物語です。大手の事務所に入った新人弁護士は、過酷な労働をするそうです。終電後にタクシーで帰宅して、翌朝また出勤するなんて良く聞く話です。それでいて、「アップ オア アウト」といって、出世できないと外に出されることになります。これだけ聞けばかなりの「残酷物語」ですが、収入面もそれに応じたものがあります。そんな弁護士を羨む人も沢山いそうです。一方、弁護士事務所の事務員さんの待遇は、あまりよくないのが一般です。弁護士からセクハラ・パワハラ行為をされて訴えたなんて事件もありました。弁護士が残酷物語を作り出さないように気を付けます。
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◇ 弁護士より一言
私は、平成8年8月8日に結婚しました。末広がりの「八」が3つ続いた日ということで、結婚記念日とした人も多かったようです。そんなわけで今年は29回目の結婚記念日を迎えました。今回は子供たちが、シャンパンをプレゼントしてくれたのです。今が幸福だと忘れずに、来年の30回目の結婚記念日には、妻と盛大にお祝いをしたいと思ったのでした。
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