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期間4年の不貞行為について慰謝料100万円を認めた地裁判決紹介

○被告が原告の夫Cと、平成29年から令和3年まで約4年間に不貞行為を継続し、令和3年にはCの子を出産して精神的苦痛について慰謝料600万円の支払を求めました。

○被告は、Cは被告以外にも肉体関係をもった女性が居たことを知りながらCと関係を持ったもので既に原告とCの夫婦関係は破綻していたこと、不貞行為発覚後も原告とCは同居を継続し婚姻関係が破綻していない等の理由で責任がないと主張しました。

○これに対し、本件不貞行為前に、原告とCが別居していたとか、具体的な離婚協議に入っていたといった事情は認められず、原告とCの婚姻期間は、本件不貞行為の開始時点で、24年余りのところ、不貞行為の期間は約4年に及び、被告はCの子を妊娠、出産したことや、原告とCは、離婚しておらず、本件不貞行為発覚後も、同居を継続していることが認められる等の事情から慰謝料を100万円と認めた令和6年8月8日東京地裁判決(LEX/DB)全文を紹介します。

○被告は、Cについて関係を始めた当時、他にも女性関係があったので原告との夫婦関係は破綻していたと主張しましたが、これに対し、そのようなケースに破綻を認め不貞相手に対する慰謝料請求を認めないと、共同不法行為責任を負うことになる不貞をした配偶者に対する不貞の慰謝料請求も認められないことになり、不貞行為を繰り返す者を利することにもなりかねず不合理と認定しています。そのようなCを利することになるとの認定ですが、本件で最も責任があるのはCと思われます。Cは原告に有利な証言をする証人となっているようですが、被告はCに対しどのように対処しているのか不明です。

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主   文
1 被告は、原告に対し、100万円及びこれに対する令和5年2月2日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は、これを6分し、その1を被告の負担とし、その余は原告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求

 被告は、原告に対し、600万円及びこれに対する令和5年2月2日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
 本件は、被告が原告の夫であるC(以下「C」という。)と不貞行為をしたとして、原告が、被告に対し、不法行為による損害賠償請求権に基づき、慰謝料600万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である令和5年2月2日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
1 前提事実(争いがないか、掲記の証拠等により容易に認められる事実)
(1)
ア 原告とCは、平成4年11月6日に婚姻した(甲1)。
イ 原告とCとの間には、子はいない(甲1、弁論の全趣旨)。

(2)
ア 被告は、平成29年2月頃にCと知合い、その後、同年より交際を開始した(争いがない。)。
イ 被告は、平成29年以降、Cが婚姻していることを知りながら、Cとの交際を継続し、令和3年5月に妊娠し、令和4年○月○日に出産をした(争いがない。)。
 上記被告が出産をした子は、DNA鑑定の結果、Cの子であることが確定し、令和4年5月6日、Cにおいて認知をした(争いがない。甲1)。

(3)なお、原告は、令和3年8月頃、Cから、被告と交際していること知らされ、また、同年12月頃、被告がCの子と思われる子を妊娠していることを知らされた(甲7、弁論の全趣旨)。

2 争点
 本件では、被告がCと不貞行為を行っていたこと(以下「本件不貞行為」という。)については争いがなく、本件の争点は、以下のとおりである。
(1)本件不貞行為の開始時点で原告とCの婚姻関係は破綻していたか
(2)被告が原告とCの婚姻関係は破綻していると認識したことについて、被告に過失がないといえるか
(3)原告の損害

3 争点に関する当事者の主張
(1)争点(1)について
(被告の主張)
 Cは被告と交際するより前に原告以外の複数の女性と交際し、連日のように25時から26時に帰宅していた上、その様子が被告を含む周囲の人間にも知られており、その直後に被告と交際を開始してからも、被告が交際相手であるとの前提で行動し、積極的に妊娠にも協力した上、被告のためにマンションの賃借人となっており、タイで買春までしていることからすれば、被告と交際した当時においては既に原告とCとの婚姻関係が破綻していることは明らかである。したがって、被告の不法行為は成立しない。

(原告の主張)
 被告は、本件不貞行為の開始時には既に原告とCの婚姻関係は破綻していた旨主張するが、争う。原告とCは、婚姻後、現在に至るまで同居を続け、本件不貞行為が発覚するまでの間、離婚の話をしたこともなかったのであり、原告とCの夫婦関係は円満であった。

(2)争点(2)について
(被告の主張)
 仮に、原告とCの婚姻関係が破綻していなかったとしても、Cが原告以外の女性と交際していた(肉体関係を持っていた)ことなどを知りながら、被告がCと交際を開始したことからすれば、被告には、Cと交際を開始した当時、原告とCの婚姻関係が破綻していると認識したことについて過失がなかったことは明らかである。

(原告の主張)
 争う。
 Cが被告との交際期間中も自宅に帰っていたことや、妊娠が発覚するまで被告がCに対して離婚を求めたことはなく、被告はCとの関係を単なる愛人関係として捉えていたといえることなどからすれば、被告が、本件不貞行為の当初から、原告とCの婚姻関係が破綻しているとの認識を有していなかったことは明らかである。

(3)争点(3)について
(原告の主張)
 原告とCの婚姻関係は、本件不貞行為以前と同様の夫婦関係に戻ることは不可能であり、本件不貞行為によって、原告とCの婚姻関係は破綻に至ったことは明白である。
 原告は、被告の本件不貞行為により、著しい精神的苦痛を受けた。加えて、その後の被告の対応や行動によっても、更なる精神的苦痛を受けた。原告の受けた損害は600万円を下らない。

(被告の主張)
 争う。本件不貞行為が発覚後も、原告はCと同居しており、離婚等の予定もないとのことであり、本件不貞行為により、原告とCの婚姻関係が破綻に至ったとはいえない。

第3 当裁判所の判断
1 争点(1)について

(1)被告は、被告の本件不貞行為より前に、Cが複数の女性と不貞行為をしていたから、原告とCの婚姻関係は既に破綻していたと主張するものであると解される。
 確かに、不貞行為は離婚事由(民法770条1項1号)とされているが、不貞行為があっても、必ず当該夫婦が離婚に至るわけではなく、相手方配偶者がこれを宥恕し、婚姻関係を継続することも見られるところである。

不貞行為があり、別居に至ったとか、具体的な離婚協議に入っていたといった事情があれば格別、そのような事情がない限り、不貞行為があったことから、直ちに婚姻関係が破綻したと認めることは困難であると解する。そして、本件において、本件不貞行為前に、原告とCが別居していたとか、具体的な離婚協議に入っていたといった事情は認められない(証人C(陳述書(甲8)を含む。以下同じ。)、原告本人(陳述書(甲7)を含む。以下同じ。)、弁論の全趣旨)。

 なお、仮に、本件のようなケースで破綻を認め、不貞相手に対する慰謝料請求を認めないとすると、共同不法行為責任を負うことになる不貞をした配偶者に対する不貞の慰謝料請求も認められないことになると解されるが、それでは、不貞行為を繰り返す者を利することにもなりかねず、不合理である。

(2)以上からすれば、本件不貞行為より前に原告とCの婚姻関係が既に破綻していたと認められないことになるが、訴訟の経緯等に鑑み、更に検討を加える。
ア 被告は、Cが平成27年より前にDに宿泊した女性と不貞関係にあったと主張するが、証人Cはこれを否定するところ、被告本人(陳述書(乙20)を含む。以下同じ。)によっても、このような話をCなどから聞いたというにとどまっており、客観的な裏付けがあるわけではなく、この女性と不貞関係にあったと認めるに足りない。

イ 被告は、Cが平成27年から平成28年頃、キャバクラに勤務していた女性と不貞関係にあったと主張するが、証人Cはこれを否定するところ、被告本人によっても、このような話をCから聞いたというにとどまっており、客観的な裏付けがあるわけではなく、この女性と不貞関係にあったと認めるに足りない。

ウ 被告は、Cが平成28年から平成29年までE(以下「E」という。)という女性と不貞関係にあったと主張する。この点についても、証人Cは不貞関係を否定する供述をしている。
 もっとも、証拠(証人C、被告本人)によれば、Cは、平成29年1月に、E、F(Cの友人の男性歯科医)、Fの知人女性及びG(Cの知人の男性歯科医)の5人で韓国旅行に行っているところ、この旅行にEが行くことを原告に伝えていなかったことが認められる。このように伝えていないことからすると、Eとの関係について後ろめたいところがあったことがうかがわれる。

 ただ、これ以上に客観的な裏付けはなく、CがEと不貞関係にあったと断じることは困難である。なお、仮に、不貞関係にあったとしても、直ちに婚姻関係の破綻が認められるものではないことは、上述したとおりである。

(3)その他被告の主張立証内容を検討しても、本件不貞行為の開始時点で原告とCの婚姻関係が既に破綻していたと認めるべき証拠はない。

2 争点(2)について
 被告は、Cと交際を開始する時点で、被告はCと原告の婚姻関係は既に破綻していると認識していたものであり、このように認識したことについて過失はない旨主張する。
 そして、このように認識した理由として、Cが原告以外の複数の女性と不貞関係にあったことを知っていたことを挙げる。もっとも、被告は、C等から聞いて知ったというにすぎず(被告本人)、不貞関係の客観的な証拠を有していたわけでない。

 また、被告本人は、Cから夫婦関係は既に破綻していると言われたと述べるが、それ以上に、別居しているとか、具体的に離婚協議をしているといったことを聞いていたわけではない。
 加えて、被告の認識を前提とすれば、Cは、妻がいながら、複数の女性と交際するような不倫をいとわない人物ということになるが、そのような人物が夫婦関係は破綻しているなどと甘言を弄して交際に入ろうとすることは、容易に想像できるところであり、このような言葉を信じたとすれば、軽率といわざるを得ない。

 以上の検討からすれば、被告がCと原告の婚姻関係は既に破綻していると認識していたとしても、このように認識したことについて被告に過失がなかったとはいえない
というべきである。その他被告の主張立証内容を検討しても,被告がCと原告の婚姻関係は既に破綻していると認識したことについて被告に過失がなかったと認めるに足りる証拠はない。
 したがって、被告の上記主張は採用することができない。 

3 争点(3)について
 前記前提事実からすれば、原告とCの婚姻期間は、本件不貞行為の開始時点で、24年余りであったところ、本件不貞行為の期間は約4年に及んでおり、被告はCの子を妊娠、出産したことが認められる。もっとも、他方で、証拠(原告本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告とCは、離婚しておらず、本件不貞行為発覚後も、同居を継続していることが認められる。
 以上の事情、その他本件に表れた諸事情を総合的に勘案すれば、原告の受けた精神的苦痛に対する慰謝料として、100万円を認めるのが相当である。


4 まとめ
 以上より、被告は、原告に対し、不法行為による損害賠償請求権に基づき、慰謝料100万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である令和5年2月2日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金を支払うべきである。

第4 結論
 よって、原告の請求は、主文第1項掲記の限度で理由があるから認容し、その余は理由がないから棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法64条本文、61条を適用して、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第7部
裁判官 烏田真人
以上:4,997文字

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