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預貯金と特別受益に関する平成25年10月4日東京高裁決定紹介

○「預貯金と特別受益に関する平成25年3月28日水戸家庭裁判所土浦支部判決紹介」の続きで、その抗告審である平成25年10月24日東京高裁決定全文を紹介します。預貯金当然分割の最高裁判決が、如何に不合理かについて渾身の抗告理由書を書きましたが、全く容れられず、最高裁判決の縛りが如何に強いかを実感させられる判決でした。


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平成25年(ラ)第1070号 遺産分割審判に対する抗告事件(原審・水戸家庭裁判所土浦支部平成24年(家)第527号)

主  文
1 本件抗告を棄却する。
2 抗告費用は抗告人の負担とする。

理  由
第1 抗告の趣旨及び理由等
 本件抗告の趣旨及び理由は,別紙「即時抗告中立書」,「即時抗告理由書」及び「第1準備書面」(各写し)記載のとおりであり,これに対する答弁及び反論は,別紙「答弁書」(写し)記載のとおりである。

第2 事案の概要
 本件は,平成23年2月6日に死亡した甲野花子の遺産相続をめぐる争いであり,被相続人の遺産としては原審判別紙「亡甲野太郎・花子氏遺産預貯金分類一覧」記載の預貯金と同別紙「不動産目録」記載の各土地(以下「本件預貯金」,「本件土地」という。)があるところ,本件土地を取得した長男である抗告人が,長女である相手方に対し,同人には披相続人から生前に贈与された3280万円の特別受益があるとして,本件土地のみならず,本件預貯金も抗告人が取得すべきことを求めている事案であり,相手方は,上記金員は贈与ではなく,披相続人の介護費用,介護報酬等であるとして特別受益の存在を争うとともに,本件預貯金を遺産分割の対象とすることには同意していないから,本件預貯金は遺産分割の対象にはならないなどと主張している。

 原審は,本件預貯金は可分債権であり,当然分割となるから遺産分割の対象ではないとした上,本件土地は抗告人が取得するとの審判をした。そこで,これを不服とする抗告人が,本件抗告を申し立てたものである。

第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も,原審判の定めたとおりに遺産を分割すべきであると判断するが,その理由は,原審判を次のとおり補正するほか,原審判の「理由」1ないし3に記載のとおりであるから,これを引用する(ただし,「申立人」を「抗告人」と,「別紙」を「原審判別紙」と,それぞれ読み替える。)。
 (原審判の補正)
(1) 原審判2頁1行目の「預貯金(以下,)から同頁3行目の「本件土地」という。)がある」までを「本件預貯金及び本件土地がある」と改める。

(2) 原審判3頁8行目末尾に改行の上,次のとおり加える。
「エ その他,抗告人の当審における主張は,別紙「即時抗告理由書」及び「第1準備書面」記載のとおりであるが,要するに,原審判は,本件預貯金を可分債権とし,相手方がこれを遺産分割の対象に含めることに実質的に同意していたにもかかわらず,最終的にこれを翻意したことをそのまま容認し,可分債権当然分割説を採用して遺産分割を決定したため,遺産分割結果に著しい不公平が生じているというものである。」

(3) 原審判3頁22行目末尾に改行の上,次のとおり加える。
「エ その他,相手方の当審における主張は,別紙「答弁書」記載のとおりであって,調停が成立することを前提として一定の金銭的提案をしたが,調停成立の見込みがなかったためにその提案を撤回しただけであり,本件預貯金を遺産分割の対象とすることに同意していたことはないなどというものである。」

(4) 原審判4頁2行目冒頭から同頁14行目末尾までを次のとおり改める。
「(2) 金融機関に対する預貯金債権は,金銭その他の可分債権に該当するから,相続開始と同時に,法律上当然分割され,各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継するものである(最高裁昭和27年(オ)第1119号同29年4月8日第一小法廷判決・民集8巻4号8 1 9頁,最高裁昭和28年(オ)第163号同30年5月31日第三小法廷判決・民集9巻6号793頁参照)。そして,相続財産の共有(民法898条)は,民法249条以下に規定する「共有」とその性質を異にするものではないと解するのが相当であり(前掲最高裁第三小法廷判決参照),債権の準共有者については多数当事者間の債権関係に関する民法427条以下の定めが適用され,これは,民法264条ただし書の「法令に特別の定めがあるとき」ということができる。しかも,本件では,相手方は,原審での審判期日において明示的に本件預貯金を遺産分割の対象とすることに同意しないことを表明している。したがって,本件預貯金を遺産分割の対象とすることはできないというべきであるから,これに反する抗告人の主張を採用することはできない。

 なお,抗告人は,本件では,審判に移行する前の調停手続において,殊に平成24年11月5日の第3回調停期日においては,相手方との間で本件預貯金を遺産分割の対象とすることを前提に話合いが進んでいたのに,相手方がこれを翻意したものであって,信義則に反するものであり,その結果,可分債権当然分割説を前提として原審判がなされたため,遺産分割に著しい不公平が生じていると主張している。

 しかし,相手方がそれ以前の平成24年9月頃から金融機関に対して法定相続分に応じた本件預貯金の払戻しを繰り返し請求していたことは抗告人も認めているところであって(別紙「即時抗告理由書」参照),しかも,調停手続において一方の当事者が円満な紛争解決を図るために相手方にも利益のある提案をすることはよくあることであるが,調停が成立しなかった場合には,そのような提案が白紙に戻ることは当然のことであるから,本件の相手方において話合いの中で本件預貯金の一部を遺産とする前提で話をしたとしても,そのことをもって確定的に本件預貯金を遺産分割の対象とすることに同意したものとまで認めるのは相当ではない。そして,相手方は,調停が不成立となり,審判に移行した後の原審第1回審判期日(平成25年1月28日)において,上記の不同意であることを表明しているのであるから,このような相手方の対応が調停手続における信義則に反するものということはできない。したがって,いずれにしても,抗告人の上記主張を採用することはできないものである。」

(5) 原審判4頁21行目の「なお」から同頁24行目末尾までを次のとおり改める。
「なお,仮に抗告人の主張する特別受益の存在が認められるとしても,別紙「答弁書」によれば,本件では,抗告人の遺留分を侵害するほどの実質的な不均衡は生じていないこととなる。そして,抗告人の主張する葬儀費用,墓石建立等の費用及び相続税申告費用は,相続開始後に生じた費用であって,相続財産に関する費用とはいえないから,これに関して争いがあり,かつ,調停でもその紛争の解決ができないというのであれば,別途,民事訴訟手続等で解決するほかなく,本件の遺産分割の対象ではないことは明らかである。」

2 よって,原審判は相当であり,本件抗告は理由がないから棄却することとして,主文のとおり決定する。

以上:2,948文字

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