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民法第718条動物占有者責任を一部認めた高裁判決紹介

○「民法第718条動物占有者責任を否定した地裁判決紹介」の続きで、その控訴審令和7年6月18日大阪高裁判決(裁判所ウェブサイト)関連部分を紹介します。

○ドッグランにおいて、被告(被控訴人)の占有する被告犬が原告(控訴人)に衝突し、これによって原告が傷害を受け後遺障害を残したと主張して、民法動物占有者責任(民法718条1項本文)に基づき損害賠償金約3523万円を請求したところ、一審判決は被告は被告犬の動静について相当の注意を払っていたとして過失を認めず原告請求は全部棄却し、原告(控訴人)控訴しました。

○高裁判決は、被控訴人は、被控訴人犬が合理的行動を取るであろうと過信し、体高50cm前後、体重約28kgの大型犬が人間の死角から高速で衝突した場合の衝撃の程度に思い至らず、遊びで興奮状態の被控訴人犬にリードをつける等の適切な措置を取らなかったり、被控訴人犬を制止する措置をしたりはしなかったのであるから、通常払うべき程度の注意義務を尽くしていたとは認められず、被控訴人が飼い犬の管理につき相当の注意を尽くしたとは認められないとして、控訴人の請求について、損害全体として2048万9226円を認め、控訴人自身の過失割合20%を控除した1600万4726円の支払を命じました。

○被控訴人としては驚きの判決と思われます。ドッグランという広い空間で自由に走り回ることができる非日常的体験下においては、犬が遊びに夢中になり、人に衝突する危険があることや、犬に追い掛けられた犬がいわば安全基地である飼い主に向かって逃げることで、犬同士が飼い主の方向に突進していくおそれがあることを具体的に予見し又は予見することができたと認定されており、犬が人に衝突しないよう厳しい注意義務が認められました。

*********************************************

主   文
1 原判決を次のとおり変更する。
2 被控訴人は、控訴人に対し、1600万4726円及びこれに対する令和3年2月6日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
3 控訴人のその余の請求を棄却する。
4 訴訟費用は、第1、2審を通じてこれを2分し、その1を控訴人の負担とし、その余を被控訴人の負担とする。
5 この判決は、第2項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 控訴の趣旨

1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は、控訴人に対し、3527万9753円及びこれに対する令和3年2月6日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。

第2 事案の概要(以下、特記しない限り、略称は、原判決の例により、証拠に枝番のあるものは、全ての枝番を含む。)
1 本件は、控訴人が、被控訴人に対し、ドッグランにおいて被控訴人の占有する犬が控訴人に衝突し(本件事故)、これによって控訴人が傷害を負ったと主張して、動物占有者責任(民法718条1項本文)に基づき、損害賠償金3527万9753円及びこれに対する令和3年2月6日(本件事故日)から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める事案である(なお、前記第1の2と原判決「事実及び理由」第1は、表現を異にするが、同内容である。)。
 原審が控訴人の請求を棄却したところ、控訴人が控訴した。

2 前提事実

     (中略)

第3 当裁判所の判断
1 当裁判所は、原審と異なり、控訴人の請求は、被控訴人に対し、損害賠償金1600万4726円及びこれに対する令和3年2月6日から支払済みまで年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し、その余を棄却すべきであると判断する。その理由は、以下のとおりである。

2 認定事実

     (中略)

3 争点1(被控訴人が相当の注意を払ったか)及び争点4(過失相殺)について
(1)動物占有者責任について
 動物占有者責任は、占有者が動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたことを主張・立証すれば、その責任を免れるところ(民法718条1項ただし書)、相当の注意とは、通常払うべき程度の注意義務を意味し、異常事態に対処し得べき程度の注意義務まで課したものではないと解される(最高裁昭和37年2月1日第一小法廷判決・民集16巻2号143頁参照)。 

 そして、ドッグランは、リードを外して自由に走らせることができる施設ではあるものの、あくまで飼主の適切な管理下にある犬の利用が想定されているのであるから、施設の性格から上記の通常払うべき程度の注意義務が軽減されることはないというべきである。

(2)被控訴人が、本件事故時、通常払うべき程度の注意義務を尽くしていたか否かについて
 そこで、被控訴人が、本件事故時、通常払うべき程度の注意義務を尽くしていたか否かを検討すると、認定事実(3)ウによれば、被控訴人の認識では、飼主がドッグランにおいて行うべき管理の態様は、飼い犬の数mから10数mの距離にいて、何かあったらすぐに駆け付けてリードをつないで制御することができるように、いつもリードを手に持ち、犬の挙動を注視するというものであった。

 もっとも、認定事実(2)ウによれば、被控訴人犬は、本件事故前に、控訴人犬を追い掛けることに夢中になり、控訴人に衝突しそうになり、幸い、被控訴人犬に正対していた控訴人がこれを自然によけたため大事には至らなかったことが認められる。そして、この直前、被控訴人は、南側のフェンス付近の白い椅子に座り、リードをテーブルに置き、腕を組んで被控訴人犬を注視し、一連の様子を観察していた。

 したがって、被控訴人は、被控訴人犬が比較的温厚な性格で、基本的なしつけも行っており、本件事故以前に他の犬とけんかをしたことがなかったとしても(認定事実(3)ア及びイ)、ドッグランという広い空間で自由に走り回ることができる非日常的体験下においては、被控訴人犬が遊びに夢中になり、人に衝突する危険があることや、被控訴人犬に追い掛けられた控訴人犬がいわば安全基地である控訴人に向かって逃げることで、控訴人犬及び被控訴人犬が控訴人の方向に突進していくおそれがあることを具体的に予見し又は予見することができたというべきである。

 そして、被控訴人犬と被控訴人の走る速度の違いを考慮すれば、このような危険を防止するためには、被控訴人犬にリードをつけたり、被控訴人犬を一時的に退場させたりするなどの措置をとり、被控訴人犬を遊びに夢中な状態から落ち着かせるか(事情2参照)、被控訴人犬のところに駆け付けるか、せめて「おいで」「止まれ」といった口頭の命令を試みるなどして制止する(事情3参照)ほかないところ、被控訴人は、このような行動をしたことはうかがわれない(なお、控訴人は、仮に控訴人犬が人間に突進した場合、まず大声で制止すると述べており(原審控訴人本人〔15頁〕)、通常の飼育経験のある飼主であれば、口頭の命令を試みることは自然かつ容易であると考えられる。)。

 したがって、被控訴人は、被控訴人犬が合理的行動を取るであろうと過信し、体高50cm前後、体重約28kgの大型犬が人間の死角から高速で衝突した場合の衝撃の程度に思い至らず、遊びで興奮状態の被控訴人犬にリードをつける等の適切な措置を取らなかったり、被控訴人犬を制止する措置をしたりはしなかったのであるから、通常払うべき程度の注意義務を尽くしていたとは認められない。

(3)本件事故時の状況について
 本件事故時の状況について、被控訴人は、控訴人犬が、控訴人に背後から走って近づき、急に左に方向転換し、控訴人の左側を通り抜け、控訴人犬を追い掛けていた被控訴人犬も、それに合わせて左に方向転換し、控訴人犬を追い掛けようとしたが、その際、控訴人の脚に背後から接触した旨主張する。これに対し、控訴人は、原判決別紙2の「原告」という文字が付記された黒丸付近に立って、控訴人の家族と控訴人犬の様子を見ていた旨主張し、原審本人尋問においても、控訴人犬が柵の方や控訴人の配偶者の方をうろうろしていた旨供述している(原審控訴人本人〔16頁〕)。

 そこで、本件事故時の状況を検討すると、控訴人は、意味もなくなくドッグランの中央部付近に行くことは少ないと述べているところ(原審控訴人本人〔6頁〕)、控訴人が本件事故に遭った原判決別紙2の「原告」という文字が付記された黒丸の位置から南側の柵の位置までは、航空写真(甲8)と対照すると、8m弱は離れていることが認められ、配偶者及び控訴人犬と別行動した合理性が見出し難い。むしろ、被控訴人犬は、本件事故前にも控訴人犬を追い掛けて控訴人と衝突しそうになったことがあるのであり(認定事実(2)ウ)、本件事故時も控訴人犬を追い掛けていたと考えるのが自然である。

とするならば、控訴人は、自身の背後から走ってくる可能性のある犬に対する警戒をしておらず、そのため、被控訴人犬の接近に気付くことができなかった過失が認められる(なお、仮に、控訴人が主張するとおり、控訴人犬が柵の方や控訴人の配偶者の方をうろうろしていたのだとしても、控訴人は、控訴人犬が控訴人の配偶者の近くにおり、同人による管理が可能であり、控訴人が注視する必要があったとまではいえなかったにもかかわらず、合理的理由なく本件大ドッグランの周辺部でない部分に立ち、自身の背後から走ってくる可能性のある犬に対する警戒をしなかったのであるから、いずれにせよ過失が認められる。)。

 以上の控訴人及び被控訴人の各過失の内容等を考慮すれば、本件事故における控訴人の過失割合は、20%とするのが相当である。

4 争点2(本件事故と控訴人の損害の因果関係の存否)について
(1)前記認定事実(2)ウ及び(3)アによれば、被控訴人犬は、体重が約28kgであり、時速11.7km以上の速度で控訴人に衝突したことが認められる。そして、体重約28kgは小学校低学年の児童の体重程度であると考えられるところ、本件事故は、小学校低学年の児童が、一般人のジョギングよりも速い速度で、頭から突進したに等しい衝撃が発生しており、さほど広くはない接触部位(控訴人の下肢の一部)にその衝撃が集中したことや、控訴人が防御の体勢ではなかったことも考慮すれば、軽微な接触であったとは認められない。


     (中略)

(3)したがって、本件事故と因果関係のある傷害は、左足関節捻挫、左肩関節捻挫及び左下腿打撲傷、中程度の棘上筋損傷(部分損傷)であると認められる。

5 争点3(控訴人の損害の有無及び額)について
 前記4を踏まえれば、控訴人の損害額は、次のとおりである。


     (中略)


(5)後遺障害逸失利益
 1465万9092円
【事実認定の補足】
 控訴人は、MRI検査の結果、中程度の腱板損傷(部分損傷)と診断され、他動運動による左肩関節の外転運動の可動域(75度)が、右肩関節の可動域(135度)の4分の3以下に制限されたことが認められる(甲8)。
 したがって、控訴人の左肩に残存した機能障害は、「1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの」(12級6号)と評価すべきである。
 控訴人は基礎収入として1071万6407円を主張するところ、控訴人は、親族が経営する会社に勤務しており、業務内容は理髪業店舗の運営、経理及び事務であり、デスクワークが半分程度、理髪店のサインポール及び天井の照明の電球の手配及び交換が半分程度であるから(原審控訴人本人〔29頁〕)、上記基礎収入が労働実態に見合った金額であるとは直ちには認め難い事情があるといえ、控訴人も業務日誌、業務内容の説明資料、勤務先関係者の証言等、何らの立証もしておらず、後遺障害の症状固定後に減収したこともうかがわれない。
 もっとも、控訴人は左肩に後遺障害が残存しており、理髪店の天井の照明の電球の手配等の雑務に一定程度の支障が出ることが認められるから(原審控訴人本人〔14、29頁〕)、賃金センサス令和3年第1巻第1表の「男」「学歴計」「35~39」の年収である545万6800円を基礎収入とすべきである。
【計算式】
基礎収入545万6800円×労働能力喪失率0.14×労働能力喪失期間29年間に対応するライプニッツ係数19.1885=1465万9092円

(6)通院慰謝料
 102万6000円
【計算式】
令和3年2月8日から同年6月28日まで(4か月と21日)
90万円+(108万円-90万円)×21
30=102万6000円

(7)後遺障害慰謝料
 280万円

(8)既払金 38万6654円

(9)具体的金額
ア (1)~(7)の合計額 2048万9226円
イ 過失相殺(20%) 2048万9226円×(1-0.2)=1639万1380円
ウ イ-(8) 1600万4726円


6 結論
 よって、控訴人の請求は1600万4726円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから、原判決を上記のとおり変更することとし、主文のとおり判決する。
大阪高等裁判所第1民事部
裁判長裁判官 嶋末和秀 裁判官 横路朋生 裁判官 石本恵
以上:5,374文字

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