○原告と夫Cは婚姻中の夫婦であり,その間に3人の子がいますが、キャディーである夫がプロゴルファーである被告と不貞関係となったことから、原告は、調査会社に依頼し、調査の結果、夫と被告が交際し、同棲していることを確認し、また、夫から原告に対して離婚を申し入れられ、被告の申し向けにより夫が婚姻費用の支払いを怠るようになったこと等から精神的苦痛を受けた等として、原告が被告に対して慰謝料800万円、弁護士費用80万円、不貞行為の調査費用121万1802円の合計1001万1802円の支払を求めました。
○被告は、Cに原告と離婚するようプレッシャーをかけたり、婚姻費用を支払わないよう申し向けたことはなく、Cから原告との婚姻関係は破綻していると言われ、それを信じて本件不貞行為に至ったもので慰謝料は高すぎ、原告主張の調査費用の額は相当な範囲を超えると主張しました。
○これに対し、被告が不貞行為により原告の貞操請求権や婚姻生活の平和を侵害したことについては不法行為が成立するとしつつ、被告が婚姻費用の支払いについて申し向けた事実を認定しないながらも、原告が本件不貞行為によって受けた精神的苦痛は看過できない程度として、原告の損害について特段の反証等がないことなどから、一切の事情を総合考慮して、慰謝料250万円、調査費用25万円と弁護士費用等合計300万円の支払を認めた令和6年12月10日東京地裁判決(LEX/DB)関連部分を紹介します。
○訴え提起が令和5年で弁論終結が令和6年11月で、訴え提起時には不貞は終了していたと思われ、不貞期間の認定は令和2年11月から令和3年4月頃までの半年程度で、原告とCの婚姻関係は継続し完全破綻していないのに慰謝料250万円も認めるのは珍しい事案です。原告に離婚を請求し婚姻費用支払を停止する兵糧攻めまで行ったCの責任が重大と思われます。この点被告代理人はどのような対応をしているのか気になるところです。
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主 文
1 被告は、原告に対し、300万円及びこれに対する令和5年12月29日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用はこれを10分し、その3を被告の、その余を原告の負担とする。
4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 請求
被告は、原告に対し、1001万1802円及びこれに対する令和5年12月29日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
本件は、原告が、被告はC(以下「C」という。)が原告と婚姻中であることを知りながら不貞行為に及んだと主張して、不法行為に基づく損害賠償として、慰謝料800万円、弁護士費用80万円、不貞行為の調査費用121万1802円の合計1001万1802円の支払を求めた事案である。
1 前提事実(争いのない事実又は掲記の証拠及び弁論の全趣旨から容易に認定できる事実)
(1)当事者等
原告とCは婚姻中の夫婦であり,その間に長男(平成25年○月○日生)、長女(平成29年○月○○日生)及び二男(令和2年○月○○日生)がある。(甲1)
被告はプロゴルファーである。
(2)被告とCの不貞関係
Cはプロのキャディーであるが、令和2年10月頃から被告と不貞関係になり、令和3年2月から令和4年2月頃までは同棲していた(被告とCの一連の不貞行為を、以下「本件不貞行為」という。)。
2 争点
(中略)
第3 争点に対する判断
1 争点(1)
(1)被告がCに対し、原告と離婚をするようプレッシャーをかけたり、婚姻費用を支払わないよう申し向けた事実を認めるに足りる証拠はない。
他方で、証拠(甲2、5)によれば、原告は、令和2年11月頃、Cが家に帰る日が減るなど不審な様子を見せるようになったことからCと被告との関係を疑うようになったこと、同年12月頃、被告及びCは原告に対して不貞関係を否定したが、原告とCとの夫婦関係が悪化したこと、令和3年2月頃までには、Cが自宅に帰らなくなるとともに、原告はCから離婚を申し入れられるようになったこと、その後原告は本件不貞行為を知り、多大な精神的苦痛を被り、心身に変調を来たし、うつ状態、めまいや不眠、冷や汗、腹痛等の症状に苦しんだこと、Cからの生活費の支払が止められ、当時7歳、3歳、零歳の子どもを抱えて非常に大きな不安にさらされたこと、原告は本件不貞行為を理由としてCとはいずれ離婚しようと考えていることが認められる。
(2)被告が本件不貞行為により原告の貞操請求権や婚姻生活の平和を侵害したことについては不法行為が成立するところ、本件不貞行為の態様(前提事実(2))、上記(1)の認定事実によれば、原告とCとが現在離婚に至っていないことを考慮しても、原告が本件不貞行為によって受けた精神的苦痛は看過できない程度のものといえる。そして、原告の損害について特段の反証等がないことなど本件にあらわれた一切の事情を総合すると、被告の不法行為による原告の精神的苦痛に対する慰謝料としては250万円までは是認し得る。
(3)そして、原告は本件訴訟の提起と追行を弁護士に委任しているところ、原告が負担した弁護士費用のうち25万円を本件不貞行為と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。
2 争点(2)
(1)原告は、令和3年2月頃、調査会社にCの行動の特定を目的とする調査を依頼し、同年3月4日までに、調査費用として63万2652円を支払った。上記依頼に基づく調査が同年2月26日に実施され、概要以下の結果を得た。(甲3の1、3の2、5)
ア Cは、令和3年2月26日午後3時43分、自分の自動車に被告を乗せて被告のマンションに到着した。被告は先に降車し、Cは、自動車を駐車場に停めてから被告のマンション内に入った。
イ 被告とCは、同日午後4時44分頃にCの自動車で被告のマンションを出て、同日午後4時57分頃、自動車を東京都港区α×丁目の駐車場に停めた。被告とCは、しばらくしてから降車し、腕を組み、手をつないで歩き、同日午後5時1分頃、タクシーに乗車した。ここで調査員はCを失尾した。
ウ 同日午後5時24分及び同月27日午前4時34分、Cの自動車に動きはなかった。
エ 同日午前6時29分、Cが自動車を運転し、被告のマンションに現れた。Cは、被告を自動車に乗せてa空港に向かった。
(2)原告は、別の調査会社にもCの行動確認等の調査を依頼し、同年4月8日、調査費用として57万9150円を支払った。上記依頼に基づく調査が同月4日に実施され、概要以下の結果を得た。(甲4の1、4の2、5)
ア 令和3年4月4日午後8時3分、Cは、自動車に被告を乗せて横浜市のゴルフクラブを出発し、同日午後8時36分に被告のマンションに到着した。
イ Cは、自動車を駐車場に停め、スーパーで買い物をした後、同日午後9時14分に被告のマンションに入った。
ウ Cは、令和3年4月5日午前10時2分に被告のマンションを出た。Cは、その後自動車で被告のマンションに戻り、同日午前11時44分、被告を乗せて被告のマンションを出発した。
(3)令和2年12月頃には被告及びCが原告に対して不貞を認めていなかったことから(前記1(1))、原告が本件不貞行為の確認のために調査会社に調査を依頼せざるを得なかったと認められ、被告も1回目の調査の必要性については明らかには争わない。そして、1回目の調査結果と2回目の調査結果には決定的な違いがないこと(1回目の調査結果からも、被告とCが夕方から翌朝まで間動を共にしていたことはうかがえる。)なども考慮すると、原告が支払った上記調査費用のうち本件不貞行為と相当因果関係を有する損害は、25万円と認めるのが相当である。
第4 結論
よって、原告の請求は、300万円及びこれに対する令和5年12月29日から支払済みまで年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第37部 裁判官 安川秀方
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