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不動産ではなくその購入援助額を特別受益と認めた高裁決定紹介

○被相続人からの不動産購入のための資金援助について、不動産の贈与と同視すべきものとはいえないと判断し、資金援助額をもって特別受益の額とした令和6年12月18日東京高裁決定(判時2640号○頁)関連部分を紹介します。

○原審は、本件不動産購入資金援助額の約3260万円ではなく本件不動産そのものが特別受益として、その時価の8210万6250円の特別受益を得たとして、抗告人に対し代償金として約4089万円の支払を命じていました。

○これに対し抗告審は、被相続人が残代金のほぼ全額を援助したものであるとしても、当然にその資金援助を不動産の贈与と同視すべきであるとまでいえるかは疑問が残るとの理由で、特別受益は不動産そのものではなく購入援助額であるとして、代償金額を約4089万円から約1800万円に減額しました。

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主    文
1 原審判を次のとおり変更する。
2 被相続人の遺産を次のとおり分割する。
(1) 相手方は、原審判別紙遺産目録記載1の土地及び同目録記載2の建物並びに同目録記載6の預り金を取得する。
(2) 抗告人は、同目録記載3の預貯金(利息を含む)、同目録記載4の株式及び同目録記載5の投資信託を取得する。
3 相手方は、抗告人に対し、第2項(1)の遺産を取得した代償として、1800万2347円を本決定確定の日から2か月以内に支払え。
4 本件手続費用のうち鑑定人Aに支給した不動産鑑定料63万6900円については、これを2分し、その1を抗告人の、その余を相手方の負担とし、その余の手続費用は第1、2審を通じて各自の負担とする。
 
理    由
第1 抗告の趣旨及び理由

 別紙「抗告状」及び「即時抗告理由書」(各写し)に記載のとおりである。

第2 事案の概要(以下、理由説示部分を含め、原則として原審判の略称をそのまま用いる。)
1 被相続人は、令和2年○月○日に死亡した。被相続人の相続人はいずれも被相続人の子である抗告人及び相手方の2名であり、その法定相続分は各2分の1である。本件は、抗告人が、相手方に対し、被相続人の遺産の分割を求める事案である。

2 原審は、双方の主張する特別受益のうち、本件●●不動産に関し抗告人が8210万6250円の特別受益を得たと認定した上、相手方が、原審判別紙遺産目録(以下、単に「目録」という。)記載の財産を全て取得した上、相手方に対し、代償金として4089万2005円を審判確定の日から2か月以内に抗告人に支払うよう命ずる審判をした。

3 抗告人は、同審判を不服として、本件抗告をした。

4 事実関係、抗告人の得た特別利益に関する主張及び相手方の得た特別受益に関する主張は、原審判「理由」欄の「第1 事実関係」、「第2 申立人の得た特別受益」の1及び「第3 相手方の得た特別受益」の1に記載のとおりであるから、これを引用する。

第3 当裁判所の判断
1 当裁判所は、相手方が目録記載1の土地及び目録記載2の建物並びに目録記載6の預り金を取得し、抗告人が目録記載3の預貯金(利息を含む)、目録記載4の株式及び目録記載5の投資信託を取得するとした上、相手方に対し、上記遺産を取得した代償として、1800万2347円を、本決定確定の日から2か月以内に抗告人に支払うよう命ずるのが相当であると判断する。その理由は、以下のとおりである。
     (中略)

3 ●●不動産購入資金の贈与について
(1) 記録(必要に応じ資料を後記する。なお、以下、訳文ないし反訳文のある資料については枝番の記載を省略する。)によれば、以下の事実を認めることができる。

     (中略)

(4) 資金援助の法的性質等について
 上記(2)で説示したとおり、本件●●不動産の購入残代金27万7400ドル(甲20記載のエスクロー金額)は、被相続人が支出したものと認定されるが、その法的性質は、被相続人が、抗告人に対し、本件●●不動産の購入残代金27万7400ドルを贈与したものと認めるのが相当である。

 相手方は、被相続人は本件●●不動産そのものを抗告人に贈与したものである旨主張する。

しかし、上記(1)認定の事実によれば、本件●●不動産の買主は抗告人であり、被相続人ではなく、被相続人は残代金の資金援助をしたにすぎない。この点について、相手方は、被相続人の資金援助がなければ本件●●不動産の購入ができなかったという関係にあるから、上記資金援助を不動産の贈与と同視すべきであるというが、被相続人が残代金のほぼ全額を援助したものであるとしても、当然にその資金援助を不動産の贈与と同視すべきであるとまでいえるかは疑問がある。

本件●●不動産の購入手続は●●に在住していた抗告人が主体となって行っていたことがうかがわれるし、抗告人自身、一定程度の資金を有していたことはうかがわれ、一部を借り入れるなどして上記援助がなくても同不動産を購入することができなかったとも断定できない。本件記録の資料を総合しても、上記資金援助について不動産の贈与と同視すべきであるとの結論には至らないから、相手方の上記主張は理由がない。

(5) 持戻し免除の意思表示の存否について
 記録中の資料を総合しても、被相続人が本件●●不動産の購入残代金を贈与したことについて、持ち戻し免除の意思表示があったことを認めるに足りない。
 この点、抗告人は、甲41の1にある被相続人の発言を根拠に持戻しの黙示の意思表示が認められると主張する。しかし、上記発言は、相手方が被相続人の財産について単独で相続するという考えであるという前提に立って、新憲法下では法定相続分による均分相続が原則である旨の意見を述べるものであって、具体的相続分による修正を否定しているものではないし、もとより本件●●不動産について言及しているものではない。被相続人の援助額は27万ドルを超えるものであり相当多額であることも併せ考慮すると、本件●●不動産の購入残代金の贈与について、黙示の持戻し免除の意思表示を認めることはできず、抗告人の上記主張は理由がない。

(6) まとめ
 以上によれば、抗告人の特別受益として、27万7400ドルを認めるのが相当である。そして、本件●●不動産の決済日である平成10年10月19日の為替レートである1ドル=114.72円としてこれを日本円に換算すると、3182万3328円となる。さらに、平成10年の消費者物価指数97.6と令和2年の消費者物価指数100との貨幣価値の変動を考慮すると、3182万3328円÷97.6×100=3260万5869円(1円未満四捨五入)が特別受益額となる。

     (中略)

第4 結論
 以上のとおりであるから、これと異なる原審判を変更して主文のとおり決定する。なお、手続費用のうち鑑定人Aに支給した不動産鑑定料63万6900円については、法定相続分に応じて当事者がそれぞれ2分の1ずつ負担することとし、その余の手続費用は、第1、2審を通じて各自の負担とすることが相当である。
 東京高等裁判所第14民事部
 (裁判長裁判官 太田晃詳 裁判官 杉本宏之 裁判官 秋元健一)
 
以上:2,952文字

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