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自賠責後遺障害非該当を14級後遺障害認定地裁判決紹介3

○「自賠責後遺障害非該当を14級後遺障害認定地裁判決紹介2」の続きで、自賠責後遺障害非該当認定が14級後遺障害を認めた判例として令和4年3月10日神戸地裁判決(自保ジャーナル2127号87頁)を紹介します。

○原告車と被告車との間で発生した交通事故において、原告に損害が生じたとして、原告が、被告に対し、不法行為(民法709条)による損害賠償請求権、自動車損害賠償保障法3条による損害賠償請求権に基づき、自賠責では後遺障害非該当認定でしたが、14級後遺障害が残ったとして合計約1140万円の損害賠償を求めました。

○これに対し神戸地裁判決は、原告については、症状の一貫性が認められ、これに前記認定説示に係る本件事故の受傷態様や治療状況、症状経過等を総合して考慮すれば、原告が後遺障害であると主張する右頸部から右肩にかけての痛みや右指の痺れ等の症状は、将来においても回復困難と見込まれる神経症状と捉えるのが相当であり、したがって、原告に残存する症状については、自賠法施行令別表第二14級に相当すると認めるのが相当であるとして、1080万の損害賠償を認めました。

○交通事故訴訟で請求額の約95%も認める裁判例は珍しく、原告の大勝利です。さらに14級後遺障害事案での請求認容額は平均的には400~500万円ですが、2倍以上の1080万円も認められたのは原告が自営業者で逸失利益算定基準収入額が3777万円と、サラリーマンの平均年収400~500万円の8,9倍の収入があったからです。

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主   文
1 被告は,原告に対し,1080万0918円及びこれに対する平成30年5月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用はこれを10分し,その9を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。

事実及び理由
第一 請求

 被告は,原告に対し,1139万8358円及びこれに対する平成30年5月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第二 事案の概要
 本件は,原告が運転する自家用普通貨物自動車(以下「原告車」という。)と被告が運転する自家用普通乗用自動車(以下「被告車」という。)との間で発生した交通事故において,原告に損害が生じたとして,原告が,被告に対し,不法行為(民法709条)による損害賠償請求権,自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)3条による損害賠償請求権に基づき,損害金及びこれに対する不法行為の日(本件事故発生の日)である平成30年5月23日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前の民法。以下同じ)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。

1 前提となる事実

     (中略)

ウ 損害保険料率算出機構は,平成31年1月23日付けで,原告につき,頸部捻挫,右肩挫傷後の右項頸部~右背部痛等の症状については,将来においても回復困難と見込まれる障害とは捉え難いとして,自賠責保険(共済)における後遺障害には該当しないと判断した。
 原告は,これを不服として異議の申立てをしたが,これについても,同様の結果であった。

2 当事者の主張

     (中略)

(ウ)このように,原告が本件事故によって受けた衝撃は相当強度であり,医療機関における原告の愁訴に不自然な点はなく,治療経過の一貫性,継続性も認められ,頸椎症由来の症状を裏付ける客観的な神経学的異常所見が存在していることからすれば,原告が訴える右頸部から右肩にかけての痛みや右指の痺れ及び背部の痛みは,すべて頸椎症由来の神経症状であって,少なくとも自賠法施行令別表第二14級9号の「局部に神経症状を残すもの」に該当する(以下,便宜上,後遺障害の等級を表記するときは,「後遺障害等級○級○号」とする。)。

     (中略)

第三 当裁判所の判断
1 後遺障害の残存の有無(争点(1))


     (中略)

ウ P3医師は,原告について,平成30年11月6日症状固定と診断した。
 症状固定時の同医師の所見は,項頸部~右僧帽筋部,右肩甲骨部,右背部にかけての筋緊張及び筋圧痛がある,上肢腱反射は正常,知覚障害,筋力低下,病的反射,麻痺症状はいずれもなし,頸椎疼痛性可動域制限あり,右回旋制限を認める,そのため,車運転,歯科治療時に支障を残している状態である,また,右上肢の挙上時に疼痛があり,このため,右肩関節の疼痛性可動域制限を残遺している,右肩関節周囲筋,特に,右肩三角巾,右肩棘下筋等に著明な圧痛を認め,疼痛性可動域制限を認め,これらのために,日常生活及び歯科診療行為に支障を残している状態である,というものであった。

エ 原告は,自賠責において,平成31年1月23日付けで,後遺障害非該当と認定された。その理由は,頸部捻挫,右肩挫傷後の右項頸部~右僧帽筋部痛,右回旋時痛,右肩関節部,右肩甲部~右背部痛等の症状については,頸部及び右肩部画像上,本件事故による骨折や脱臼等の外傷性変化は認め難く,診断書等からは症状を裏付ける客観的な医学的所見の乏しいことに加え,その他症状経過,治療状況等も勘案した結果,将来においても回復が困難と見込まれる障害とは捉え難いというものであった。

 原告は,これを不服として,異議の申立てをしたが,令和元年10月16日付けで,同様に後遺障害非該当と判断された。


オ そのため,原告は,自賠責の判断に納得することができなかったことから,同年11月9日に以前から内科を受診していたc内科を受診した。原告は,右第4指,第5指の痺れを訴え,同病院で頸部XPが施行されたが,同病院の医師の画像所見は,第7頸椎が後方にずれているというものであり,また,第7,第8頸椎領域のしびれがある,スパーリングテスト陽性というものであった。

カ 原告は,同月20日,c内科の紹介で,d病院を受診し,同病院でMRIが施行された。同病院の医師による所見は,C5/6,C7/Th1レベルでは椎間板の変性・膨隆及びルシュカ関節の過形成により右椎間孔の軽度狭小化が疑われ,神経根症の可能性がある,頸髄内には明らかな異常信号は指摘できないというものであり,頸椎症性神経根症の疑いと診断した。

キ c内科の医師は,これを受けて,同月21日付けで,原告につき,傷病名について,外傷性頸椎損傷,頸椎症性神経根症と診断した。

ク 整形外科専門医・脊椎脊髄病医専門医であるP5医師(以下「P5医師」という。)作成の意見書において,原告の画像所見につき,平成30年5月24日及び令和元年11月9日に撮影された頸椎XPでは,椎体縁先鋭化,椎間腔狭小化などの変形性頸椎症の所見が認められるが,第7頸椎後方へのズレは明らかではない,令和元年11月20日に施行された頸椎部MRIでも第7頸椎の後方へのズレは認められない,上記MRIでは,右第5第6頸椎間椎間孔狭小化が認められるが,ただし,右第7頸椎第1胸椎間椎間孔の狭小化は明らかではないという意見が述べられている。

また,同意見書では,原告が訴える症状(しびれ)を裏付ける画像所見の有無について,右スパーリングテスト陽性,右拇指(第1指)~中指(第3指)のしびれとbクリニック診療録の平成30年5月24日の記載や同年11月20日に行われた頸椎部MRIで認められている右第5第6頸椎間椎間孔狭小化は,右第6頸髄節神経根症と矛盾しないが,しびれの訴えがあった指がその後の診療録の記載では,右環指(第4指)・小指(第5指)となっており,右第6類髄節神経根の支配領域とはいえないし,画像では,右第7頸椎第1胸椎間椎間孔(あるいは第6第7頸椎間椎間孔)の狭小化は明らかではなく,第7頸髄節神経根あるいは第8頸髄節神経根の障害を支持する画像所見はないということになるとの意見が述べられている。

ケ 原告は,本件事故前に,右手ないし右指が痺れるなどして,歯科診療に支障が生じることはなかった。
 また,原告は,本件事故後は十分な診療行為が行えなくなり,これまでの収入を確保することが難しくなったことから,他から収入を得ようと考え,令和元年10月に宅建試験を受験した。

(2)上記認定によれば,原告は,本件事故により腰部捻挫,頸部捻挫,右肩挫傷,背部痛の傷害を負い,原告には,右頸部から右肩にかけての痛みや右指の痺れの症状が残存しているものである。
 本件事故の態様は,前記(1)で認定したとおりであり,本件事故は追突事故であるものの,原告車の損傷状況(後記2(1)),原告車が追突時には揺れて前に押し出されていること,原告車の前車の運転者が後ろの車両の異変に気がついていることから,追突時の音も大きなものであったと推認されることからすれば,追突の衝撃は大きく,これに前記認定に係る追突時の原告の状況を合わせて考慮すれば,原告の右頸部付近には,それなりの追突の衝撃が加わったものと認められる。

 そして,原告は,bクリニック受診当初から頸部痛,背部痛,腰痛,右肩痛の他,右指先の痺れを訴えている。もっとも,同病院で平成30年5月24日に施行されたXPでは特段異常所見はなく,リハビリが継続され,ある程度の症状の軽減は見られ,腰部の痛みは軽減されたが,それ以外は痛みが続き,また,右指先の痺れについては,次第に全体から特に第4指,第5指の痺れが強まり,痺れの箇所に変化がみられるようになったものであり,bクリニックの平成30年7月10日の診療録にはその旨の記載がみられる。

また,この間,原告は,その歯科診療が従前のようには行えなくなり,新たに補充のために医師を雇用するなど,その業務に支障を来すようになっている。この点,P5医師作成の意見書においても,右スパーリングテスト陽性,右拇指(第1指)~中指(第3指)の痺れとbクリニックの平成30年5月24日分の診療録の記載及び令和元年11月20日に施行されたMRI(なお,同意見書には「2018年11月20日に行われたMRI」との記載があるが,「2019年」の誤記と思われる。)で認められる右第5第6頸椎間椎間孔狭小化は,右第6頸髄節神経根症と矛盾しないとされているところである。

 もっとも,同意見書において,原告の痺れは,その後右第4指,第5指となっており,右第6頸髄節神経根の支配領城とはいえないとの意見が述べられている。確かに,原告自身も,次第に痺れを感じる箇所が変わってきた旨述べているところであるが,原告は,bクリニック初診時に右指先に痺れがある旨を訴えている旨記載されている。一方,同病院の初診の際のカルテに,P3医師は,「右指先のしびれ」との記載の他「右〈1〉~〈3〉しびれ」と記載しているが、上記認定に係る原告の愁訴からすれば,しびれが生じていたのが初診時において上記3指に限ったものであったとは認め難い。そして,原告は,本件事故直後から一貫してその受診したいずれの医療機関においても,頸部痛と右手指の痺れを訴えているのは,上記認定のとおりである。

 以上によれば,頸部のMRI画像上,上記認定に係る変性所見は認められるものの,d病院での上記MRIは,本件事故から1年半程度経過後に撮影されたものであり,また,P5医師が脊椎のずれについて否定的見解を有していることからすれば,これらの結果をもって,本件事故により外傷性の損傷が生じたものとまでは認め難く,本件事故による骨折等の器質的損傷や症状と整合する脊髄,神経根の圧迫所見を認めるに足りる証拠はないといわざるを得ず,他覚的に神経系統の障害が証明されているとまでは認め難い。

しかし,前記認定説示のとおり,原告については,症状の一貫性が認められ,これに前記認定説示に係る本件事故の受傷態様や治療状況,症状経過等を総合して考慮すれば,原告が後遺障害であると主張する右頸部から右肩にかけての痛みや右指の痺れ等の症状は,将来においても回復困難と見込まれる神経症状と捉えるのが相当であり,したがって,原告に残存する症状については,自賠法施行令別表第二14級に相当すると認めるのが相当である。 

2 原告に生じた損害(争点(2))


     (中略)

(4)後遺障害逸失利益 817万6128円
 前記1で認定説示したとおり,原告には,後遺障害等級14級9号相当の後遺障害が残存しており,実際に原告には本件事故前よりもその収入が減少している。
 したがって,労働能力喪失率を5%,その受傷内容から労働能力喪失期間を5年とし,後遺障害逸失利益算定の基礎収入は,証拠(略)によれば,3777万3750円(本件事故前年度の原告の事業所得に専従者給与と減価償却費を加算したもの)とするのが相当であり,したがって,後遺障害逸失利益として,817万6128円を認める。
(計算式)(2077万0020円+1000万円+700万3730円)×5%×4.329=約817万6128円

     (中略)

第四 結論
 以上のとおりであって,原告の請求は,被告に対し,損害金1080万0918円及びこれに対する不法行為の日(本件事故発生の日)である平成30年5月23日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を求める限度で理由があるから、その限度で認容し,その余は理由がないから棄却し,よって,主文のとおり判決する。
 なお,事案を鑑み,仮執行宣言は付さない。 
神戸地方裁判所第1民事部 裁判官 大島道
以上:5,534文字

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